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大逆転!スペル・マスターッ☆彡

ポコチーニ氏による特別仕様のアフォ魔術。


ちなみに、くどくて恐縮ですが、氏のプレイヤー名は現実のいかなるゲームとも関連性はございません。あしからずm(_ _)m

レイド魔術とはギルドメンバー全員の魔力を結集して放つ究極の魔術である。

規格外のメンバーが総力を結集した結果、高密度のうねりが生じた。

地が、空気が、そして……世界が震えた。


三角形に陣取ったギルドの面々。その先頭で、いよいよソナタが口火を切るっ!

「前略!……中略っ!」

「「「……以降略っっ!」」」

それに答えるメンバー達。

レイド魔術は先頭の発動者と後衛が言葉のキャッチボールを交わしながら詠唱される仕様である。


「……大きな声では?」

今度は聞き耳立てるポーズで振り返った魔法幼女ソナタ。

「「「言えないけれどっ!」」」

キレッキレのオタゲーで踊りながら、オタゲーダンサーズ、もといギルメン達がこれに応える。

一糸乱れぬとはこの事か。見た目の通り、リアルでも相当な経験値があるのだろうか。

「男子はみんな?」

もう一度。

可愛いポーズで振り返り聞き耳立てて……、

「「「天下無双のオ●ニスト!」」

はつらつ応える最低ワード。

「右手の摩擦が?」

「「「呼び覚ますっ!」」」

頭の上でピラミッドを何度も突き上げるダンサーズ。

あまりに切れの良いその動きは、とあるGのつく生き物を想起させた。

「獄炎、爆炎!」

「「「……腱鞘炎んっ!」」」

「我こそは!」

そして、ソナタが腰に手を当て、半身にターンをして見せる。

ツインテールの髪が綺麗な円弧を描いて流れていく。

「「「スペルマスター!」」」

「略してスペル……!」

「「「……以下略っ!」」」

「迸れっ!」

「「「ゲヘナの炎!」」」

この部分。

言葉だけは元通りだったらしいが、ポーズは腰を突き出し何かからビームを発射するような有様。

”何か”がナニとは言えないが、そこは安心と信頼のアレな仕様だ。

ともあれ、ステッキの先端でバックダンサー達から託された白い魔力の帯が練り上げられ、徐々に赤色に変じていく。

(……うわっ!これ……本当に抑え込み切れるのかっ!)

規格外の古代魔術師9人分の魔力が載ったステッキは冗談の様に波打っている。

ソナタは肩にぐっと力を入れた。

そこからの繋がりを意識しながら絞り込んだ両の腕で抑え込み、半ば強引に正面へとステッキを向けた。


―照準は、目の前の巨竜。


そして、

「放てぇっ!」

発動のキーを唱えると、いよいよ地獄の火焔が解き放たれたのであった。


杖の先端から溢れ出したそれは竜の形を成し、濁流の様に膨大な体積と熱をもって神竜王に向けて殺到する。


一方、対する神竜王。

顔面への強襲を受けたショックから立ち直り、こちらも最終奥義を構える。


竜言語。

人の耳には特大の咆哮としか認知されぬそれに応じ、凍結地獄と空間がつながれ死の猛吹雪が荒れ狂う。

超々高熱の獄炎と絶対の冷気がぶつかり合い、周囲の時空すら歪めながらの押し合いとなる。


「・・・こうなったら我慢比べだ!皆力を振り絞れ!・・・大丈夫!こっちの方が属性の相性で分が良いはずだっ!」


ポコチーニが督戦の声を上げる。

そう。炎は火の上位属性。火と同列の凍気属性相手に優位なのだ。


その言葉が正しいことを示すように徐々にではあるが、炎が氷の龍へ一歩ずつ歩みを進める。

やがて耐え切れずに凍結地獄との門が閉じられると、炎が更に勢いを増した。


危なげない勝利への道筋を誰もが脳裏に描く。

「いっけぇえええ!」

叫ぶソナタに応じるように炎は猛る。


神竜王の六枚ある魔法障壁を一枚、二枚と次々に破っていく。

だが、三枚目とぶつかったその時、突如異変が起きた。

「・・・!?」

ガクン、とソナタの肩が下がる。

急に血を抜かれた様な感覚。


・・・ドザッ。


振り返ると後方のメンバーが一人、地に倒れていた。

「まさか、”気絶”!?こんな時に!?」

魔術師は総量の半分以上魔力を失うと「気絶判定」が発動する。

そして、判定に失敗すると強制的に行動不能状態、つまり「一度に魔力を喪失したショックに伴う気絶」という状態になる。

神竜を想定して作られた新しいモデルのレイド魔術に、トップランクのメンバーとは言えども耐えられない者が出たのだ。


そうなるとどうなるか。

結果は次々に現れた。

倒れたメンバーの分が他のメンバーに負担として掛かり、上がった負荷が更に新たな脱落者を生む。

それはさながら蟻の穴ひとつから堤防が決壊する様であった。

加速度的に戦線が崩れていく。

最終的に残ったのは、、、とある理由から無尽蔵の魔力を持つポコチーニと実践を積んだ事で精神的に強くなり、

気絶を気合で跳ね返し続けるゴザルだけ。

そうなると、当然の如く威力が落ちた。


炎は残り四枚の障壁を突破できず拮抗している。


「クソッ!あと少しだったのに!」

ポコチーニが歯ぎしりする。


「無念・・・。かくなる上は」

ゴザルが前に進み出てソナタに接触する。


「某も気絶するゆえ・・・」

「待っ・・・」


言うが早いか何かがソナタの体に流れ込む。


「後はお頼み・・申・・・」

直後、言葉を言い切れずにゴザルが糸の切れた人形のように倒れこむ。


「なるほど。・・・僕もだ。先に休ませてもらうよ。後は任せた!」

ポコチーニが続く。


こちらも直ぐに電池が切れたように地に倒れ伏す。


今、この場に立っているのはソナタのみとなった。

でも、胸の中に暴れる想いと共に受け取った魔力の奔流。


―自分以外、、、皆倒れてしまった。

―原因は、自分の我儘で。

―なのに、誰一人として文句の一つも言わず。


…全部、全部を気絶してまで、全部の魔力を自分に託して倒れたっっ!



「ぉおおおおおおっ!」

雄叫び。

それとともにソナタの目が赤く輝きを放つ。


―全部を、持てる全部を載せた一撃をっ!


掌に文様が浮かび、込める魔力の桁が跳ね上がる。


新たな燃料に呼応して、炎の色は赤から青、そして白へと変じた。

これによって、既にソナタ自身の魔力も半分を切っていた。

だが気絶判定のハンマーで殴られるような衝撃に膝を屈することなく歯を食いしばって耐える。

託された自分が、倒れるわけにはいかないという責任感だけで

ガクガクと冗談の様に震える膝を叱咤し地を踏みしめる。


―意地でも貫き通すっ!


そして、また一つ。

ガラスの砕ける音と共に障壁が砕けた。


残り、三つ。

残り10%を切った魔力を振り絞り、ソナタが手にさらに力を込める。


―……砕けた。残り二枚。


だが、そこで魔力がとうとう枯渇した。

地獄の炎は相も変わらず白い超々高熱を維持しているが残り二枚の堅固な障壁を突破できない。

気絶はしなくとも、更なる威力を追加できるわけでもなく維持するだけの状況・・・。


―あと、少し、なのに……っ!


悔しさのあまりソナタの目の端に水滴が浮かぶ。


―障壁と炎の衝突は空気を震わせる。

―地を焦がし、熱で陽炎の如く揺らめきを生じ。


それでも突破できない。


―あとたった二枚の、壁。

―残っていない魔力を振り絞っても、残酷なこの世界は奇跡をもたらしてはくれない。

―崩れ落ちそうになるのをまた、気力を振り絞って耐えた。

―無限に思える時間。


と。


「だから、言ったのに。無茶するなって。確かに、・・・言ったよな?」


唐突に後ろから。


ここにいないはずの人物の声が。

さして大きくもない、聞きなれた声が。


ソナタの耳に大きく響いたのだった。

ソナタのピンチに。

・・・とうとう、あの人物が参戦です。


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