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過去を乗り越えて…☆彡

王宮への道は一本。

真っ直ぐ伸びている。


だが、

「な、なんで…」


ソコには今までの豚神を越える…




「ブータ・トクモ・リドン様!」


更に二回り巨大な神獣が立ち塞がっていた。


「…ふぅ」

と、マユカが溜息と共に動いた。


手にはマーリアから受け取った豚丼。

「何個持ってるの!?」

ソナタの悲鳴に近いツッコミは軽やかにスルー。


颯爽と前に躍り出たマユカは


豚丼を…


―ブンッ!


明後日の方向に放り投げた!


「…」

「………」

「………………」


魔術の加速に乗り、雲間へと消えていく豚丼。


と。

「…ブ……」

「え?」

「…ブ……ブ…ッゴ…アアアアアアッ!!」


それを追いかけ、神も走り去って行った…


「闘牛と一緒よ。…さ。先へ急ぎましょ」


素っ気なく有無を言わせない様子に、一同は無言で首肯し、従うのみであった。



※※※※


王宮に踏み込むと、ここも廃墟と化していた。

障害物を踏み越えながら。


「玉座の間は…あっちだ!」

予め入手した図面に従い進む。

やがて、豪奢で傷一つ無い扉が立ち塞がる。


「いよいよ…皆!!準備はいいか?」

「「「応!」」」


力強い声を受けて、ソナタが先頭になり重い扉を押し開いた。




開けた先には。


「ついに…ここまで来たのか。忌々しい!」

美少年アデルが眼だけを酷くギラつかせて待ち構えていた。


その背後に闇色を墨汁の様に周囲の空間へ滲ませた階段が見えている。


「ふふ、だけど、…失敗だったな?」

「何がだ!」

「裏切り者の…」

指はマユカへ

「元・鬼女をノコノコ連れてきたことがだ!」

言葉と共に赤黒い光の蔦が奔り瞬く間にマユカを包み込んだ!

「一度鬼女となった者には仕掛けを埋めてある!」

「仕掛け!?」

「要はいつでも元に戻せるんだよ!あはは、その顔っ!」


そしてやり取りをする僅かな間に、忌まわしい所業が完成してしまう。


赤黒い光が晴れると

「…」

そこにいたのは鬼女。

目は閉じている。


「さあ!できそこないの鬼女よ!不埒な侵入者を排除し…」

アデルの口角がつり上がる。


「用が済んだら…自決しろ」

「ふざけんな!」

「アハハ!その顔!最高だよ!…けれど、どうするのかな?」

「…~」

変わり果てたマユカ。

一歩ずつソナタに近づく。

「マユカ!」

「…」

目は閉じたまま。


一歩。

また一歩ずつ。


その間、誰も動けない。

「アハハ!切り捨てれば?ていうか、ソレしかないだろうに…本当に、馬鹿な連中だなぁ!」

「…!」


そして、とうとう互いの息がかかる距離に至ると、その目が開く。


―気のせいか、瞳に操られている様な虚ろさが感じられない意思の光りがある様な…


「私ね…」

マユカが発する。

そして、両の手をソナタの頬へ。


「?」

続けて唇に、唇が落ちた。


「は?」

「な!」

「ちょっと!」

「なんと!」

「そういう事か…」


周囲の声をまったく無視して長く長く堪能するように重ねた後に、まだ名残惜しそうに離す。


「ソナタ君が好き。確かに!」


「…エッチで!いつもイカガワシイ魔術使ってて」

「え?」

「スケベで!女の子みると誰彼構わず優しくして!節操がなくて!」

「ちょ…」

涙目のソナタは気が付かないが、目の前のマユカの中心から白い光が溢れ始めている。

「ムッツリスケベで!いつもいつも女の子の方ばかり見てて!」

「そ…ソレ誤解…」

「しかも?見ている部分と来たら胸ばっかり!」

「は…」

女子という生き物は鋭いので、大抵の場合男の目線が向かっている先はバレているという。

…まあ、分かりやすいのもあるが。

「しかもしかも!お人好しでドMでいつも頼ってくれなくて自分で抱え込もうとして!しかも、たまに失敗して余計に迷惑ばら蒔いて!」

「ぐ…」

「挙げ句の果てに!女の子になったままで…このままじゃ…私、婚期逃しちゃいそうだし!」

「へ?」

「その癖ハーレム体質の自覚もないし本当に最低!」

「#$#%?」

「でも、」


そこで一度言葉が止まった。

SAN値をマイナスまで削られたソナタは床に崩れ落ちている。

が、マユカの手はその頬をガッチリまだ掴んでいる。


「……どうしてなのか自分でも本当に分からないけど……好き。大好きで仕方ないの!」

「……え?」

「この気持ちは私のもの。私の魂から溢れてくるものだから…」

ここで、漸く手が離された。

ソナタの頬には手形の跡が残っているが、

それはさておき。


マユカは、静謐な光に包まれ、元通りの少女の姿となって言葉を繋げた。


「外から何をされても、もう、無駄よ」

「な!馬鹿な!」

「だって、私、今、幸せだもの」

ニコリと。

「そんなヤツなのにか!」

「ええ。だってこの気持ちは一方的に与えられるものじゃない。…自分の心だもの」


そして、今度はソナタを見た。


「時間が無いわ。ここは私が引き受けるから、ソナタ君は先に行って」

「でも…」

「…戦闘領域バトルフィールド!」


その手から光が輝く。

ちなみに、原典魔術なので如何わしい演出は無い。一切、無い。


「…言ったよね?並んで戦いたいって」

光がその姿を取り込み始める。

その笑顔は柔らかい。


「だから、これは私の想い、そして、夢」

「邪魔は、…させないよ?」

「まっ…!」


制止するソナタだったが、その手はすり抜けた。


「そんな…」

「ソナタ殿、先を急ぐでござる」



「駄目だ!だって…」


と、ライラが歩み寄る。

次の瞬間。






―ぱんっ!


ソナタの頬が鳴った。


「馬鹿ね。ほんっとに…」

「え?」

ついぞ、ライラにそんな事をされた覚えの無いソナタは呆けたようになる。

「分かってるんでしょう!今は!急がなくちゃいけないの!」

「でも…」


―ぱんっ!


更に反対の頬が鳴った。


「ほんっとに、馬鹿。分からないの?今、こうしている事が…マユカちゃんの気持ちに泥をかけてるのが!」


「…」


「本当に大事に思うのなら、…貴方は先に進むべきだわ!」


「!?」


「じゃなきゃ、それは、貴方の優しさは…ただの押し付けって事だから…」


「………」


「そうだね。…よいしょっと」


今度はヤナだ。

ソナタに近づき手を握る。


「ちょ…ちょっと!」

「踏ん切りつかないんだろう?なら強引だけど、…こうさせて貰うよ!」


そういうと、手を取ったヤナが突如走り出した。

引っ張られてソナタも走りださざるを得なくなる。


「わ…お、…おい!…あ~、もう!分かったよ!さっさと行っ…」

「そう、早くここに戻ってくるのが出来る事さ!」

「!」


と、今度は開き直ったソナタが走る速さを上げた。


「そ、ソナタ君!」

バランスを崩しかけたヤナが慌てる。


「マーリアさん、ライラさん、それと、ヤナ」

「「「?」」」

「有難う!俺、…独り善がりだった!」


更に速度が上がる。


「俺には“皆”が…居てくれるんだから!」

「ソナタ殿…」

「そうよ!…ちなみにビンタしてゴメン…」

「いや、有難う。お陰で目が覚めた」

「ソナタ君はどMだからねぇ、ご褒美?」

「違うからな、ヤナ!畜生、手を離しやがれ」

「ふふ…断る!」


こうしてソナタ達は、地下の廻廊を疾風の如く駆け抜けて行くのであった。

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