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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第7章 救うために
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第64日 助ける宇宙人。

 次の日。何から次かというと七実空人の妹である七実神子と出会ってからということである。俺はあの後、詳しく話を聞いた。そのまんま昔と同じように七実空人は不良になっていた。やはり悪い連中とつながっているらしい。

 そこは変わっていない。だとしたら変わっているのは俺と空人の妹が出会ったことである。これは予定になかったに違いない。

「その要因が、この変化が今後どのようになるのか・・・」

 それだけがただただ心配だった。

 そのように考えているとチャイムが鳴り響く。これで放課後だ。俺はすぐに不良のたまり場へ向かおうと席を立つ。ちなみに俺はクラスで完全に浮いていた。それはそうだろう、初対面のくせに俺はあんなことを言ってしまったんだ。神崎さんに。

 まわりの視線は痛く、俺に話しかけようとする人は誰1人いなくなっていた。

 それでも構わないとばかり俺は教室を出た。

「あの・・・」

「・・・・・・・」

 廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。

 この声に聞き覚えはある。

「ヒメちゃ・・・じゃなくて姫岡くん」

 思わずのことに若干雰囲気をゆるめてしまう。まだ俺に話しかけてくれるのか。しかしその優しさは今の俺にはきついものがある。

 思わず返事をしてしまったことを後悔した。

「名前、覚えててくれたんだね」

 にっこりと笑う様はまさに天使。女神。宗教とかよくわからんけどこんな女神を崇める気持ちは分からないでもない。なんて、そんなことまで考えてしまうほど、俺はみんなとの出会いを喜んでいた。

 ああやって冷たくあたったものの、俺はまだみんなを求めている。

「・・・・・」

 しかし俺はだまってその場を去る。何か、呼びとめる声みたいなのが聞こえたがそれも無視した。

 そのまま走る。走って一気に玄関まで行き、靴を履き替え、外に出た。

 正直懸念はまだ消えていない。なぜならば俺はすでに大家さんと出会ってあのアパートで暮らしているから。もっとはやく決心がついていれば・・・と悔んでいてもしょうがない。

 大家さんに宇宙人が関わらないように注意しなければならないな。

 今思えば不思議である。

 自分が関わりたくないと思った宇宙人に途中自ら関わりにいき、そして今、みんなから宇宙人を関わらせないようにしている。

 こんなことになるだなんて昔は思わなかったな。みんなと楽しく騒いでいた日々が懐かしい。

 街へと行く。ここまでくれば、俺の住んでいるアパートあたりとは違い完全に都会となる。

 街の裏路地。その入り口にまた立つ。

「あぁ?」

 いた。

 俺とワン太で倒したチンピラ。そしてその近くには・・・。

「空人・・・」

 七実空人が。

 金髪で不良だったころの空人がいた。

「誰だ、お前」

 そう聞いたのはチンピラの1人。

「・・・・・」

 もちろん答えるつもりはない。

 この場でこいつら全員に負けを認めさせなければならないのである。何か方法があるわけでもない。秘策があるわけではない。喧嘩慣れもしていない。

 でも、今俺は人から借りた力を持っている。

 そして前回の、夢の、未来の知識がある。

「七実空人だな」

 一応確認をとる。

「・・・・・誰だ?」

 心底不思議そうな顔をして首をかしげる。

「チンピラ。七実空人に関わるのはもうやめてくれ」

「あぁ!?てめぇいきなり来て、何様のつもりだ!」

 ボスらしきチンピラのそばにいた2人の手下たちが襲いかかる。

 俺にはもう分かっている。

 手を伸ばし・・・。

「いけ」

 見えない糸を飛ばす。

 今までまったくでなかったその力がいきなり出る。そのことには驚かない。なんとなく今、この時は大丈夫なのではないかと思ったのだ。

 ワン太の最後の俺にくれた力。

 糸は2人に絡まり、向きを変え、パンチがお互いにヒットする。そのまま自爆のようにただ、倒れ、気絶した。

「お前・・・・・宇宙人か・・・!」

 俺がこの場所で頼ってはいけないのはワン太自身。ワン太のくれたものや借りたものはすでに俺のものだ。ジャイアニズムではないけれど、この場はそれでいいはずである。

 そしてこのボスはやはり俺の見た未来と同じように宇宙人であった。

「しかもその力・・・すごい安定感だ。荒さが1つもない」

「七実空人から手をひけ」

「はっ・・・なめんな!」

 チンピラが走り出し、殴ろうとする。思いだす。俺は昔、いや未来にこれをくらって動けなくなったんだっけ。それを理解している今はあの時と違う。

「ぶっ☆殺!」

 そのパンチはとてつもない振動をプラスさせ殴る技。くらった場所はしばらく使いものにならなくなる。ならば当たらなければいい。

 その拳に俺は糸を巻きつけた。

「なっ・・・!」

 その糸は拳から体全体へ巻きつき、身動きがとれなくなった宇宙人はその場に倒れる。

「ち、ちくしょう!」

「これはお前のためにあるものだろう・・・?」

 俺は手元にあのおもちゃの銃らしきものを出す。

「ワン太が言ったのはこのときなんだろう。この時。地球にきた宇宙人を殺せ。それはこいつのこと」

「それは・・・王家の・・・!」

 やはり特別な何かなのか、この銃。

 でもそれもどうでもいい。これで・・・この銃でこいつを撃てば全てが大丈夫になるはず。全てが守られて全てが・・・。

 俺は迷わずに引き金を引いた。

 カチッ。

 乾いた音が響く。

 しかし宇宙人は死んだわけでもなくただただ驚いている。

「それは王家の・・・王家の銃・・・!」

「ん?なんだ?」

 効かないのか、これ。

「王家のものかよ・・・ちっ。分かったよ。その銃でもう撃つマネごとをやめろ。おとなしく、こいつから手を引くよ。もちろん自首もする」

「撃つ・・・マネごと・・・?」

 これは銃のはずだろ・・・なんでマネごとになるんだ・・・?こいつでチンピラを撃てばみんなを救えるんじゃないのかよ・・・・・!

「お、おい・・・」

 後ろから怯えた声がする。

 それは七実空人のものであった。

「お前それくらいにしとけよ・・・そのおもちゃの銃で何するかは分からないけれど、殺すとかなんとか・・・それをするのはやめてくれ」

「お前はこのチンピラをかばうのか?」

「違うよ・・・」

 七実空人はいつもの、俺が未来でみた優しい笑顔を浮かべてこう言った。

「俺を、妹を救ってくれたお前を人殺しにしたくない。妹から聞いたよ。少ししたらお兄ちゃんを救ってくれる人がくるって。疲れている顔をしていたけれどあの人はヒーローだって。ほんとガキくさい妹ではあるけれど、お前は今俺の中で完全にヒーローだ」

 なんかよくわからない能力を持ってるみたいだけどな、とまた快活に笑う。

「俺はそんなんじゃないよ。あんたらを救うためでもない。じゃあ」

 そう言ってその場を去る。

 後ろでは空人が何かを言っていたような気もするが、それを完全に無視。

 俺はアパートに帰っていった。





 なんというかかんというか。

 ワン太から出されたお題はもう残り1つ。地球にきた宇宙人を一人殺せというものだけになった。それは完全にあのチンピラのことだと思ったんだがどうやら違ったらしい。

 それに撃つマネごとといった。

 では、あれは撃つものではないということなのか?でも銃と言っていたし。

 翌日。

 俺はいつものように帰宅の準備を始めていた。

 あと、この日々が何日続くのか。いつになったらみんなを救えるのか。それを考えながら過ごすのはストレスになっていたようでご飯がなかなか通らなくなっていた。

 それでもいい。みんなを救えるのなら。

 そういえばあの日使った見えない糸はもうでなくなっていた。当然だろう。きっとワン太が俺にそれを貸してくれた理由はあの時のためだったのだから。もう用済みである。

 教室を見渡す。

 みんなの冷たい視線が時々刺さる。が、もうそれにも慣れた。ヒメちゃんだけが未だに俺に話しかけてくれるがそれもほとんど無視している。

 実はまだ残り授業が1時間残っているのだが、どうせロングホームルームだ。ほぼ連絡事項と自習だけなのだからいる意味もない。

 教室を出ようと扉に手をかけると、それよりも先に扉があいた。

「お、よっす、ヒーロー」

「・・・・・」

 七実空人がそこにいた。

「空人くん!」

「あぁ、小花くん、久しぶり。心配かけたな」

 するとすぐに空人は俺を見る。

「で、もう帰るのか?」

「いや、お前こそ今更何しにきたんだ・・・」

 もう次が最後の授業だぞ・・・。

「いや、なんとなくだな。なんとなくお前に会えそうだったし。お礼を言い忘れてたからさ。ありがとう」

「・・・・・」

 教室のまわりはみんな不思議そうな顔をしていた。

 それも気にせずに俺は教室を後にした。



 夜。

 俺は抉れた山にいた。理由は簡単である。

「・・・・・・UFO・・・・・」

 俺はこの街にきてから毎日夜、抉れた山に来ていた。それは今日も変わりなく。

 七実空人を助けてから約1カ月。ようやく俺のもとにUFOがやってきたのだ。

 神々しいそれは綺麗な光とともに無音でゆっくりと山に降り立った。すぐに階段が地面に降り、そこからある人物が降りてくる。

 光のせいでまだ見えない。誰だかは分からない。ようやく光がおさまり、安定した頃、その人物の顔が見えた。

「ワン太・・・」

「こんにちは、地球人」

約1カ月間があいてしまいました。その割に文字数も少ないですけれど・・・。


次ははやめにあげたいなぁ、と思っております。


ではまた次回。

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