20、修士論文
学部(大学のこと)では卒業論文は書かなかった。卒業試験だけだった。
だけど、大学院ではそうはいかない。
ちなみに、ウチの大学は修士号までしかない。博士号の取れる音大もあるらしいけど、ほぼ無意味だと思う。
なので、在学期間は2年間。
ということで、修士論文だ。
私はフランス歌曲が専攻なので、フランス人の作曲家ギイ・ロパルツについて論文を書いた。
卒業試験もロパルツの曲を歌った。すっごく難しかった。
同門のオペラ科の友だちに、
「マロンが、違う世界に行っちゃった」
と、言われるくらいは難しかった。
あんなに難解な曲を歌ったところで、聞いている人は楽しいのだろうかと、いつも疑問になる。
歌うのは、まあ、楽しいけど。
私が論文を書いている頃は、まだパソコンがあまり普及していない時代だった。
ワープロで論文を書いている人もいたけれど、私は手書きだった。手書き率が高かった。
そういえば、「血に飢えた爪」と書こうとして「皿に飢えた瓜」と書いた友だちがいたなぁ。
その子は、超天然で、ワイン色のマフラーをしていたことがあって、ふと見るとそこに「YAMAHA」と書いてあった。ピアノの鍵盤カバーを首に巻いて来ていた。
そんなに似ている色のマフラー買わなきゃ良いのに。




