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裏切りが…二転三転、そして空転☆彡

「更地になった後には汚いホーケンの町の個人商店はすべて消えて、機能的な大規模商業施設とオフィスと、娯楽施設も建造されるわ。もちろん能力の無い古い考え方の市民は市場からご退場願うしかないけど努力すれば競争に勝ち残る事が出来るかも知れないわね?一応、更地にした土地の補償は法律に則ってさせて頂くからそれを元手に頑張れば良いと思うわ」

「…」

「ああ、でも、ソナタさん、もし貴女が『懐古主義的な皆さんがそんな新しい社会に耐えられるはずがない』と判断するなら今ここで楽にしてあげるのも決して悪くないのよ?」

「……」

「さあさ、…どうするのかしら?」


「俺は…」

「ふふ…」


「…どっちも選択しない!」

「まぁ!ならどうするのかしら?」

ヴェンデッタの瞳に嗜虐的な光が灯るが構わずソナタはモニターの向こうのロードへ言葉を飛ばす。


「おいミール!お前、万が一街に何か仕出かしたら…もう、2度と戦ってやんないからな!」


―ふっ。これまで構ってくれんで急にか。まるで急に嫁の機嫌取り始めた夫みたいだのう!


「ち…ちが!」


―それに、無駄じゃ。もう、契約結んじゃったし?


そういうと、壁面に投影された映像に一枚の紙が写る。


「そう。ロードとの契約は”ホーケンの街の整地契約”よ」


―履行違反は死刑、じゃしなぁ。でも報酬に神竜王十匹と死闘あそばせてくれるというもんでのう。


「そういう事。残念ね、もう少し、せめてマシな切り返しでも出来るかと思ったのにがっかりだわ」


―じゃのう


「そういう事だから、そうね、まずペナルティとしてそこの公園、壊しちゃって頂戴」


―うーん…力加減が難しいのぅ


「”契約”でしょ?」


―はぁ、早くどっちにするのか決めてくれな。…では…


「や、やめ!」


ソナタの静止の声もむなしく視界は土煙に覆われ、大型建機でも入れたかの様な轟音が響きわたる。


「そ…そんな…」

マユカの目の前で、彼女のルーツの一つが消えて無くなっていく。

ハタリと涙がこぼれた。


そんな絶望に染まる顔を見回すと、満足をしたのかヴェンデッタは余裕を持った笑みと共に、

自らのいた席へと戻っていく。


席に着くと絶妙なタイミングで執事が彼女に杯を渡し水差しから清涼な香りのするアイスティーを注ぐ。


と、今度はその執事に彼女の目が向いた。


「そういえば、ホーケンの皆さんが勢揃いできたのは…なぜかしら?」

「どうされました?」

「そうね、例えば誰かが裏切った…そうは考えられない?」

「はて」

「ねえ、ヨデル。答えて。貴方、あの日私に誓ったわよね?」

「はい、忠誠を誓いました」

「ならば、どうして?・・・どうして、裏切ったのかしら?」

「裏切りなど。めっそうもない」

「いいえ!貴方が呼び寄せたのでしょう!何故!?」

「…」

「ダンマリを決め込むというの!?」

「…いえ」

「じゃあ!」

「……答えは、そろそろ現れましょう」

「は?貴方何を言って…」


そういって、目線と白い手袋を以て老齢の吸血鬼が示すと、その先にある壁に移された土煙の光景に変化が生じた


―なーんて、の!神竜王10匹程度で玩具の代わりが務まるわけなかろう!


「え?」


土煙の晴れた先。

そこには、…何という事でしょう!


―錆びた手すりは隙間なく塗り直されてピカピカに!

―味気ないベンチは木材で組み立てられたおしゃれな休憩小屋に!

―不安定な土盛りの土台も木材の柱を組合せ、もうこれでお子さんが転んでしまう心配もありません!

―更に、ベンチの廃材は望遠鏡を取り付けられた展望スペースに続く階段として再利用、

 当時の面影を残す匠の心配り…


―さらに、さらに!よく見ると…望遠鏡の上に二つの人形のオブジェ…なんとソナタちゃんとマユカちゃんではないですか!


恥ずかしさにマユカの耳タブが赤く染まるのを見つめるソナタ。

自身がどうなったかは…見たくなかった。


―どうじゃ、見事に”整えた”ぞ!


超光速の匠の業に、


「べらんめえ。いい仕事するじゃねえかあの野郎…」


大工のゴンさんも涙目で脱帽。


「な…一体なんなのよ!」


―じゃーかーらー、整地したじゃろ?


「いいえ…これは”契約違反”だわ!ペナルティを執行します!」

血相を変えたヴェンデッタが慌てて手を振り下ろす。


すると、突如、壁面にうつされたロードの視界がガクンと下がった。


―おお!見よ!


その視界が自らの胸元に落ちると…何か刺さっていた。


―心の臓に一突きじゃ!すごいのぅ!どうなっているのかのぅ!


「貴方の体の方がどうなっているのよ!」


―躱せもせず強制じゃ!ふははっ!久しぶりにちょっとくすぐったいのぅ!


がくり。

その拍子抜けする反応に、ヴェンデッタが糸の切れた人形の様に椅子にへたり込んだ。


―いや~、なかなかに感動じゃの。という訳で、久しぶりにエキサイティングな体験もできた事じゃ。

 余韻の冷めん内に切るから、後は好きにしておくが良いぞ…

―ブツン


そして、通信も切れた。


「……~……~……」

席で俯いたヴェンデッタは未だに何かをぶつぶつとつぶやいている様だ。

だが、先ほどまでと違って魔術の気配は感じられない。


「…お嬢様、人の心情とは言葉で全てが表されるというものではございません」

「……」

「かのロードが言葉と裏腹にソナタ殿達を大事に考えられているのと反対に…」

「……」

「例え契約とルールで正しかろうと内心嘆き悲しみ、恨みを抱き、疲弊する者があればその心までは変わりません」


「……ええ、そうね。人は裏切るわ…貴方の様に…」

ヴェンデッタの零した涙と言葉に呼応し、彼女の纏う青い茨が脈打つ。


「いいえ、私は…」

「結構よ!貴方の気持ちなんて…何をするの!?」

ヒステリーに叫んだヴェンデッタの右手。茨を纏うそれに傷つくのも構わず、執事にして吸血鬼、そして彼女を愛するヨデルは愛おしそうにそれを掴んで持ち上げた。


そして…


―ドスッ


その手を自らの心臓に突き入れ、貫通させたのだった。

ヨデルの背から突き出たヴェンデッタの右手を包んで古種の吸血鬼の血が飛沫を上げる。


「ヨデル!」

「…」

「駄目…ダメ…だめ…ねえ、なにをしているの……?」


右手を抜き取ろうとするが生死の定かでないヨデルは、

それでもなお、愛おしそうに抱え込んだ彼女を離さない。



その光景を前にして。

突如ソナタが老人との”二つ目のお願い”を果たすべく動き出したのであった。



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