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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第7章 救うために
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第66日 救う宇宙人。

 気付くと抉れた山のふもとにいた。まだロープウェイに乗る前である。

「・・・・・」

 時計を見る。

 俺はさっきワン太が死んで・・・それで・・・。しかし時間はあのときから少し戻っていた。

 そして俺がいる場所。まさにこれから抉れた山に乗りこむかのようなこの場所。

「時間が戻ってる・・・?」

 いや、違う。

 ただ、時間が戻ったわけじゃない。俺はさっきのことを鮮明に覚えている。世界の変更。少しずつ少しずつあの時とは違う世界に変えていったからここでしわよせがきたのか?

 でもそれはどうでもいい。

 俺は本当にワン太が死んでいないか確認する必要がある。

 そしてどのように変化しているのか、確認するんだ。

「・・・・・」

 驚くほど俺は冷静であった。時間が戻ったというのに。もしやまた未来を見せられていたのでは?とも思ったがそれは違うと確信めいたものが俺の中にある。

 なんなのだろう、この感じ。

 分からないけれど、もし時間が戻ったのなら好都合。俺は銃をその場に捨て、ロープウェイに乗り込んだ。





 ロープウェイを降りる。

 この変化はなんなのか。なぜ時間が戻ったのか。細かいことは全部分からない。けれどそれがとても俺にとって好都合であることは事実だった。

 そして目の前に広がるのは・・・。

「UFO・・・!?」

 いくつものUFOであった。ざっと10機はあるだろうか。そのどれもが俺の見たUFOの形をしており、神々しい光に包まれていた。

 この中のどれが本物だ?という考えはすぐに捨て去った。これら全てがUFOなのだ。気付けばこの山には人1人としていなくなっている。

 UFOから階段が降りる。

 そこから人間、恐らく宇宙人であろう人間がおりてくる。

 一番奥のUFOから降りてきたのは・・・。

「ワン太!」

 俺はワン太を救うために走り出す。しかし他の宇宙人たちに道をふさがれる。

「あれがお前の言う宇宙人か」

 ワン太の奥から出てきたのは装飾をじゃらじゃらとつけた男。

 恐らく、王だろう。冠とワン太の怯えた姿を見れば分かる。

「我が王家に伝わる未来投影機と自殺銃を手渡すほどの人間がいると思って来てみたらただの子供ではないか。ハルンよ」

「・・・・・」

 何か話しているみたいだがここまでは届かない。

「あいつか・・・!」

 俺はまわりの宇宙人に糸を絡ませる。

 やはりまだ残っていた俺の力。借りた力。

 思いっきり腕をひっぱり、道を無理矢理あけさせる。

「今行くぞ・・・!」

 理由はどうあれやりなおせるのならこっちのもんだ。

 絶対にお前を救う!

 あいた道を走る。しかし次々と宇宙人は俺の行く手を阻む。

「どけよ・・・!」

 ワン太はこの星を守りたかっただけだろう。なのになんで死ななきゃいけなくなるまで追い込まれなければならないんだ。

 心が優しいだけで、正しいことを言うだけで死ななきゃならないのかよ!

「ワン太!」

 しかし数が尋常じゃない。

 このままじゃ数で負ける。

「ふむ。お前の力を貸しているのか。なら、普通の人間ではないということだな。遠慮はいらないか」

 王が何かを言うと手元から銃を取り出す。

「死ね」

「王!」

 ワン太が叫ぶもその引き金はひかれた。

 ヒメちゃんが撃たれるところを思い出し、再び怒りが湧き上がるも、どうしようもない。

 俺はその場から動けずに撃たれた。

 ・・・・・・・・・・・・・・・・。

 ・・・・・・撃たれたはずだった。

 しかし実際にその銃の光線は俺の手前に落ちている。時間が戻ったわけじゃない。これは恐らく、テレポートに似た何かのはずだ。

 ワン太は半分俺に力を貸しているからそんなことできないはず。

 なら・・・誰が?

「無理しすぎです、あなたは。1人で何と戦おうとしているのですか」

 その声は俺の後ろから聞こえた。

「その声は・・・」

「お久しぶりです、と言ったらいいのか分かりませんが味方登場」

「バズーカちゃん・・・」

 そこにいたのは再び迷彩柄の服を着たバズーカちゃんであった。手にはいつものバズーカを持っている。身長の小ささも変わっていないみたい。

「だいたい、ここらへんに人がいない時点でおかしいと気付いてくださいよ。私の得意な空間移動のおかげなんですよ。あの王様はそんなこと考えませんからね。それにこうした一般人を殺そうとするのは許せませんね、王様」

「それならば心配ない、バズーカ。そやつはハルンの能力の一部を引き継いでいる。まぁ、だとしてもこれから侵攻する星だからな、気にする必要はない」

「それは困りますね」

 今度は逆サイドからだった。

「シキブさん・・・」

「姫様第一の私が姫様の好きなこの星を壊させるわけにはいきません」

「シキブ!」

 今度はワン太が嬉しそうに叫んでいる。

「これであなたの味方は2人増えました。さらに増えることでしょう」

「はい?」

 意味深な言葉に俺は首をかしげる。

 すると後ろでばきっ!ばきっ!という音がした。どうやら後ろから俺を攻撃しようとした宇宙人を倒した音らしい。

「よ、希」

「空人・・・」

 そこには空人がいた。俺のことを希と呼ぶ空人が。

「はぁ・・・はぁ・・・空人くんはやいよ・・・」

 後ろから走ってくるヒメちゃん、神崎さん、椿野。

「なんでお前たちが・・・」

「なんつーかさ、俺らって仲よくなかったか?なんとなくではあるし、微妙に思いだせるかギリギリな感じなんだが、他人って感じがしなくてね」

 それに神埼さんが被せる。

「どうせあたしたちをこれに巻き込みたくないとか言ってあんな態度とったんでしょ。なんとなくわかるわ。あなたがそういう人だって」

「うん、希くんはいい人だから。ね」

「ヒメちゃん・・・」

 椿野も俺に近寄る。

「冷たいこと言ってごめん。なんとなくだけど思いだせる。あなたは春にとってとてもとても大事な人だった。だったらあなたの大事な人を助けるために手助けしないとね」

「椿野・・・」

「んじゃ、まわりのザコは俺らに任せろ」

「では、私は防護結界でもはりましょうか。あなたたちザコがいくらかかってこようと意味はありません」

「シキブさんこわいよ・・・」

 いつもの面々がここで揃う。

 俺の夢見た光景。みんなで笑ってみんなで過ごす時間。そのためにも・・・。

「わかった・・・。頼む、みんな」

「あいあいさー!」

 バズーカちゃんが元気に言うといきなりバズーカをぶっぱなした。

 どがぁあああああああん!というギャグみたいな音とともにみんなも散らばる。防護結界だかのおかげでどうやら向こうの攻撃は効いていないみたいだ。

 というか空人が圧倒的すぎる。忘れていたけれどあいつすごい喧嘩強いんだよな。俺の見た未来でも人質をとられなければいいところまでいっていたし。

 前を見る。

 そこにはみんなの作ってくれた道があった。

 1つしかない細い道ではあるけれど。俺はそこをひたすらに走る。

 走る。

 俺の願望を、願いを叶えるために。

 ひたすら走り続ける。

 するともう1機隠れていたのか新しいUFOが目の前に。

「しまった・・・!」

 やられる。

 恐らくシキブさんもここまで離れた俺に防護結界ははっていないはず。

 しかし、その横にもう1つUFOがとまる。

 仲間か!?と思ったものの他のと形が違う。

「少年!」

 そこから降りてきたのはミサキさんとその他大勢の宇宙人達。

「いやぁ、最近になって記憶が戻ったみたいな感じになってね。わざわざ君のことを思い出して助けにきたというわけさ。だからここは任せな」

「ありがとうございます!」

 お礼を言ってここを任せる。

 もう隠れているUFOはいないらしく、俺はなんとか最後のUFOのところまで来ていた。

「よ、ワン太」

「ノゾム・・・!」

「ちっ・・・」

 王の方はどうやら不機嫌らしく、こちらを睨んでいる。

「地球人が・・・」

 しかし俺はそれを無視する。

「ワン太。聞いてほしいことがある」

「はい」

 ワン太は目に涙を浮かべながら嬉しそうにこちらを見る。

「俺はお前が死ぬのは嫌だ。誰が死ぬのも嫌だ。全員無事で終わりたい。そしてみんなで過ごしたい」

「はい・・・」

「だからお前が死ぬことでこの星が救われても喜べない。勝手なことを言ってると思うが、俺は全員を救いたいんだ」

「はい・・・」

「ワン太、俺はお前のことが好きだ」

「はい・・・!」

 伝えたいことは今はこれだけ。

 後は・・・。

「王様でしたっけ?」

「・・・・・それがどうした?」

 俺のとっておき。

 誰も死なせないというのは味方だけじゃない。敵もだ。敵味方関係なく俺は救いたい。

「お願いですから、この星を侵攻しないでください!ワン太を好きにさせてあげてください。お願いします」

 そう言って土下座することだけが俺にできることだった。

 我ながら情けない。

「・・・・・お前は今、自分の敵に頭を下げているんだぞ?」

「はい。でも俺は全員死なないで無事にこの騒動を終わりたいんです。それは王様、あなたも同じです」

「それで、侵攻せずにハルンをここにおくことを認めろということか?ふざけるな。そんなこちらになんの得もない交渉に応じられるか」

 そう言って銃を握り締め、俺に向ける。

 俺はそれを見ても頭を下げ続ける。

「お願いです」

「撃つぞ。撃たれたくなければ顔を上げてそこから逃げ出せ」

「嫌です」

「死ぬぞ」

「嫌です」

「くっ・・・!」

 王様は引き金を引く。

 しかしそれは俺の真横にあたっていた。

「お前は本当に避けないつもりか?今、我がお前に向けて撃っていたら死んでいたぞ」

「死ぬのは嫌と伝えたはずです。全員というのは俺も入っているんです」

 俺は学んだ。俺には頼るべき仲間がいるのだと。

 俺は俺以外を救う気でいたが、それでも元通りにはならない。俺がいた場所には俺がいなければいけないのだ。ならば、俺はここで死ぬわけにはいかない。

 俺は俺も救う。

「そうか・・・。ふむ。お前、今、ハルンにプロポーズをしていたな」

「プロポーズ・・・?」

 そんなことはした覚えがない。だって結婚してください、であって付き合ってくださいじゃないだろ、プロポーズって。

「ハルンはここにおいておく。つまらん場所かと思ったら存外面白い場所だったようだ。侵攻はもともと我の趣味のようなものだから。ハルンに継いだ時にそれがなくなろうとも構わないと思っていたのだよ」

「え・・・」

 なんか思ったより軽いな。

「それにお前のような婚約者が見つかればそれでいい。せいぜいいい星を作るがいい」

「いや、待ってください」

 そんな話しましたっけ・・・。

「ではな。ハルンうまくやれ。あいつはなかなかみどころのあるやつだ」

「もちろんです、まぁ、すでにノゾムは私にメロメロですがね」

 否定できないのが辛い。

「それとすまんかった」

 今度は俺とワン太に王様が土下座した。

「え、えと・・・」

「お前らには苦労をかけた。それにハルンよ。お前は自殺も考えたそうじゃないか。すまん。我は他のことが見えていなかったみたいだ」

「王様・・・」

 そう言うとまわりの宇宙人を連れて、UFOに乗ってグリーン星に戻っていった。

「えーと、これは終わりでいいんだよな。めでたしめでたしだよな・・・?」

「はい、お疲れ様です。ありがとうございます。愛しています、ノゾム!」

 ワン太が俺にダイブ。

「ぶふっ!」

 疲れていた俺はそのまま気を失い、倒れた。

 ノゾム?ノゾム?と呼ぶ声が聞こえる。

 終わったんだ。俺は今度こそ、みんなを救えたんだ・・・。





 目を覚ますとそこはアパートの自室。

「俺の部屋・・・?」

 脇腹を見ると銃がかすったあと。やはりあれは夢でも未来でもなく本物だったらしい。

 それは俺も分かっていることではあった。

 ワン太から力を得た俺はそういうことに敏感になっていた。しかし今はもうそれを感じない。

 試してみるとやはり糸は出ないみたいだ。

「そうだ・・・ワン太・・・」

 ワン太はどこだ?

 まさか王様と一緒に帰ってしまったのか!?

「ワン太!」

 そう叫んで立ち上がろうと手に力を入れた瞬間。変な感触。

「なんだこれ」

 下を見るとなぜか全裸のワン太がそこにいた。下半身は布団で隠れて見えないが、上半身は大変なことになっており、その一部分を俺が触れていた。

 やはりワン太はでかいと思っていた。服の上から見ても。

「うんうん」

 状況を理解し、うなずきながら少しずつ離れる。

「なんで全裸・・・?」

 昨日のことをまるで覚えていない俺は混乱しかしない。

 でもワン太がいることに安堵している俺であった。

 いや、これどうにかしなきゃいけないんだけれど・・・。

 

次回、エピローグで終わりです。


いつものような日常回をエピローグ後に特別編として少しあげるかもしれませんが、1話ぐらいだと思います。

自分自身後日談が好きなので蛇足であっても書いているのですが、これに至ってはたぶん書かないんじゃないかなぁと。

もし書いていたらよろしくお願いします。


では、残り後2話ぐらい。

また次回。

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