11、お母さんが来ない
小さな生徒さんは、お母さんと一緒に来て、お母さんはレッスン室でお稽古の様子を見ている。
だけど、兄弟で来ている場合は、二人分待っているのは大変なので、その間にお買いものに行く人もいる。
人によっては、子どもだけ先にお教室に来て、お迎えだけ来るお母さんもいる。
色々な場合があるけれど、たいてい終わりの時間に間に合わない。
そうすると、生徒さんは一気に不安になる。不安にならない子はいない。
ので、私は、そうと悟られないように、レッスンを続けることになる。
「もう一回弾いてみよっか」
で、済めば、生徒さんも不安にはならない。
でも、あんまり来ないと、次の子のレッスンの時間がなくなってしまうので、そこで待っていてもらう。そうすると、生徒さんの不安がヒシヒシと伝わってくる。
「遅くなってすみませ~ん!」
と、お母さんがレッスン室に入ってくると、それまで不安でいっぱいだったくせに、急に態度がでかくなって、絵本とか読みだしちゃったりして、余裕をアピールする生徒さん。
で、なぜか帰ろうとしない。
いつまでも絵本を読もうとしたり、玄関の折り紙で遊んだり。
だけど、お母さんは帰らせたい。夕方の主婦は忙しいからね。
だから私が
「じゃ、今日は先生のウチに泊まるか」
と言うと、大急ぎで靴を履いて帰ってしまう。
帰りたいのか、帰りたくないのか、子ども心って難しい。