巫女の真実
戦いが終わり・・・
「ソナタちゃん、、、なんて、お礼を言ったら良いか・・・」
ここは街の人気パン屋「マユカ・ブレッド」の店舗兼、アユカおばさんの自宅。
その中にある、子供部屋。
娘のマユカが巫女として見いだされ、生贄にささげられるまでの12年間を過ごした場所。
だが、それは10年も昔の事。
であるのに、本来22歳であるはずの娘は、当時のまま。
確実性のない状況に、「看病に付き添う」という名目でソナタも付き添うことになったのだ。
「早く、目を覚ますと良いですね!」
「うん。でもね・・・」
おばさんは、どこか悲しそうな表情で首を振る。
「えっ?」
ソナタが目を見開き驚く。
「・・・目覚めて欲しい、早く、という思いは確かに、・・・ある。でもね。それと同じくらい・・・」
「・・・会えなかった時間の分だけ、何を話せばいいのやら・・・正直、怖くってね」
寂しそうな表情。
「・・・」
受けてソナタも沈んでしまう。
―しかも、この賢く、強い女性は気が付いている。
ソナタがなぜ付き添っているのか、その理由を。
場合によっては目の前で、残酷な2度目の別れとなる最悪の状況もあり得るのだ。
沈黙が支配する。
機械仕掛けの時計が刻む規則正しいリズムの音。
それだけが、重苦しく空間を支配していた。
やがて夕暮れのオレンジ色が窓から差し込んで―
「ん・・・」
「!」
「・・・アユカさん!」
「ま・・・ま・・・」
少女、マユカの目が薄く開き、ベッドの横の二人を向いた。
「マユカ!」
「ま・・・ま・・・、わ・・・た・・・し・・・っ!」
その様子を見て。
「アユカおばさん、・・・俺は、帰るね!」
元気よく立ち上がる。
―もう、大丈夫だ!
根拠は無いがマユカのその眼を見た時、なぜかそう確信したのだ。
「ついでに・・・おじさん、呼んでから!」
―10年ぶりの親子の再開に、邪魔が入っちゃいけないしな。
立ち去ろうとするその背中に。
「ソナタちゃん・・・ありがとう・・・ありがとう・・・・」
かけられた、普段気丈な年配の女性の涙声に。
ソナタの目にも思わず、水滴が浮かんだのを見たものは、誰もいなかったという。
―後日。
他にもマユカの様に突如戻った元巫女の少女達が街中に多数出現した。
歴代神竜に捧げられた彼女達は魂を奪われ、その肉体を「鬼女」の素体とされていたのである。
魂を捉える神竜を倒し、肉体を支配する「鬼女」の元締め、「根」を倒した事で
魂と体が揃い、再び元の姿に戻るという奇跡が成し遂げられたのであろう
、とは後日やっと復活したポコチーニの言である。
ここ2,30年の内に生贄となった者たちは元の家族の下に変えることができたが、それより前に連れ去られた者たちは身を寄せる相手がいない。墓の前で途方に暮れる者が続出した。
幼いものは10台前半の少女達。当然生活する術もない。
その噂を聞いたソナタの鶴の一声で、彼女たちはギルドで保護することになり、、、
「べ、ベランメェ~!目ん玉回るほど・・・いっそがしいぜぃ、チクショウ・・・メッ!」
大工のゴンさんが三日三晩貫徹をする羽目になったという。




