17、お揃いだったはず
N響との共演で合唱をするとき、合唱はみんな同じ服を着る。
合唱といえば、白いブラウスに黒いスカートと相場が決まっている。
私たちは学生とはいえ、音楽家なので一応それくらいは誰でも持っている。
しかし、誰でも持っているそれを着ても統一感はない。意外と、白いブラウスでも個性が出るものだ。
ということで、全員同じブラウスを注文する。
きちんと採寸してのオーダーメイドである。
袖丈は勿論、スカートは舞台当日に履く靴のヒールの高さを計算してちょうど床の長さになるようにするという徹底ぶり。
お揃いなのは、女子だけではない。
男子も同じように黒スーツを着る。とはいえ、まあ、男子は自分の持ちものを着ているようだ。
ただし、タイは同じ色、同じ形。
チーフも同じ色、同じ形で統一する。
それから、髪色も明るすぎてはダメ。口紅も赤すぎはダメ。
舞台そででパートリーダーがティッシュを持って見張っていて、口紅の赤すぎる人はそこで拭きとるというはめになる。
そんな感じだった。
それが、時を越えて、去年の年末の第九をテレビで見たとき・・・
「うわ、茶髪じゃーん!」
という若者が映し出されていてかなり驚いた。
時代の流れを痛いほどに感じたのだった。




