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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第2章 帰りたがらない『かぐや姫』
9/69

第8日 とうとう迎えが来る宇宙人。

 目が覚めると俺の目の前に着物を着た女性がいた。

 どうやら夢をみているらしい。寝よう。








 目が覚めると俺の目の前に着物を着た女性がいた。

 時計を見るともう7時。起きなくてはならない時間だ。俺はゆっくり布団から出るととりあえず洗面台へ向かおうと歩き出す、というふりをして全力で扉へと向かう。

「やばいやばいやばいやばいやばい」

 なんか起きたら知らない人がいた。よく漫画とかライトノベルなんかで知らないうちに美少女が布団にインしていたみたいな展開があるけれど現実で起こると笑えない。こわい。ひたすら身の危険を感じる。

「ってあれ!?」

 ドアが開かない!

「少しばかり乱暴な手をつかいます。情報改ざんでこの空間をもといた空間から切り離させていただきました」

 何を言っているのかさっぱりである。でもこのさっぱりさ完全にやつ絡み。ということは・・・・・。

「お前、ワン太絡みか・・・」

「ワン太・・・?姫様のことでございましょうか?とにかく話をしましょう」

 そうしてさっきまで寝ていた布団の上をポンポンとたたかれる。いや、ここ俺の部屋なんだけど。

 宇宙人絡みだということが分かりなぜか少し安堵する自分。慣れって怖い。強盗とかだったらどうしようかと思った。

 よく見てみるとやはり美人。大人っぽい。ワン太とは違う感じの綺麗さである。あとは黒髪の長髪というところがポイント高い。主に俺に。

 さらに気になることは・・・着物。何枚もの着物を着こんでいる。まるで十二単だ。あれってかなり重くて動きにくいんじゃなかったっけ?この女性にはそんな感じがまるでしない。

「単刀直入に言います。姫様を迎えにきました」

「おー・・・」

 とうとう来たか。確かに今日はあれから約1カ月が経過している5月頭である。七実空人事件から2週間ちょい。うん、ちょうどなタイミングだな。

 ワン太の使った印籠モドキはすごくエネルギーを使う。そのエネルギーの動きはグリーン星の探査機械やらに容易に引っかかるらしい。だからもうすぐ迎えが来るとは聞いていた。

「で、なんで俺に話したんですか?ワン太を直接俺に何も言わずにつれ去ればよかったでしょうに」

「いえ、無理やりなのはいけませんから。私はあくまでも教育係なので」

 あんたかよ。姫様変な知識ばかりだったぞ。なんとかしてくれ。

「姫様の帰りたい意思を尊重したいと思うのです。ですから姫様を自然と帰りたいと思わせなければ私は連れ出すことができません」

 めんどくさい・・・なんてめんどくさいんだ・・・。そんなにワン太が大事なんだな。当然か、教育係ってことは少なくともそこらへんのやつよりは親しいはずだし。

「って待ってください。ワン太、帰りたがってないんですか?」

「どうやらそのようで。この星が気に行ってしまわれたようなのです」

 この短期間にそんな興味あることでもできたんかね。やったことと言えばチンピラ退治ぐらいじゃないか?あー、学校生活も楽しそうだったしな。

「まぁ、なんとなく心当たりはあります。で、俺になんで話したのか?という問いの答えをまだもらってませんけれど」

「あなたに姫様を説得してほしいのです」

 そうくると思った。

「無理です。あなたにできないことがたった一カ月一緒だった俺にできるわけがありません」

「いえ、あなたの言葉の方がきっと姫様はよく受け止めるでしょう」

「なんでですか?」

「それは姫様があなたに恋をしているからです」

「はい?」

「え?違うんですか?」

 推測かよ。適当なことを言うな。少し驚いたわ。

「じゃあなぜですかね」

「なぜですかね・・・って言われましても・・・」

 沈黙。なんだろうこの時間。着物美人は何かを考えているような素振りをしている。時計を見ると未だに7時。ここでは時間が進まないらしい。と信じたい。目ざましが壊れているだけだったら絶対に遅刻だ。

「私には分かりかねます」

 考えた末にでた結論がそれだった。

「では、あなたが説得してくれたらご褒美をあげましょう」

「・・・・・」

 俺はおつかいに出される小学生かなにかなのだろうか。

「この地球を救ってあげます」

「・・・・・」

 規模がでかい!とても俺1人じゃ手に負えない!しかも漠然としている!

「でもあなたが説得できなかったら罰を与えます」

「罰・・・?」

「地球を壊します。そうしたら自然と姫様も帰りたくなるでしょう。帰らざるを得ないの間違いかもしれませんけれどね」

 ふふふと笑うと、

「腕力、頭脳全て同じといえども技術ではこちらが上です。星1つ、しかもこんなに小さな星を壊すことは造作もないのですよ」

 もうやだ、宇宙人。







 学校にて。

 あのあと衝撃の俺への脅し(脅しとは思えない)をくらわされた俺は学校を休むわけにもいかず普通に授業を受けていた。地球が俺にかかっているというのはさすがに実感がない。

 休み時間にワン太と話をしてみる。すなわちチクリだ。ワン太の席の近くに行く。そして廊下へと呼びだし、人目のつかないところへ。これ誤解されないかな・・・。

「おい、ワン太」

「はいはい、ノゾム」

 ワン太はすぐに返事をする。

「着物着た美人ってお前の知り合いにいる?」

「・・・・・・・・・何か言われましたか?」

 いるらしい。やはり嘘ではないんだな、教育係。

「お前を星に帰るように説得しろとよ」

「あーやっぱり・・・」

 ワン太はげんなりとした顔になる。どうやらあの人が苦手らしい。

「あの人の名前はなんて言うんだ?」

「ジール・シキブ・ライト。シキブです」

「シキブ・・・」

 それはなんとまぁ和名っぽい。

「シキブは日本が好きな一家に生まれたので日本文化をいろいろと受け継いでいるんです」

 それで着物だったのか。着こみすぎだが。

「で、そんなシキブがこの地球を壊すわけないじゃないですか」

「あれ?」

 なんでそのこと知っているんだ?

「シキブは厳しい先生ですからねー・・・どうせ脅しに地球を壊すとか言っていたのでしょう。シキブ1人ではとてもそんな権限ありませんよ」

 逆にいえばシキブさんだけじゃなかったら破壊できるらしい。考えたくもない。

「時間はあります・・・」

「はい?」

「いえ、なんでも」

 すごい小声で何かを呟いていたが聞き取れなかった。まぁ、そこはいい。で、だ。

「なんでお前星に帰らないんだ?」

「帰らないっていうより帰りたくない、ですね」

「ほぼ同じだろ」

「実は・・・この学校生活とやらが激しく気にいってしまいまして!みんなと卒業したいとまで思うんですよ」

「・・・・・」

 予想通りだな。

「じゃああの人は無視してもいいのか?」

「はい。というかノゾムははやく帰れとか言わないのですか?」

「なんで?」

「なんでって・・・最初会った時ははやく帰れ的なことを言っていたではありませんか」

「でもお前、学校楽しみたいんだろ?」

「はい、そうですけれど・・・」

「だったらいいだろ。侵略目的できたわけでもなし、普通に楽しみたい目的があるならここにいろよ。無理やり連れ出す方が俺は反対だ」

「おお・・・なんか感動です」

 ワン太はマジで泣いていた。いや、お前泣きやめ。ほんといろいろ誤解されるから。泣きはらした目でクラスとか帰れないから。

「ってことは姫様の意思を尊重うんぬんは嘘なのかよ・・・」

 あの教育係、思ったより性格が悪い。ひねくれている感じでは俺と互角だぜ。

「帰ったらシキブと話してみます」

「そうしてくれ、あの宇宙人きっとアパートらへんをうろついてると思うから」

 俺とワン太は再び教室へと戻った。





 教室に戻ると空人が大あくびしていた。お前もうちょっと手をあてるとかしろよ。ちなみに空人は前回のまま俺の前の席をそのまま乗っ取ってしまった。だから未だに不良扱いである。

 横では可愛らしくちょこんとヒメちゃんが座っていた。シャーペンの芯を出すのに苦戦している。これから俺の好きな仕草はシャーペンの芯を出そうとして苦戦している仕草となることだろう。

「希くん、希。この昼休み、俺寝るから時間になったら起こしてくれ」

「自由すぎるだろ・・・」

 しかし。しかし、だ。空人が寝ることによって俺は最高の時間を得ることになる。すなわちヒメちゃんとの会話だ。今、宇宙人が増えたことによる疲労を回復する最高の時間だ。

「あ、希くん、おかえり」

「ただいま」

 冷静に。冷静に、だ。あまりにも興奮しすぎるともちろん相手に気持ち悪がられてしまう。それだけは嫌だ。絶対に嫌だ。というか第2章から俺のこの語り部の気持ち悪さが増しているのは気のせいです。

 ヒメちゃんは今日も前髪は眉毛の上で真横に切りそろえられ、一部を花柄のピンでとめている。後ろ髪は少し長く、ぱっとみショートカットの女の子だ。ぷにぷにとした少しぽっちゃりめの体格も可愛さを加速させている。

 そして最近ではなぜかアホ毛がぴょこんと立っていた。ヒメちゃんいわく、癖っ毛らしい。いや、それ癖なんてものじゃないと思うけれど・・・。

 しかしアホ毛があっても身長が大きくなっている気はしない。ヒメちゃん小さいからな。そこも含めて大好きである。もちろんうちのクラス全員が。

「みてみて。鶴折ってみたの」

 プリントの切れ端のようなもので鶴を折ったらしい。それを自身ありげに見せてくれた。もちろん笑顔。そして俺も笑顔。ほんと可愛さの塊のようである。

「かわいい・・・」

「希くんって鶴好きなの?」

 首を傾げられてしまった。いや、鶴じゃなくてあなたが、ですよ、可愛いの。もちろん困らせてしまうので言わないけれど。

 ちなみにあの七実空人事件のあと、空人とヒメちゃんの2人にはワン太が宇宙人だということを話した。それぞれ反応は空人はどうでもよさそうに、ヒメちゃんはすごーいって目を輝かせながら、というものであった。

 一発でそこまで信じるのか・・・。2人とも人を疑わない性質なのだろう。空人に至っては実際にあいつの力を見ているわけだしな。

 で、俺が提案したいことは1つ。すでに大家さんの許可はとってある。

「ヒメちゃん、今日とかうちのアパートに夕飯食べにこないか?」

 仲良くなること、である。

 あまり巻き込みたくなかったのだが、侵略が別の意味、そしてシキブさんが地球を滅ぼすつもりはないということが分かると危険はない。

 だったらワン太と友達になってほしかった。特にこの2人。

「急だなー」

 ヒメちゃんが返事をする前に寝ていたはずの空人が返事する。いや、お前はまだ誘ってないんだが。聞いていたのなら説明する手間がはぶける。

「無理かな、2人とも」

「俺はいいぞ」

 空人はあっさりOK。

「僕は一回家に帰ってお姉ちゃんに聞いてみるね。・・・でも迷惑じゃないの?」

「あー、そこは大丈夫。うちの大家さん若者と騒ぐことによって若返ると思ってるから」

 お願いだからこの2人に変なところを見せないでくれよ・・・と思ったが無理な話だったので諦める。

「というか、ヒメちゃんお姉さんがいるの・・・?」

 まさかの事実に話がそれる。聞いたことなかったんだが。

「うん」

「へー・・・」

 ヒメちゃんのお姉さん。それはきっとさぞかし可愛いんだろうなぁと思う。だってヒメちゃん可愛いし。家族全員のほほんとした感じなのだろう。癒される。

「じゃあ、今日、よろしくな」

「おっけー」

「うん、ありがとう」

 そう言って会話を打ち切ろうかと思った時、ヒメちゃんと俺の間に人が入り込む。おい、誰だ、天の川の如くヒメちゃんとの交流を邪魔するのは。

「失礼するわ」

 神埼さんだった。動揺というか緊張している感じであったが声からは微塵もそんなことを感じさせない強さがあった。なんというか容姿が可愛いので見ているとこちらが気後れしてしまう。

「えっと・・・神埼さん?」

「白木くん、あたしも今日、お邪魔してよろしいかしら」

「は、はい?」

 いつも通りの強さで高飛車な態度で放った言葉は予想外のものであった。

 全く神崎さんと交流のなかった俺には予想することすらもできない事態。夕飯食べるだけなのに不安さが増したのはどういうことだろうか。


ここから第2章です。


ラブコメ、といいつつも未だに誰もラブしていません。第2章なのに。


キャラ紹介的な話が全て終わればもっとスムーズにいくと思うので、よろしくお願いします。


なんかこれ前にも言ったような・・・2回言った方が伝わりやすい、そうプラスに考えます。記憶力が弱いなんて、思わない。


ではまた次回。

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