5、憧れとブルブル
引き続きヘタレな私です。
私が入る前、年子の姉が小4の時、姉は合唱部にいた。
私が合唱部に入ったら、姉はミニバスケット部に行ってしまったが、私は姉が合唱部にいたことをよく覚えている。
合唱祭を聞きに行ったからかもしれない。
その合唱祭で、姉はなんとソロを歌っていた。
5,6年生を差し置いてのソロ。
姉が一人でメロディを歌うと、その後ろで全員が「ランランラン」と軽やかな間の手を入れる。
1人歌う姉の声は、子どもらしいあどけなさと自信のある朗らかさとで、素晴らしかった。
姉を尊敬し、また誇りに思い、そして羨ましかった。
その、ソロを歌った子の妹、とはいえ、全くの別人の私。
姉のやったソロがそれはそれは羨ましかったが、あがり症の私ができるはずもない。
先生もそれをわかっていて、ソロのない曲が選ばれていた。
「やれ」と言われてできないとわかっていても「じゃあ、やらなくていい」と言われると残念なものである。
たまには勇気を出してみようと、1人でぼんやりしている時にソロを歌う自分を妄想してみる。
すると、単なる妄想なのに、すでにブルブルと震える私。
ダメだ。やはり、ソロは無理だ。でも、やりたい。やりたいけれど、ブルブルしてしまう。
子どもなんて、「やりたいからやる」だけで世界が回っていそうなものなのに、意外とそうでもないこともある。
少なくとも私は「やりたい」けど「できない」のはざまでずっとブルブルしていたのだった。




