深淵の追憶・・・☆彡
また、あのお方が登場です・・・☆彡
―レイちゃんっ!
夢を見ている時、はっきりと「ああ、これは夢だな」と思うことがある。
彼女にとって、正に今がそんな状況。
子供の様なアドケナサの残る笑顔、太陽の様な輝きを振りまいて。
後輩と先輩なんて壁、最初から何も関係がないとばかりで。
そう・・・時にはしつこい位にっ!
笑って、些細な事で信じられない位はしゃいで、時にぼろぼろと泣いて・・・。
そんな、あの人との時間。
唯一残された暖かな場所で・・・。
幼い頃から厳格な父、世間体を重んずる母によって籠の鳥として育てられた彼女にとって、
・・・それは唯一無二の「生きている事」を実感できる時で。
「・・・っ!」
眼を開くとそこはいつもの薄暗い空間。千年の時を過ごした深淵の間。
彼女が頬に伝った水の跡を良い薫りのするハンカチで慌てて拭うのと、
扉の向こうに人の気配がするのはほぼ同時であった。
―カツン。・・・カツン。
「・・・女王陛下、よろしいでしょうか?」
―凛としたその声はアデル。
女王が最も目をかけている少年だ。
優美な所作で鈴の柄とつまむと、2,3度振る。
りーん、りーん・・・。
それは「良い」との意思を示す合図。
受けて、美少年が玉座の間に進みゆく。
端正な造形の顔。だが、その表情は険しい。
「おお、ワタクシの可愛い、アデル。今日もお前の愛くるしい表情が曇っておるようだ。・・・何があったのか」
その言葉に少年は伏して礼を捧げると、その姿勢のまま口を開いた。
「恐れながら・・・。先日ご報告した辺境都市、ですが」
「ああ、古の者どもが現れた、という・・・」
「はい。その神聖都市において・・・”根”が断たれました」
根、とはつまり女王直属の諜報集団、「鬼女」が都市から根絶された、という事。
「”鬼女”が・・・」
「は。氷竜王の事と言い、、、忌々しい連中で御座います」
そして、伏したその面差しが少し上げられ、目線が遠慮がちに女王へと向かう。
―討伐命令を。
そう、催促しているのだ。無論、他の者が行えば無礼討ちとなる態度だが、そこは側近中の側近にして寵愛をほしいままにする少年。その程度の我儘は、許される。
「そう。・・・ここまでは思い通りの展開、ね」
「!?」
アデルは驚きのあまり、目を見開いて固まった。
これまた予想通りの反応に女王は目を細める。
「ふふ・・・。流石のお前も驚いているようですね。訳を、説明しましょうか・・・」
そう言って、肩にかけたショールをはらりと落とし。
女王は玉座から歩下りてアデルの前へと進んだ。
千年を経ても変わらぬ美貌。その末端たるしなやかな手指がそっと上がり、少年の顔を持ち上げた。
「・・・!?」
思わぬ至近距離に赤くなる少年。
その耳元へ、女王の真紅の唇が囁く。
「大きな声では言えないのですけれどね。・・・あの都市の”根”は少々短絡的で、困っていたの。陰に潜み、疑心暗鬼を煽る事こそが鬼女の本質であり役割。・・・そうでしょう?」
「は・・・。お、、、仰る、通り、で・・・」
「ふふ、流石にワタクシの愛おしいアデルは理解しているようだけれど。、、、あの者はそうでもなかったの。だから・・・」
「だ、か、・・・ら?」
「反乱分子には潜り込まれるより・・・纏まってもらっていた方が・・・何かと都合が良いでしょう?」
「!?」
「そう、その囮・・・になってもらったわ。案の定、暴走してくれたおかげであの都市は反抗の意思を固くしたみたいね。これでやりやすく・・・なったわね?」
「え、で、では・・・」
「・・・そう」
すっ・・・、と女王が立ち上がった。
すると、その姿を追いかけて陶然と見上げる少年に、打って変わって王としての威厳を放ち、命ずる。
「かつての神聖都市ホーケンは既に邪悪の魔手に堕ちたっ!・・・これより、「朝敵」として宣戦を布告する!」
「・・・・はっ!」
その下知に、少年も寵愛を受ける少年から、忠勇なる部下へと態度を切り替える。
「女王府特別参謀・アデル!その方は”北の同盟者”に出兵を促し、必ずやかの地を・・・焦土と化し見せしめとせよっ!」
「は・・・ははっ!」
少年の眼差しに久しぶりの喜色が浮かんだ。
久しぶりの軍略を一任された事、そして、
―あの忌々しい連中を、自らの手で打ち滅ぼせる機会を拝領できた事っ!
アデルはその美しい頬に紅差しながらも胸の内では既に、何通りもの戦術を算段しはじめていたのであった。
ホーケ●に迫る黒い影!ニゲテーッ!




