Go or Stay
俺の選択は間違っていたのだろうか
それは、高校に入学したての五月の終わり、
俺、竹中聡は友人である高橋修人とともに、自分が望む非日常の世界について話しながら家に帰る最中だった
それはあったらいいなという空想話であって、決して実現するわけがないとわかっていながら、二人で笑っているだけだった。
「君達を異世界へ連れて行ってあげようか?」
そういってくるそいつが現れるまでは
「君達は非日常の世界に行きたいのだろう?だったら君達に行ってもらいたい世界がある。」
そう言って、そいつは俺たちに近づいてきた。
「非日常の世界だとよ、どうする?」
「とりあえず聞いてみよう」
俺たちは話を聞くことにした。
そいつは俺達と同じくらいに見えたから、もし何かがあっても全速力で逃げれば人がいるところまでは逃げられると思ったし。それになによりも、『非日常な世界』というワードをみすみす逃したくは無かったからということもある。本当なのにそれを聞き逃してしまったら、非常に大きな損になってしまうからだ。
「君達に行ってもらいたいのは、ある魔法世界だ。」
俺たちは息を呑む。
「その世界では、魔法使いが立派な職業として存在し、魔法使いは日々様々な住民からの依頼をこなしながら毎日を過ごしている。簡単なものは高いところにあるものをとってくるだけのちょっとした人助けから、難しいものではモンスターの退治までね。」
「しかし今、強大なモンスターが現れ、魔法使いが今非常に不足している。そこで、他の世界の住人でありながら魔法使いになれる才能があり、なおかつ非日常の世界に興味がある君達に声がかかったという事さ。どうだいこっちの世界にくるつもりはないかい?」
俺たちは顔を見合わせ笑顔になる。こんなチャンス二度とないに決まっている。『もちろんOK』そう言おうとした。
が
「ただ、その世界に行ったら帰ってこられる保証は無い。そのモンスターを倒して、世界に平穏が戻ったなら、帰ることはもちろん可能だ。けれど、向こうの世界で命を落としたのなら、もうこっちの世界でよみがえることは出来ず、そのまま死んだことになる。しかも、こっちの世界で、君達は存在しなかったことになる」
その言葉に俺は衝撃を受けた。
いままで考えもしなかったことだった。向こうで命を落とすことなんて、空想の中ではありえないことだった。
それもあたりまえだ、いつだって空想は自分が主人公なんだから。
けれどそれは空想の話であって、現実ではそうも行かない、俺が某ゲームのぷにぷにした物体のように無残にやられてまう可能性だってあるのだ。
「どうすべきだと思う?」
俺が隣に顔を向けると、
「んなもん行くに決まってんじゃん!」
と隣からは非常に元気な返事が返ってきた。
そういいながら修人はすでにそいつにはなしかけている。
おそらく行く意思を伝えているのだろう。
自分が死ぬ可能性に関しては、あまり重要視していないようだった。
どうすべきなんだろうか?
あいつは俺に才能があるといってくれた。けれでそれは『魔法使いになれる才能』であり、『魔法使いの中でもずば抜けた才能』では決してないのだ。
それに、こっちでの思い出が全てなくなってしまうというのもつらい。生き残ればいい。そう言ってしまえば話は簡単だが、実際死んでしまう可能性がある以上、なくなってしまうという覚悟は必要になる。
けれど、それと同じくらいに、異世界への好奇心は強かった。異世界、魔法が使える、自分が必要とされる。どれもこれもだれもが一度やニ度はあこがれる状況ではないか!
どっちがいい、どっちがいい!?
俺は自問自答を繰り返す。
そのとき、
向こうから声がかかった。
「さて、高橋さんには行くという意思を確認しましたが、あなたはどうしますか?」
そして、迷った末に、自分は最後の決断をした
「俺は・・・行かないことにします。」
あれから大体三年がたち、俺は高校を無事卒業した。
卒業式の帰り道。俺は性懲りも無く、修人のことを思い出していた。
去り際にそいつに聞いた話によると、あいつがまだ生きていたとしても、帰ってくるまではいなかったことになるんだそうだ。だからあいつのことを覚えているのは今、俺だけになっている。
あいつは今、どうしているのだろうか、モンスターにやられたのか、それとも絶賛修行中なのか、はたまた向こうで幸せな家庭を築き、こっちに帰らないという選択をしたのかもしれない。
今でも、どうして俺はあの世界に行かなかったのだろうかと後悔することは何度もある。けれど、やっぱり俺は怖がりなのだろう。自分が死ぬ可能性があると聞いただけで、びびってためらってしまうのだから。俺にはやっぱり空想がお似合いなのだ。
そして例の場所についたとき、俺は久しぶりな顔を見つけた。そして声をかける
「よう、三年ぶりだな・・・」
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