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こどく。

作者: isono

 僕らは皆、こどくを抱えている。

 ひとりぼっちで雑踏の中を進む時、待ち合わせをすっぽかされた時、友達と笑いあっている時でさえ、心のどこかでこどくは蠢いている。

 こどくは人を不安で憂鬱な気分にさせる。だから大抵の人はこどくのことが大嫌いだ。僕も嫌いだ。

 台所に沸いたゴキブリをぶち殺すように、こどくのことも殺してしまえばいいのかもしれない。

 けれど、こどくはしぶとい。潰しても焼いても引きちぎっても、次々と新しいこどくが産声を上げる。

 だから、僕はこどくを無視することにした。いちいち取り合うから煩わしいのであって、放っておけばなんのことはない。

 そうやって、こどくは誰からも相手にされなくなるのだ。

 叫べど喚けど、その声は外に漏れ出ることはなく、他でもない自分にすら届かない。

 やがて声の枯れたこどくはみるみる弱っていき、姿を消した。

 ……もうこどくに苦しまなくても良いのだ。

 そのはずなのに、どうしてか心にはぽっかりと穴が空いたようで。

 慌ててそれを埋めようとするけれど、思い当たるどんな欠片も空白を埋めることはなくて。

 スキマ風は、冷たく吹きすさぶばかり。

 もっとこどくにかまってやれば良かった。こどくの言うことに耳を傾けてやれば良かった。

 僕は今、とても寂しい。涙を流してしまうほど。なぜって、そりゃあ。

 こどく、君がいないからだよ。


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