想定外・・・☆ミ
今日は下ネタ抜きです。
すみません(;´д`)
ダメ忍者を送り出した後。
待つだけの状況で手持ちぶさたになったソナタはさっきから気になっていた“ある事”をライラに聞く事にした。
安定の抱きグルミモードで二人仲良く座った状態から首をひねり眼帯の女騎士を見上げる。
「…」
「ん?ソナタちゃん、どしたの?」
ソナタの気になっていた事。それは…、
「今日は、瞳がエメラルド色じゃないんだね?」
そう。初めて出会った時のエメラルドグリーンではなく鳶色だったのだ。
「あら、そうね。そういえば伝えてなかったけど、」
言いながら眼帯をぐいと持ち上げると、隠されたエメラルドの瞳が姿を覗かせた。
彼女のそれは、緑眼と呼ばれる珍しい体質。
眼帯を外して解放すると、身に迫る危機と回避方法を感覚的に伝える優れた能力だが、常時解放すると脳に負担がかかるので普段は眼帯を着用し抑えているのだった。
ソナタが初めて出会った時、前衛で彼女だけ生き残っていた理由でもある。
「ヘテロクロミアッ!?…凄いっ!初めて見た!」
「そ、そう?」
「うん!」
だが、その後がよくなかった。
「うん。凄く、…凄く綺麗だと思う!」
なんと、キラキラとした美幼女スマイルが、、、
・・・ライラ御姉様を無慈悲に至近距離から直撃してしまったのだった!
当然、次の瞬間には、ライラの幸福指数が有頂天というレベルを容易く突破、
興奮のあまりに鼻血をアーチ状に噴射しながらのけ反って・・・倒れる始末となった。
「ああっ!ライラさんっ!しっかり!」
まさかの展開にライラの鼻血で純白の贄の装束を汚すのも構わず介抱するも、当の本人は
「にへへ~…、綺麗…しあわせだなぁ…」と。
意にも介さず。
ただ空を陶然と見上げるのみ。
「ああ!?何でこんなことに!」
狼狽するソナタを見つめる他の面々は、、、その面白場面を生暖かに見守っていた。
…のだが。
「…来るっ!」
突如、ライラがバカ面をやめて目を見開いたかと思うと、短く発した。
緊張が走る。
そこへ、追随するように響く咆哮と地響き。
直後に天高く打ち上げられた花火。
それはゴザル氏が想定外に直面した証。つまり・・・
「この圧力、・・・この山に棲むのはただの神竜なんかじゃなく…」
ポコチーニ氏が何時に無い緊迫した雰囲気で吠えた。
「・・・王っ!神竜王だっっ!あんまりにも想定外過ぎるっ!・・・くそっ!」
それは、裏ボスと言える存在。
以前、イベントで登場した時には何十ものギルドが手を組んで挑み、討伐時点の生存者は三人のみ。
今の戦力でマトモに挑めば全滅以外の結末は無い。
ましてや、彼らは異世界に来たばかり。ゲームの誤差に馴れ、十全の力を発揮出来る訳でも無いのだ。
「そんな・・・確かに今までこんな、中腹のここまで神気が響く程の化け物では・・・有り得ない!」
ライラが呆然と呟く。
「兎に角!緊急時シナリオ9番発動だ!説明した通りのルートに分かれて一度逃げ、体制を整えるぞ皆!ここも恐らく、奴に気が付かれているっ!」
そこでソナタが噛みついた。
「でも!そんな事したら俺らが立て直している間に街がっ!?」
「ソナタ君!」
「僕らが今ここで無駄死にしたら誰も立ち向かえなくなる!街はアイツを倒してから立て直せばいい!」
「犠牲者が!」
「バイ・アゴーラで復活させれば良い!」
「嘘だ!あれは時間が経てば間に合わない!」
24時間立つと神殿での復活以外方法がない。
ゲームであれば課金で済むが、この世界では果たして何が必要になるのか。
「・・・」
「それに!ゴザルさんはっ!」
「彼は、・・・覚悟の上だ。考えてもごらんよ。なんで見つかる危険を冒して花火を上げる?彼は自分が犠牲になっても、皆に危機を知らせようとしてくれたんだよ?彼を・・・犬死させるつもりか?」
「まだだ!」
ソナタの脳裏のフレンドリスト。
危うく点滅しながらも生存を示す文字列。
「待て!」
ポコチーニがソナタの腕をつかむ。
「今はまだっ!だ。このまま突っ込んだら全滅だ!」
すると、途端にソナタの目から輝きが失われる。
「・・・」
「どうした?」
「・・・たすけなきゃ・・・たすけなきゃ・・・・たすけないと・・・、はやく、たすけないと・・・・まにあわなくなる、また、まにあわなくなる・・・」
異様な様子に不覚にもポコチーニの手が緩んでしまう。
「!?」
その瞬間、弾丸のようにソナタが飛び出す!
「待つんだっ!」
だが、ポコチーニが再度止めようと伸ばした手は
その影を僅かに掠めただけだった…。