隠密任務を遂行せよ(えくすとら その③☆彡)
やっと・・・
「わぁ!」
眼下では夜の街に明りが綺羅星の如く。
見上げれば天上の星々が遮るものなく輝いて。
天高い処にあって馬車は一切の振動も無く空を駆け回る。
「ご主人タマ、揺れてませんか~?」
「ああ、大丈夫だよ」
「えぇ!?これって・・・」
「うん、助けた仔豚のエルザ」
「仔豚・・・ちゃん?」
「そ。何故か人間の言葉が分かってるみたいだったんで調べたら、”使い魔”になれる素質があったから・・・」
「ぷぎ!そうなのです!エルザはとっても賢いのです!」
「・・・そういう訳で、今日は豚料理はお預けだけど・・・」
言いながら並べられた料理は鳥のローストをメインにカジュアルなスタイル。
だが、答えは求めた少女からではなく、
「駄目でしゅ!明日になってもそーいう非豚道的な料理はダメ!」
馬車から発せられた。
「・・・ぷっ!ソナタ君、ずーっと駄目だって!あははっ」
「あー・・・」
「ぷい!」
いつしか暖かな空飛ぶ晩餐は、少女から涙を拭い去っていた。
「あらためて、誕生日・・・おめでと」
かちんと、グラスが鳴る。
「でも・・・」
「ん?」
「顔・・・酷くなってない?」
見れば少女の顔には施した化粧を通る幾条もの涙の跡。
「貸して」
ソナタが差し出したシルクのハンカチが柔らかな頬を滑っていくのに応じてそれこそ魔法のように拭い去られていき、見る見る素顔が露わになる。
「よし。・・・取れたよ」
「やだ、変じゃない?」
「俺は、その・・・」
素顔の方が好きだし、と気恥ずかし気に呟かれたその言葉がマユカの顔を赤く染め上げる。
「!?」
言ったソナタもそっぽを向いて恥ずかし気な面差しのまま。
馬車は夜の街の空を駆けていくのであった。
「ぷぎー!ご主人タマ、目的地に到着でっしゅ」
小一時間程の遊覧の後、馬車がたどり着いたのは―
「公園?」
「うん、マユカと初めて来てからさ。時々ここに来るんだ」
「え・・・」
「疲れた時とかね。ここの夜景見ると、”ここを守ってるんだ”って思い直せて、・・・元気が出て。そしたら、ギルドに帰ってる」
「そっか・・・」
「ああ、そうだ」
ソナタが懐から白銀に輝く輪を二つ取り出した。
「これ、・・・誕生日のプレゼント」
「わぁ!綺麗・・・」
対の腕輪。
魔法銀で形作られた雌雄一対の鳥。
その彫刻に指を滑らせて。
「・・・うん。決めた」
突如、少女が決した意を固めた言葉を口にする。
「え?」
「私、、、ソナタ君の横で一緒に居たい!」
「う、うん?今も・・・」
「そうじゃなくて。私、貴方の、ソナタ君の横で一緒に・・・戦いたい」
「・・・は?」
「守られてるだけじゃなくて、私も貴方と対等の場所に立ちたい」
「いやいやいやいや!戦うのって、本当に命がけなんだよ?この前なんか、俺、骨も内蔵も・・・」
「・・・分かってる」
「いや!全然、分かってないよ!」
「この・・・10年の記憶、あるって言ったよね」
「・・・」
「その見せつけられた記憶には、戦いだっていくつもあった」
「・・・」
「見て・・・」
少女が差し出した両手の間に静謐な光が集まる。
「これが、巫女として見出された所以、その力。・・・お願い!頑張って、足手纏いにだけはならないから!」
「でも・・・」
「ねえ、知ってる?若いっていうのは、”無限”なんだよ」
「え?」
「若さっていうのは、無限に広がる可能性という力を秘めていて。たった一つの、そのかけがえのないものは一つの魔術がトリガーになって発動されるものなの。何だと思う?」
「何?」
「”勇気”、もしくは若さゆえの”無謀”」
「勇気・・・無謀・・・」
「てね。・・・昔の偉人の受け売りなんだけどね」
「うん・・・」
「・・・あっ!?」
そこで少女の目が真ん丸になる。
「ご、ごめん・・・今のなし。偉人、じゃなかった」
「え?」
「・・・お母さん」
「アユカおばさん!?」
「はぁ・・・全然・・・偉人じゃなかった・・・」
「ぷっ」
「ちょ、ちょっと笑わないでよ!」
「あははは!それは・・・下手な偉人なんか何人束になっても敵わないや!」
すっと、ソナタの両手が上がる。
「降参。・・・だけど、”偉人”のアユカおばさんも含めて、相談しよ?」
「・・・も~、結構決意して言ったんだよ?」
「だとしても。一人で決めたらダメ」
「・・・うん」
かくして、二人の影が一つに寄り添って長い、長い夜の街に溶けていくのであった。
―その頃。
某ギルドの地下会議室では。
薄暗い中に水晶の放つ光が黒髪に艶を与えていた。
その眼は、1点を見つめる。
「おい、そろそろ”寝たフリ”はやめてもいいんだぜ?・・・ヤナ、それとも・・・」
そこで声のトーンが一段落ちる。
「スペル●の開発者の、柳川、香子さん、て言った方が良いか?」
その声に、ムクリと起き上がる影。瞳にはピジョンブラッドが輝いている。
「・・・何の、事かな?」
「さあな?少なくとも1500レベルまで気絶させるトラップにかからないのは、プレイヤーでも無ければ不可能なんだけどな?しかし、お前は召喚されたわけでもなくこの世界にいる」
「・・・」
「そもそも、何年生きてる?調べたが、誰もお前の正確な年齢を知らない。どころか、数百年前の文献にもお前の存在を示す一節がある始末」
「・・・」
「それから、”ヤナ”は、彼女が、こっそりインしてた時に使ってたハンドルネームだ・・・」
「確かに」
「言う気になったか?」
「・・・ボクは、そうであるかもしれないし・・・そうでないかもしれない」
「は?・・・なんだそりゃ?」
「ボク自身、良く分からないんだ・・・」
困ったような笑顔を浮かべるヤナ。
「時々、変な記憶が混ざってくるけど・・・少なくとも今はまだ”その時”ではない、みたいだ」
「”その時”ってなんなんだよ?中二病臭ぇな」
「でも、確かにそうなんだ。ただ、近いうち。分かる事もある、そんな予感はしている」
「それは、つまり”待て”て事か?」
「・・・おそらく。僕に記憶を見せる人物は、そう思っているみたいだ」
「ふーん・・・」
いぶかしげに向けられる視線をヤナが真っ直ぐ受け止める。
やがて。
「・・・」
暫しの沈黙の後、急に興味をなくした様に視線を外したエリザベートが立ち上がる。
その背中へ。
「あ、そうそう。記憶の主から一つだけ、伝言」
「?」
「”重篤なブラコンもほどほどに”、てさ」
「なら、こっちも伝言だ。”見当外れだ馬鹿”・・・ちゃんと伝えておけよ?」
「はいはい、了~解」
その言葉をきっかけに、こちらの”エクストラ”も終わりを告げたようであった。
長い!ゴザルのレンタルビデオエピソード書きたいだけで始めた話がなんと6話構成に・・・(T_T)
神龍がいたら、文章力を真っ先に要求すると思う今日この頃です・・・orz




