その手がちゃんと、届いていた☆彡
「姉さん!」
駆け寄るソナタだったが。
しゅっと。
姉が印を切ると視界が闇にのまれて…消えた。
※※※
「ここは?」
ソナタが気がつくと、そこは白くぼやけた空間だった。地面の感覚は定かでないのに両の脚はきちんと身体を支えているのが分かる。
その目の前に桜の花びらが渦巻いたかと思うと、後に姉が現れた。
初めて出会った十六の時、そのままの姿で。
「全く、学習しないな、ソナタは」
「え…」
「いつも、自己犠牲に突っ込んで…酔ってる」
「そんな…」
「悪い癖。だから、初めてアタシ達が出会ったのもアンタが、車に轢かれて入院中だった」
「だって…」
「そう。ソナタは…仔犬を助けたんだ」
「だって…」
「だって、あの日届かなかったから?」
「…うん」
「…ソナタ」
突然、エリザベートはソナタの手を掴んだ。
「え?」
そしてそのまま胸に押し当てる。
「ちょ…!」
「ソナタの手はね…ちゃんと届いてた」
「…え?」
突然の言葉に顔を上げると、
「あの火事の日…」
そこには慈しむような笑顔が。
「貴方の手は…届かなかったんじゃない、お母様に、幼い貴方の手は届いていた…」
「そんなこと…」
「幼い貴方が…それでも大事な人を助けようとしたその手は物理的な事象がどうだって関係ない…心に届いていたはずよ」
目が閉じた。
「違う!届かなかった!助け…られなかったんだ!」
ヒステリックな叫び。
だが優しい声は続けた。
「心が…最後に救われた。分かるよ、だって…」
目が開く。
昔から大好きだったキレイな目が。
「私にだって、こうして届いてるから」
その瞬間、ソナタの人生の中で一度も下ろした事のない何かの重さがコーヒーに溶かした角砂糖の様に消えてなくなった感覚がした。
「ソナタ」
「…」
「私達はここで御別れ。だけど、その前に貴方に受け取って欲しいものがあるの」
「いやだ!」
「…意地悪、言わないの」
そう言うと、コツンと額が触れあう。
「!?」
額を通じて光が流れ込んでいく。
「…継承…柳川さんと作り出したこの世界で最もキレイな言葉達…それと」
白く塗りつぶされていくソナタの視界の中で
「私の…想いを」
タイセツナモノは、この世で一番キレイな笑顔をしていた。
※※※
視界が戻ると、ソナタは姉の亡骸を抱き抱え座り込んでいた。
両手に姉は、随分軽く感じられる。
その感触と共に、涙を拭う事もなく嗚咽を漏らしソナタは肩を震わせた。




