22、ハンマー
グランドピアノは、ピアノの中身が少し見える。
向こう側の大きなふたを全部開けてしまうと、音が大きすぎるので、そこは閉めているけれど、譜面台のところは開いているので、ピアノの構造が少しだけ見える。
ピアノの弦がたくさん張っている。
ピアノを弾くと(鍵盤を叩くと)、弦の下から白いフェルトに包まれたハンマーがぴょこんと飛び出してきて弦を叩く。
そうして音が出るのだけど、それを見ると、ピアノが打楽器だと認識しやすいので、埃が入るけれど、開けておく。
大人目線だと譜面台が邪魔になるので、わざわざ覗き込まなければそこは見えないけれど、小さい子どもたちには、覗き込まなくてもそのハンマーが見える。
というか、ちょうど目線バッチリ。
ピアノを弾きながら、何か真剣に見つめていると思うと、たいていそのハンマーを見ている。
付添いで来るお母さんからは見えないので、ジッとハンマーを眺めている子どもに
「早く弾きなさい!」
などと注意してくださることもあるけれど、興味あることなのでとりあえずは気の済むまで見てもらう。
あれはなんだろう?
と思っているらしい。
「小人さん出てきた?」
と、私が言うと、子どもは妙に納得してくれる。
ピアノの音を出しているのは、ピアノの中にいる小人さんということになっている。




