二人の追憶 ~ソナタの場合(後編)
視界が開けると、目の前は再び暗闇の広がる空間とほのかな光と共に浮かび上がるソナタとレイ。
「ちっくしょう……っ!」
その中で少女ソナタはうずくまり、頭を掻き毟って悶絶していた。
「ソナタ、さん?」
「!?」
その声に。がばっとソナタの顔が乱れた髪と共に跳ね上がった。
目は驚きと、怯えに染まっている。
そして再び俯いた。
「…ほっといてくれよ…。見たんだろ?」
―確かに、見た。思春期の一幕を。
「…最低、だよな?俺、人を助けるだとか綺麗ごとばっか言ってて心の中は…」
その後もぶつぶつと。
人は、自分の事は見えないものだ。
自己嫌悪、そこから来る反発心、そして拒絶。
だが、第3者として見ると本人にとって巨大すぎるそれらが意外と大した事なかったのだと分かる。
あれは、
―自分の姿、千年間閉じこもった自分の姿
そう思うと、手が自然に差しのべられた。
―バシン!
「ほっといてくれ!」
案の定の、反発。
「お、俺…汚いから…ほっとい…!」
だが、その言葉は最後までつむげなかった。
レイが、ソナタを抱きしめた。
「…”たからもの”」
「は?」
「知ってた?私達、二人とも同じ者同士なのよ?」
「何言って…」
「私達、二人とも。大事な人の”たからもの”だったのよ」
「……」
「貴女の…いえ、貴女の大事な人の魔術は、その幸せを思い出させてくれたわ」
「…でも…」
「そうね。想いを寄せたのは間違いじゃない。だけれど、」
「でも、」
「”逃げた”のは間違いだったわね。想い、伝えるべきだったわ」
「え?」
「一人で何かしたのを気にしているようだけど…」
「ちょ!」
「そんな事で”汚い”とは思わない。少なくとも、ワタクシは」
「……」
「細かい事は、いいじゃない、私たちは”たからもの”同士なんだから」
「…うん」
ソナタの腕にも力が込められた。
すると、暗闇が光に反転して世界が広がる。
「ソナタ君!?」
「ソナタちゃん!」
「ぷぎ!」
「ご、主人タマ!」
迎えたソナタの仲間たち。
「…」
そして、ヤナがむくりと立ち上がった。
その体が曖昧になり…
「先輩!」
信じがたい奇跡。
そこに、スペルマスター開発者の「柳川 香子」の姿が現出したのだった。




