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俺はお前の・・・(以下略)だけをっ!・・・ア・イ・シ・テ・ル☆彡 (前編)

ヤナが一人うん…花摘みに旅立つというハプニングはあったものの。


「それでは…はじめましょうか」

会議室の扉が閉まるや否や、女主人ヴェンデッタの言葉が合図となり予定通り二都市間の提携交渉が始まった。


「こちらを…」

各々に配布された資料は事前に送付された文面とほぼ同じ。


北方辺境都市連合。

その始まりとなる合意形成にむけて、

ポコチーニや義姉が中心となって回答と交渉ポイントは事前整理済。


…だったのだが。


一見常識的な取り決めも、「契約を違えれば死」の前提が置かれてしまった現状…

あらかじめ見知っていた契約も大きく意味が違ってしまうリスクがある。


記載されている内容自体は、


・関税の撤廃と共通通貨の発行

・ギルドのワプア支部設置

・連合加盟都市の有事への協力体制


等々、常識的な事しかないのだが…


「基本事項は事前に調整させてもらった通り」

「…そうですね…」

「形式だけの基本合意は終わらせて、早く実務面の詰めをしたいのだけれど…良いかしら?」


その流れも「約束通り」のもの。


「!?」

だが、胃の腑から脳天に向かい這い上るなんとも言えないヒヤリとした感触が突如ソナタを見舞う。その不安感に突き動かされ、今更ながらあまり頭に入らないのを感じながらも契約書類を頭から見直し始める。


気まずい沈黙の空間。


音は、ソナタが紙をめくる音のみとなったまま、しばし、無言の時間が過ぎる。


だが、また最初のページへ戻るに至り、

とうとう対面真ん中に座したヴェンデッタの唇から溜め息が漏れた。


(…そ、ソナタくん?)

さすがに不味いと感じたマユカが横から袖をつい、と引っ張るがソナタの反応は無い。


と、今度は反対隣に座ったマーリアの肩がピクリと揺れた。

緩やかなウェーブの髪が僅かに跳ねる。


(これは…魔力の揺らぎ!?)


「Y-5…フィールド……」


ポソリと呟かれた言葉に反応して、部屋全体が青色の光に包まれていく。


ここに至ってようやくソナタの顔が上がった。

「早く…進めましょう?『約束通り』に」

「何をしたんだ!」

「やはり、駄目ね。自由は間違いを生むだけ。だから、ルールというものはやはり必要なのね…」

会話が噛み合わない。

みれば、発言の主は脈打つ青い茨を纏っている。


「不本意だけれど…時間は貴重だから先に進めさせてもらいます。…『制約(ギアス)』」


「!?」

魔術により青い茨がソナタの右手を包む。

すると、意思と関係なく書面にサインをしようと勝手に動き出した。


「さあ、女王陛下の支配(やさしさ)の下、底辺(すてきなかんきょう)で…皆、社畜(しあわせ)になるのよ…」


陶然と紡がれた物騒な発言はソナタの嫌な予感を証明するものであった。


「馬鹿な!?女王に対抗するための連合なのに」

「あら、そんな恐れ多い事、…一体何処に書いてあるのかしら?」

「くそ…我、規制の壁の向こうへ逃れシールを剥がす!そう!じゅうは…『ピー!!』…っ!!」


青い茨が光ると、突如ソナタが紡いだ魔術が突如霧散した。


「どうかしら?イカガワシイ言葉を封じる聖なるY-5フィールドは…」

「くっ!」

「ああ。これで…陛下にまた貢献出来るわぁ…」

その瞳は虚空に向かう。


「それなら私が!」

それならばと、原典魔術(オリジナルスペル)で対抗しようとしたマユカだったが。

「ふふ」

「…あれ?え…?」

「あら?力なきお嬢さんの魔術くらい、片手払えば十分よ?」

「そんな!」

その魔術は力量の差で解除されてしまう。


「しからば…」

「あなたも…」

「くっ!」

「…か弱いお嬢さん。ご自慢の戦神の面でも着けてきたなら別、だけれどね?」

一方、物理攻撃で急襲しようとしたマーリアも結界に跳ね返される。


「扉が開かないわ!」

「この…かっったいわね!この扉っ!」

アリーナとライラは閉鎖空間を何とかしようと試みるが…

「そうね。今は大切な会議の場ですもの。終わるまで、外からは隔絶されているわ。当然ね」

「そんな!」


先程までの穏やかさを置き去りに生じた大混乱。


そんな中、ソナタはまだ辛うじて右手を抑え抵抗を続けていた。


「まあ!まだ、まだ粘れるのね!…貴女はいい社畜(しみん)になるわ!最近の社畜(わかもの)は直ぐに諦めるから困るのだけれど、ねっ?」


嬉しくなさすぎる賛辞を涙目で無視しつつも、ソナタは悔やんでいた。


己の甘さ、馬鹿さ加減。

どこか旅行気分でいた報い、その愚かさに皆を巻き込もうとしている…。


「ああ…良いわ、貴女は。もう少し…負荷(おしごと)を増やしましょうね?」


(もう…駄目だ…)


その時だった。

ソナタのスカートのポケットが発光したのは。


「あ~テステス…聞こえるかい?」

「ヤナ!?トイレに籠ったんじゃ!?」

「ま、何か仕込んでいたみたいだけど、…食べてないから、ね」

飛び込んだ声は一時離脱したはずのヤナ。

その音に崩れかけた精神が持ち直す。


「とにかく、聞こえるようだね。それでは始めようか…」

そして、ここにいないはずの…

「ああ、急ごう」

「ポコチーニ、お前まで、なんでっ!?」

ホーケンで留守番中の筈の参謀の声も。


更に、

「逝くぞ!私立スペマス高校校歌斉唱!」

「「「「応っ!」」」」

「他の皆もっ!」

ギルドのメンバー達が勢揃い!


「俺は…」

「「「「お前の…」」」」




「…以下略(ぱんてぇ)だけをアイシテルッ!」




反撃が…始まった。

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