12、あす君の太鼓
あす君は1年間だけ、太鼓を習っていたことがある。
その時のことを、先日急に思い出したらしく
「あーいうのはあんまり好きじゃないんだよね」
と言いやがった。
おまいがやりたいと言ったんじゃろがー!
ということが、子ども相手には結構ある。
まあいい、終わっちまったことはしょうがない。
そのあす君の太鼓は、能楽太鼓と言って、お能のバックで演奏されるやつ。
正座をして2本のバチを持って、テレツクテレツクと太鼓を叩く。
1年間の終わりに、能楽堂で発表会をさせてもらった。
座り方、バチの持ち方、太鼓の叩き方、演奏の仕方だけではない。
日本音楽独特の所作があるため、舞台への上がり方、
太鼓の持ち方、歩き方など事細かに教えてもらった。
足袋など初めて履いたが、なるほど、靴下とはやはり違うらしい。
あんまり好きではないと言ったわりには、その頃はかなり打ち込んでいて、とてもかっこよかった。
なによりも、お玄人の先生が笛と謡を生で入れてくださった。
そんな体験なかなかできないのにね。
「あーいうのはあんまり好きじゃないんだよね」
と言われちゃ悲しくもなる。
良かれと思ってやっても、コレだもんな。
親はほどほどに習わせるのが良いらしい。




