10、古典イタリア的な衣装
オペラの成功のカギを握るのは何と言っても演出家。
なんだか演出家はエライ。
演出家が、コウと言ったらコウだし、あーと言ったらあーになるわけ。
それは、例えばモーツアルトのオペラなのに、舞台を現代ニューヨークにしてみよう!と演出家が言うとなると、舞台のセットも衣装もそうしなければならない。だけど、モーツアルトのオペラの曲や歌詞は変わらない。
一時、そういうのが流行った時期がある。
なんでもかんでも近代的。下手すりゃ未来的なオペラ。
どんな意味があるのか、半裸のバレリーナが要所要所で踊りまくるなんてのもあった。
それがウケたかどうかは知らないけれど、私たち歌い手はそんな演出家の言うがままになる。
気になるのは、衣装と化粧。
男も女もほっぺが真っ赤という舞台もあった。
何を表現しているのか、いまだに分からない。
だから、普通の古典イタリア的な演出だとすごく安心する。
ちなみに、古典イタリア的な衣装の場合、女性は胸がすごく開いた服を着る。ない胸にストッキングを詰めて、なんとしても「谷間」を作り出す。場合によっては、影を描いたりする。
なんと、無理やり詰め込んでしまって、舞台の上でポロっと出ちゃった人もいる。
その時、お客さんは誰も気づかなかったのだけど、共演していた相手役(男)が、鼻血を出したというアクシデントがあった。
その人、その後しばらくあだ名が「鼻血」になっていた。




