乙女の命の代償は・・・☆彡
「ね、えさ・・・っ!」
「なんて顔してるんだ、、、全く」
やれやれと。
眼前の超常をものともせずに平常運転の、その女。
皮肉っぽそうな、怜悧な、それでいて颯爽としていて。
ソナタの義姉、エリザベート。
・・・だが。
いつもと様子が異なっている。
それに、その手に握られた黒く艶のある束は・・・。
「髪・・・っ!」
ソナタの驚きの声。
だが、それには応じず彼女が行動を起こす。
「・・・我が盟友、黒閃光よ。新たな証を捧ぐ。乙女の命、我が黒髪を以てより強き絆を!」
ぶわっと。
―黒髪が一面に舞った。
最初は空中を荒れ狂うように舞っていたソレは次第に輪郭をあいまいに変え・・・
「・・・結べっ!」
言葉と共に実態の無い影となって、エリザベートが突き出した細い右手の掌に次々と吸い込まれていく。
やがて一面を埋め尽くした黒が消えると、その手に黒い電光が宿る。
「来たれっ!」
・・・クロクテ
・・・カタクテ
・・・ブッ・・・トイノッ!
続けて発したスペルに応じ、エリザベートの突きだした右手に逆巻く風が収斂する。
「・・・黒・閃・光っ!」
単独火力では全プレイヤー中最上位の威力を誇った黒閃光。習得済みのスキルに証を捧げて結ぶ「新約」により更なる位階に昇華したそれは、最早レイド魔術にも比肩する絶対的火力。
掌から放たれた”黒い雷”はソナタの横を通り過ぎ、陽炎に揺らめく空気を噛み砕きながら突き進む。
更に軌道がうねり、神竜王の展開する障壁の脇も掻い潜る。
そして、、、その唯一柔らかな腹部を直撃する。
―バオオオオオオオオォンッ!
思わず上がった苦悶の彷徨。
竜の王は、新たな脅威を防ぐべく・・・堪らず障壁の一つをこれに当てる。
―ソナタの前に立ちはだかる壁は後、一つとなった。
「おい。ソナタ」
「・・・んっ!」
「皆、巻き込んで!ここまで、勝手こいたんだ。最後の責任は・・・自分で取れよ、クソガキッ!」
「・・・・っ!」
ソナタは涙で詰まって役に立たない口の代わりに首を目いっぱい縦に振り意志を示す。
罵倒の形をしていて、・・・でもハッキリと届いたそのエール。
状況を打開するヒントも貰った。
肩口で涙脆い顔を拭い・・・。
「我が新しき盟友・・・スペル、マスター・・・」
―腕は痺れて感覚を無くしている。
「ここに更なる証を捧ぐ・・・」
―口を開くのにも残り少ない気力を削られる。
「我が依代、我が現身を以て!」
―上がらない腕を無理やり持ち上げて・・・、
そして、盟約を紡いだ。
「・・・結べっ!」
直後、ソナタの体中から一斉に血を抜き取られる感覚と寒気が襲う。
一歩後ろによろめくが、暗闇に意識が引き擦り込まれる感覚に抗って叫び、手にありったけの力を篭めた。
「ぉおおおおおっ!」
すると、ソナタが吠えて突き出したその掌から、新約に従い獄炎が浸食されていく。
”透明”による白への蹂躙。
竜王が苦し紛れの咆哮と共に吐き出したブレスはその勢いを寸毫も止めることが叶わず。
その見えざる断罪者はとうとう残された結界に接する。
ぶつかり合ったと思ったその瞬間。
―地響きが、地震に変貌し、
―空気の震え、ではなく無軌道に吹き荒れる暴風となって、
―爆心から、太陽の如き灼熱が撒き散らされ、
―視界は白く覆いつくされ、
―音は限界を超えて知覚されなくなり、
そして、、、世界が爆ぜたのだった。
ついに決着!
でも、まだちょっとだけ下ネタはお預け・・・辛いっす(´TωT`)