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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第7章 救うために
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第60日 戻る宇宙人。

『あなたを今から少し前に送ります。それで猫柳巫の母親を救うのです。タイムマシンはかなりエネルギーを使いますので、チャンスは1度だけですよ』

 俺はその言葉を頭の中で思い出す。というかそもそもタイムマシンがさらっとでてきたことに驚きではあるが、それどころじゃない。

 俺は4年前に来ていた。俺が引っ越してきた街ではあるのだが、雰囲気が全然違う。4年でこうも代わるのだろうか、という感じである。

「ここに猫ちゃんのお母さんが」

 猫ちゃん自身も小学生ではあるが、いるはずである。俺は心に決めた。みんなを救うために頑張ると。無力な俺に何かできるのならこれしかない、と。

 とまぁ、そんなことを考えていたんだが・・・。

「これどうすっかな・・・」

 俺が降り立った場所は抉れた山。実はこの頃はまだそんなに抉れていなかったらしいのだが、タイムマシンに乗ってきた俺が降り立った影響でかなり抉れてしまった。

「・・・・・・・・・・俺のせいでもあったわけね・・・」

 静かに抉れた。音もなく。そのせいで事態に気付く人はまだいなさそうだが、騒ぎに巻き込まれるとめんどくさい。とりあえず山を降りるか。

 ロープウェイに乗り、山に降りると、そこには今とは違う街の風景。宇宙人推しという意味の分からないことをしていたこの街ではあるが、それがされていない。

 恐らく、大昔の抉れた部分などは小さくてこの時点ではあまり目立ったものではなかったのだろう。それを長い年月をかけ、今の俺などのせいで大きな抉れへと発展したらしい。それを最近の街の人間が騒ぎたてたのかもしれない。

 俺はとりあえず俺の夢の記憶、未来で見た猫ちゃんの家にいこうとしたとき、目の前の横断歩道で人を見た。信号機の色は赤。

「まさか・・・」

 あれが猫ちゃんのお母さん?だとしたらここで助け出さないと・・・!俺は指先に力をこめる。見えない糸。もし猫ちゃんのお母さんじゃなかったとしてもここで・・・!

「救う!」

 手を伸ばす。でも、そこからは糸も何もでない。釣り糸・・・俺の唯一の力が消えた!?

「ちっ!」

 それでも立ち止まっている暇はない。走る。ただただ走る。

「間に合え・・・!」

 ってあれ・・・?

「ちょ・・・!」

 その人は何かに気付いたかのように急に立ち止まる。

 俺はその急な変化に驚き、咄嗟に止まろうとするも、間に合わない。信号は青になり、その人も歩き出しそうなとき、俺はその人の背中に思いっきりぶつかった。

「おわっ!」

 その人は驚いたような顔をして、俺のほうを向いた。

「ずいぶんと堂々とした痴漢だね」

「あの・・・すいません」

 俺はとりあえずこれは不可抗力であることを説明した。もちろん俺がどこから来たのかなどは全てふせてある。

「私を助けようとした?」

「え、えぇ、まぁ」

 その結果、めちゃくちゃあやしまれている。

「信号機に気付かずぼーっとしてた私を?初対面のあなたが?」

「・・・・・・・・はい」

「なんだ」

 ところがどっこい、なぜかその人は急に警戒心を解いた。

「まぁ、もともとぶつかられただけだし、最初から何もする気ないわ」

 どうやらさばさばした性格の人らしい。にかっと笑う笑顔が綺麗で年上のお姉さんという感じだ。

「ま、ならなんかお礼をしないとね」

「い、いや、なんにもしてませんし」

「いいの。私の気が済まないから」

 そう言うとお姉さんは俺の方を向いて・・・

「私の名前は猫柳禊ねこやなぎみそぎ。よろしく」

 そう高らかに名乗ったのだ。

 この人がやっぱり猫ちゃんの母親。見た目は若いけれど、やはり頼りがいがある。母の強さというものだろうか。それにしても猫ちゃんに似てるな。猫ちゃんが成長したらこんな感じになるんだろうか。

 とりあえず、禊さんの頭に「?」が浮かんでいたので、ここで自己紹介をしておこう。一瞬あの時の猫ちゃんの顔を思い出してしまったが、今はそれを考えない。

「あ、俺は白木・・・」

 まで言って、名乗っていいものなのか?と考え始める。もしここが過去で未来とつながっているのなら変な齟齬が生じないだろうか。

「白木ジョンです」

「あっはっは。犬みたいな名前だね」

 失礼だろ。とりあえずは本名を名乗ることを避けよう。

「で、ジョンくん。お昼を食べていかないかい?お礼と言ってはなんだけどね」

「あ、えぇと」

 携帯を開くと時間はまさにお昼になろうとしていた。少しここで話しすぎたかな。

 ここで断ってしまったら禊さんを事故から守りにくくなるかもしれない。というか普通に腹が減ったのである。

「じゃあお言葉に甘えて」

「いよっし!ならうちにこい。私には娘がいてな、まだ小学生なんだがぜひ遊んでやってくれ!」

 快活に笑う禊さんを見ていると俺もなんだか笑顔になってしまう。なんだか暖かい。こんな人が死んでしまうなんて想像できなかった。少なくとも、今の俺には。





「いやぁ、さんきゅーさんきゅー。ジョンくんはいいやつだな」

「・・・・・・・・・はぁ・・・」

 猫柳家。俺はそこのリビングでくつろいでいた。俺が見たときから家の内装は変わっていないみたいだ。それも当然か。猫ちゃんがあえてそうしていたのだろう。死んだという事実から目をそむけるために。それを思うと思わず気分が沈んでしまう。

 それを悟られないようにここまで着た道のりを思い返すこととしよう。

 お昼をいただく話をしたあと、ここに来るまでに全ての横断歩道で禊さんは事故に合いそうになっていた。どうやら別のことを考えていたらしい。だとしても危険すぎるだろ。

 世界が禊さんを殺そうとしているというのは少し考えすぎだとしても見てはいられなかったため、俺は常に禊さんに声をかけた。

 ほんとついていかなかったら危なかったよ。たぶん、今日さえ過ぎれば事故にあうこともないはず。事故で死ぬのが今日の予定ならば、今日さえなんとかすれば。

「だれ・・・?」

 俺が考え込んでいると不意に声がかかった。うしろを振り向くとそこには小さな女の子が。まさか・・・この女の子は。

「猫・・・ちゃん・・・?」

「だれ・・・?」

 不安そうな表情。たぶん猫ちゃんだ。俺が会った猫ちゃんは確か中2ぐらいだったか。あれから4年前。10歳の猫ちゃん。あのときは大人びていて同い年かと思っていたのに。

 こんな年齢のときに母親がいなくなるのは確かに辛いものがある。

「おー、巫ちゃん。昼寝から目が覚めたのか?」

「ママ。この人だれ?」

「おう、さっき手伝ってくれたジョンくんだ。ジョンくん、この子は私の娘の巫だ。巫、ジョンくんのおかげで昼飯が食えるからな、ありがたく思えよ」

 いや、そんな大層なもんじゃないんだが・・・。

「ありがとう」

 そんな俺考えとは裏腹に素直にお礼を言う猫ちゃん。

「どういたしまして、猫ちゃん」

「猫ちゃん?」

「あ」

 まずい。思わず昔のニックネームをつかってしまった。

「ははは、猫ちゃんだとよ、巫。お前確かに猫みたいだもんなぁ」

「猫?」

「そうだ、にゃんにゃんだぞー」

「わ、分かってるよ。子供扱いしないで。猫・・・」

 可愛らしい猫の姿を思い浮かべているのか幼女状態の猫ちゃんが微笑む。なんだか気にいってもらえたみたいだ。禊さんが細かいことを気にしない性格でよかった。

「あ、その禊さん。今日はなるべく外出を避けてくれませんか?」

「む?どうしたジョンくん」

「いえ、というかですね。今日ぼーっとしすぎです。何回車に轢かれかけたんですか」

「いやぁ、今日なんかぼーっとしちゃってて。でも大丈夫、もうどこにも出ていかないよ」

 そう禊さんは笑った。





「なんでっ!なんでっ!」

 俺は携帯片手に夜の街を走っていた。携帯には一件の着信。メールだ。

『ジョンくん、ごめん。巫が熱出たから病院行く。約束破ってごめん』

 そう綴られていた。

 約束ってあの程度のことをそんな律儀に。メルアドを交換しといてよかった。

「まずい、まずい!ここだった!この時だった!」

 俺はひたすらに考える。おひるごはんから振り返ってみよう。現状を整理する。


お久しぶりです。本当に長い間があいてしまいました。次はもう少しはやめに投稿できたらなぁと思います。


ではまた次回。

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