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罪の告白☆彡

「あのね、忘れた、て言ったけど・・・私・・・この10年の記憶、あるんだ。・・・本当は」


横のソナタではなく、真っ直ぐ前へと向けられて。

今、彼女の目には何が移っているのだろうか。


「・・・お母さんに鞭を振るった時の記憶も・・・有るんだ・・・」


「でも、操られていたんだし仕方が・・・」


「・・・ううん。あの時の私は、はっきりと「お母さん」に憎しみを持ってしまった。それを何倍にも増幅された感情に支配されて、、、気が付いたら・・・腕を振るってた」


「あれは・・・私の感情、なんだよ。間違いなく・・・」


彼女の目の縁で溢れそうに水滴が募る。


「そっか」


「皆には・・・お母さんには・・・「記憶が有りません」って言って嘘吐いた・・・」


「・・・そっか」


「あの時」


「・・・。」


「あの時、ソナタちゃんを庇うようにお母さんが進み出たとき、ね」


「うん・・・」


「”なんで!なんでよ!あの時は・・・アタシの時は!お母さんは助けてくれなかったじゃない!”・・・って。氷竜王から解き放たれて鬼女の中にあった私の魂が・・・叫んだの」


「・・・・うん」


「そうしたら、憎しみが止められないほど膨れ上がって止められなくて、・・・殺意、だったんだと思う」


「あれが・・・鬼女のものなのか、私のものなのか・・・」


そこで、ソナタを向いた。マユカのぱっちりとした瞳にたまった水滴は縁に留まり切れず、

とうとう溢れ出した。


「・・・ううん。ズルいね。あれは・・・間違いなく、私の感情だった!」


「私っ!私っ!本当に、最低だよね!・・・もう、どうしたらいいのかっ!頭がぐちゃぐちゃになって、、、家に帰りたくないっ!」


そういうと、ソナタを抱きしめるマユカ。ソナタは成されるがままにしていた。


いや、そっと手を背中に回し、ぽんぽん、と叩く。


「ねえ、私!ギルドに住み込みで働きたい!家事も、ウェイトレスでも何でもする・・・ダメかな!?」


「帰って、お母さんの顔を見る度、辛いの!優しく抱き締められると心に苦しさが広がってしまうの!ダメかな!?ねえ、・・・ねえ!・・・ダメなのかなっ!?」


少女が、自分よりも体格の小さな幼女に縋り付く。


―魂から絞り出した叫び、慟哭。


ソナタは何も声を発さず、ただ、ぎゅっと。少女を抱きしめた。




「・・・ごめん、取り乱して・・・」


少しして、頭が冷えたのか、マユカはそっとソナタを掴んでいた手を放し離れようとして。


「・・・・え?」


離れることができない。ソナタは腕を解かない。


「ソナタ・・・ちゃん?」


「いいんじゃないかな。殺してしまいたくなる程、、、強い感情を抱くって事は。

 ・・・逆に、その人がそれだけ大事、って事、なんだと思う」


「・・・・え?」

それはさっきまでと変わって涙にかすれる小さな、小さな声。


「大事だから、わかって欲しくて、悲しくて、ぶつけたくなる。マユカは・・・何にもおかしくなんて・・・ない」


「そんな事・・・」


「いいじゃん。家族なんだから。全部・・・全部。ぶっちゃければ・・・いいじゃん」


「・・・。」


「大丈夫だよ。アユカおばさんなら・・・きっと、マユカの気持ちを聞いても、ぎゅっ、て。抱き締めてくれるから・・・」


「そんな事!あるわけが!」


「・・・大丈夫。俺も、一緒に行くからさ。実は、俺って凄い魔術師だから・・・嘘つくと分かっちゃう魔術、とかもあるんだ。・・・だから、本当の気持ちが・・・ちゃんと、分かるから、さ」


ぽんぽんと、また背を叩くソナタの小さな手。


「それでも・・・駄目だったら?」


「・・・それでもし、駄目だったら・・・」


「ギルド・・・まだ居住区空いてるからさ。マユカだったら・・・大歓迎するよ。・・・無駄になると思うけど」


「・・・っ!」


そうして再び少女の腕がソナタの背に、固く・・・固く回されたのだった。





どれほど抱き合っていたのか。

やがてどちらともなく、結んでいた腕を解き離れる。


「なんか・・・照れるね」

「うん・・・」


照れながらソナタが見上げると、そこにあるのは抜けるような紫の瞳、反して黒い髪。

少し小柄な・・・


―上手くヤレヨ?


「!?」


突如、ソナタの脳裏に不謹慎すぎる彼の義姉の言葉が蘇る。


思わずばっと目を背ける。


と、その頬にひんやりとした手が当てられた。


ソナタの小さな顔が向き直り、少しだけ上向きに。


そこへ。


―唇への柔らかな感触と、甘い…その匂い。


「・・・っ!」


「・・・後ね。もう一つ、覚えている事があるの。」


「・・・素敵な王子様が助けてくれた事・・・、私の、初恋。」


降り行く夜に彩られた微笑みは、反則的な程に美しくて。


「・・・!」

ソナタは再度下を向く。


「目が覚めてみたら…、ちっちゃな…女の子、だったんだけどね!」

「!?」


そして、立ち上がり、柵にその軽やかな体重を乗せ、


「あーっ!もう、全部!全部、言いたい事、言っちゃったぁーーーー!」


いつの間にか暗くなった街へ。

解き放たれた少女の声が響き渡るのであった。





―その後。


結局生まれて初めてのキスに茹で上がった小さな魔術師は何の役に立つ事もなかったが・・・


「・・・お母さん!」

「・・・マユカッ!」


マユカとその母は互いの想いをぶつけ合い再び今まで以上の固い絆を構築したのを見届け、ソナタは家路についた。



帰るやいなや、


「・・・で、ヤッタノカ?」

興味津々の義姉と、


「・・・浮気者」

正妻を自負する某眼帯さんに質問攻めにされたのだが、それは別の話。





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