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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第1章 宇宙人は唐突に
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第6日 結局決意をかためる宇宙人。

 ここで唐突だけれど我がアパートの内装、というよりどのようなものか、というのを紹介しよう。

 玄関は1つ。そこに入るとみんなが使用できるリビングとなっている。その奥にある長い廊下、そこにそれぞれの部屋がある。

 もちろん男子と女子では階が別。例外としてなぜか俺のお隣さんは宇宙人(女子)となっているわけだが。

 ここに住む者は全員学生で高校生から大学生までいる。

 そして大家さん。大家さんは時間の空いている日には晩御飯を作ってくれるときがある。その時は住人全員をリビングに呼んでのパーティーなのだ。

 食費もかからず栄養もとれる。自炊できない人には本当にありがたい。

 そして猫ちゃんとのじゃれあい(猫っぽい)の次の日。朝から大家さんに「今日はパーティーよ☆うぅん!若返るー」という俺からしてみれば悲痛の叫びをあげながら起こされたわけである。

 そこで俺はこの説明を聞いたわけだ。そう、まるで自分は経験済みですとばかりに話していたが全て今日知ったことであり、大家さんの受け売りである。

「えぇと・・・」

 時間を見ると昼12時。

 今日は学校が休みな土曜日というわけで昼御飯を作ってくれるらしい。時間は昼1時から。

「もうそろそろだな」

 俺は椅子から立ち上がり、部屋を出て、隣の部屋をノックする。

 大家さんから「彼女、呼んでおいてね☆うぅん!肌のはりつやー」と頼まれていた。まだ誤解がとけていないのか、ふざけているのか。あと肌のはりとつやはもうどうにもなりません。

「おーい、う・・・」

 宇宙人と言おうとして慌てて口を閉じる。あぶねぇ。

「おい、ワン太。おーいお隣さーん」

 返事がない。どうやらいないらしい。

「うーん・・・」

 あいつに出歩けるだけのこの街の知識とかあったか?と思って急に不安になる。常識については少しねじ曲がっているが大丈夫なはず。ただ、常識以外が不安だ。

 他にも俺は今日ほとんどこのアパートのメンバーと初めて顔を合わすので実は1人じゃ不安だったりする。人見知りとまではいかないが緊張はする。

 ワン太がはやく返ってこないかなぁ、なんて恋人みたいなことを思いながら俺も街に出かけてみることにした。あと1時間。十分に時間はある。

「ん?」

 後ろを振り返る前に下を見るとなにやら手紙らしきものが。

 開くとそこにはワルディード・ハルン・タブレースという名前が。・・・・・誰だ?

「あぁ」

 ワン太か。分かりにくいな。ワン太とか宇宙人とか書いとけよ。

 書いてある文章は短い。しかしその下に典型的なタコ型の宇宙人が描かれていた。あいつ宇宙人であることに対してふざけ始めたな。

 文字はなんとも女子っぽい。でも間違いはないし、本当にこいつ地球にきたの初めてなのか?それとも教育係みたいなのがいて、その人に教えてもらったのか。

「どうでもいいか」

 俺は文章に目を通す。

『今度こそあなたをヒーローに。恩返しをしてみせます』

 ほらみろ。ろくなことがない。不安だ、すごく。

 俺は急ぎ足で街へと出かけた。






 あたしは見てしまった。

 たまたま暇で天体観測をしに山へ行った時。あたしは空からUFOが落ちてくるのを見た。

 神々しい輝きはニセモノとは思えず、そこから降りてきた宇宙人らしき人間もまた普通の人間とは思えなかった。

 完璧な容姿。どこぞのお姫様を思わせる豪華なドレス。どれをとっても普通じゃない。

 あたしはもちろん混乱した。信じられない。こんなの人にも話せない。絶対に馬鹿にされる、とそこまで考えて、その場にあたし以外の人間がいることに気付いた。

 同い年ぐらいの男の子。その男の子はあろうことかその宇宙人と話していたのである。

 内容は主に侵略がどうのこうの・・・これは放っておける問題ではない。

「・・・・・・」

 そしてその次の日。宇宙人と男の子がそろってあたしのクラスに転校してきた。その時のあたしの記憶はない。唖然としてしまって覚えていない。でも混乱する、ということではなかった。

 チャンスだ。

 あたしはそう思った。ここで宇宙人の宇宙人である証拠をみんなに突き付ければ信じてくれるはず。

「・・・・・そう、そうよ」

 あたしは間違っていない。侵略者を追い出すためにあたしは証拠をつかむ。必ず。

 しかし数日たった今でもその宇宙人ワルディード・ハルン・タブレースと名乗った宇宙人と友達になるどころか話すことすらできない。怖いのだ。何をされるか分からない。

「でも・・・やるわ」

 主に好奇心。人に話したら笑われるかもしれないけれど、それでもあたしはやる。

 そうして街、都会という言葉がよく似合う街の中でも大きい場所。大きな道路が走っていてそのまわりには大きなお店、ビルなどが立ち並ぶ。休みの昼間は人通りが多い。

 あたしは部活仲間と遊びにきて帰る途中である。

「はぁ・・・・・」

 ため息をついたことを誤魔化すように大きく伸びをしたとき目の前にいたのは。

「ワルディード・ハルン・タブレース・・・」

 あたしのクラスメイト。宇宙人(仮)であった。







「はい?」

 名前を呼ばれたので後ろを振り向くとそこにクラスメイトである神埼阿国かんざきおくにさんがいました。

 彼女は膝上丈のズボンをはいてレギンスで包まれた足。そして髪型は典型的なツインテール。クラスでも活発で部活、ソフトボールでも活躍している子です。

 私は不良さんの手掛かりを探すため、ノゾムをヒーローにした恩返しするためにいろいろと探っている最中でした。

 私のフルネームを覚えていてくれたことが嬉しくなり、わくわく、どきどきします。

「神埼さんじゃないですか。どうしたんですか?何か用ですか?」

「え・・・あぁ・・・うんうん」

 なぜかひどく怯えているように見えます。なぜでしょう・・・。

「どんな御用でもなんなりと」

「あー・・・えーと・・・」

「?」

「あ、あの!」

「はい」

「あなたって宇宙人なの?」

「はい?」

 なんかものすごい質問をされた気がします。聞き間違いじゃなければ宇宙人、と。

 うーん・・・正直私はこれを隠す必要はないと思っていたんですが・・・ノゾムにすごい怒られるのもごめんです。ここは穏便にすませましょう。

「いいえ、私は宇宙人ではありませんよ」

「え・・・?か、隠してるんでしょ!」

 と言ってから彼女はしまった!みたいな顔をしていました。宇宙人やらの発言は地球で馬鹿にされる対象だということを聞いたことがあるのでそのせいでしょうか。

 しかし私は宇宙人ですから。馬鹿にすることもしませんよ。そういう笑みを浮かべます。

「私は宇宙人ではありません。ただの一般人、地球人です」

「・・・・・・頭のおかしなやつ、とかって思わないの?」

「私は信じてますから、宇宙人」

 そういうと何かを思ったのか少し考え事をしたあと、神埼さんはこわばった表情をやめて、普段の明るい彼女に戻りました。

「そう・・・ごめんなさいね。変な質問して」

「いえ、楽しかったです」

 そうやって温かい空気が流れます。このままじゃあ、と去ろうとした時、道の奥に金髪。

「ま、まさか!」

 あれは不良さん!あの学ラン、そして長髪、全部一致します!しかし距離が遠いです。

「でもこのぐらいの距離なんでもないですね」

 そう言って、私はとん、とテレポート。不良さんの入って言った道の前に瞬間移動。これきつくて週1でしか使えないんですよね・・・。

「よーし」

 ノゾムのため、地球のために頑張るぞー。







「え・・・・・?」

 あたしの目の前からワルディード・ハルン・タブレースが消えた。

「な、な、な・・・」

 そんな、さっきまでのワルディード・ハルン・タブレースさんは幻覚とかじゃない・・・よね。ってことは本当に・・・。

「ま、待ちなさい!宇宙人!」

 やはりあたしは正しかった。







「・・・・・・」

 クラスメイトの神埼さんが道で宇宙人と叫んでいた。

 ・・・・・・すごく嫌な予感がする。やはり街にでかけてよかった。

「あいつ・・・なんかヘマやらかしたんじゃないだろうな・・・」

 さらに小走りで道の奥へとはいっていく。

 するとそこには。

「ワン太」

 宇宙人、ワン太がいた。

「ノゾム。どうしてここに?」

「あと30分でお昼だぞ。大家さんのパーティーだ」

「あ、あぁ、もうそんな時間ですか」

「お前こそ、こんなとこで何やってるんだ?」

「いえ・・・その・・・あれを見てください」

「あれ・・・?」

 さらに道の奥。そこには俺を殴った金髪不良七実空人がいた。しかし状況は少しおかしい。

「あいつ・・・何やってるんだ?」

 その金髪不良が、俺を一撃で沈めた(これは俺の根性がないせいだが)不良が、なぜか頭を下げていたのだ。土下座。俺は人がマジで土下座しているところを初めて見た。

 何かを言っているみたいだが・・・聞き耳をたてる。

「それを返してくれ・・・」

「いくら土下座しても無駄だ。お前にはまだ少し不良をやってもらう」

 2人分の会話。

 金髪不良の土下座している相手はまた柄の悪い不良、というよりチンピラだった。

「分かった、なんでもする。だからまずそれを・・・・・」

「うるせぇ」

 思いっきり殴られる七実。俺と対峙したときにボロボロだったのはこのせいか・・・?

「それは俺が妹からもらったペンダントなんだ・・・それだけは壊さないでくれ」

「だから大切に扱ってやってんだろうが」

 チンピラが持っているのはおもちゃのペンダント。そこまで見えるとチンピラのまわりに3人、さらにチンピラがいることに気付く。なるほど、あれじゃあ多勢に無勢だ。

「わかりやすいよなぁ・・・昔の不良漫画かってぐらいに分かりやすい弱みを持ってる男だ・・・明日も来い。また不良をやってもらうからな」

 そうしてチンピラ3人衆は帰って行った。残された七実は土下座の姿勢をやめて自分の拳を思いっきり地面にぶつける。地面を殴った。もちろん手からは血がでている。

「くそ・・・くそ・・・くそ・・・・・!」

 ヒメちゃんの言うことは正しかった。彼は不良なんかじゃない。ここで一部始終を見ただけである俺でさえそう思った。

「なるほど・・・少しまずいですね」

「何がだ?」

「あのリーダー格のチンピラ、どうやら宇宙人みたいです」

「なっ・・・!」

 お前以外にもいるのかよ。しかもあんなに地球になじんでやがる。

「カブス星のやつみたいですね。腕力は人間と同じ程度。ですが悪さするときの頭の回転は半端じゃないです。自分が刑務所に入りたくないから他のやつに悪さをさせてそれを見て自分はすっきりする。そんな悪党中の悪党ですよ」

 ってことは宇宙人のいい出汁にされているわけか。それは穏やかじゃない。

「ワン太。お前から見てあの七実空人は喧嘩で宇宙人に勝てるか?」

「はい。勝てます。彼はかなり喧嘩が強いです。ですが相手もそれは分かっているのか数を増やし、そして人質をとっているらしいですね」

 というか、私はハルンです、といつものように付け加える。

「ノゾム。あなたはどうしますか?」

「言っとくけど俺、すごい喧嘩弱いよ」

「知ってます」

「一緒にボコボコにされるかも」

「分かってます」

「今以上にひどい怪我を負うかも」

「そうかもしれませんね」

「下手したら死ぬかも」

「それは・・・・・それは困りますね」

 そう言って笑う宇宙人。

「お前は勝てるのか?」

「私は喧嘩すごい弱いですよ。能力も腕力もないですし。宇宙人って意外と不便なんです」

 愚痴をこぼす宇宙人というのも珍しい。

「テレポートももう使えないですし」

「テレポート!?」

 そんな便利なものがあるのかよ!初めて知ったわ!

「そうですねぇ・・・では視点を変えてみますか」

 ワン太は先生のように人差し指を立てる。

「ヒーローになるためではなくお友達のヒメ岡さんのため、それに彼、七実空人とその妹のため、それならどうですか?」

「それなら・・・しゃあないな」

 そう言って俺は立ち上がる。

「ただし俺はお前に全力で頼るぞ」

「情けないのに堂々としていますね・・・大丈夫です。ドンパチはおこしません。平和に解決します」

 そう言ってワン太も立ち上がり、2人で明日のために力をつけるためアパートへと戻った。







「時間ぴったりー☆」

「・・・・・・」

 アパートに帰るとちょうど1時。そこには地面にねっころがるアラフォーが1人。おい。

「なんかねー、あなたたち以外の住民は忙しいみたいなの。だからあなたたちしかいないんだけどそれも寂しいなーって思って・・・」

 話しながら転がるコスプレおばさん。

「じゃーん!近所の巫ちゃんを呼んじゃいましたー☆」

「どうも、お兄さんにお姉さん」

「猫ちゃん」

「猫柳さん」

 しかし猫ちゃんも床に転がる妖怪若作り女が気になるらしい。

「愛ちゃんに誘われたんできました」

「あーん!巫ちゃんかわゆいー!若さっていいわー。彼女なんでもできるのよー料理も洗濯も。あなたたちが知り合いなのには驚いたけれどね」

「・・・・・」

 猫ちゃんが来たことはいいのだがこの床転がりが気になる。

「一応聞きますが、何をしてるんですか?」

「最近ねー床にワックスかけたの。だからその床に体をこすりつければ肌もツヤツヤになるかと思ったんだ☆てへりんこ☆」

「・・・・・」

 手段が末期である。そこまでしないといけないほど手を尽くしたんですね・・・。

「もっと年相応のふるまいをしてください」

「ぶーばぶー」

「2歳かよ」

 さっきまでのシリアスな雰囲気が台無し。

 その後大家さんが作った信じられない量の料理を食べましたとさ。ちなみに意外と宇宙人って大食いなんですね。

一応章分けをしました。今は第1章です。


新キャラもでてきました。まだあまりスポットがあたっていませんが。


次あたりで第1章も終わりです。


ではまた次回。

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