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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第6章 終わりゆく世界の中で
59/69

第58日 始まる宇宙人。

「この地球人・・・強い・・・!」

 姫岡が追われていたところに登場した金髪の不良好青年、七実空人。普段は真面目なためあまりふるわない暴力ではあるが、喧嘩は強い。それがこの場においても活かされていた。

 七実は距離を詰める。思いっきり踏み込むことによるダッシュ。それに対し、宇宙人は思わず腕が出るがそれを七実は独特のステップでかわした。

 不良時代、喧嘩により培った経験によるステップ。

「なっ・・・!」

「らあっ!」

 今度は七実が腕をふるった。ただ単純に殴る。その一撃が宇宙人にヒットする。

「くそっ・・・!」

 宇宙人にもプライドがある。だから先ほどから特殊な技を一切つかわずに戦っているのだが、やられては元も子もない。

「しょうがねぇ・・・」

 宇宙人は羽を広げた。それはノウンが見せたものと同じではあったが、規模が違う。ノウンの方が何倍も何倍も強くて大きいのだ。

「空人くん・・・」

 息絶え絶えな姫岡が七実に話しかけた。

「大丈夫。飛ばれる前に潰す」

 また距離を詰めるためのダッシュ。先ほどとは比べ物にならないほど速い。それに驚いた宇宙人は一瞬羽を動かすのを止めてしまった。

 それが命取りとなる。

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 また単純な暴力。

 ただそれだけで宇宙人は地に落とされた。

「がっ・・・!」

 どうやらこの宇宙人、一方的にやるならまだしもあまり場数をふんでいないらしい。あのチビっこ、バズーカの方がまだ強いぞ、と七実は思いつつ、姫岡に近づく。

「大丈夫か、小花くん」

 しかし後ろを振り向いたそこには姫岡はいなかった。

「動くな、金髪」

 別のところからかかる声に慌てて振り向くと、別の宇宙人が姫岡を捕えていた。

「もう1体・・・!」

「動くな。単純な手ではあるが動けばこいつを殺す」

 宇宙人の手にあるのは拳銃。脅し、ではないはずだ。今、こいつらに人質は必要じゃない。七実を楽に殺すための道具でしかない。

 するとその宇宙人はおもむろに拳銃を投げた。つきつけているのとは別の拳銃だ。

「おい、お前。それで自害しろ」

「!!」

「空人くん!駄目だ!」

 しかし七実に選択肢はない。七実が一番大事に思っていたものは七実ではなく、友達。まわりの仲間だったのだから。

「お前が死んだらこいつは助ける」

「・・・・・ほんとだな、それは」

 七実は落ちている拳銃を拾った。

「小花くん。俺が学校に来なくなっても、冷たくあたっても友達でいてくれてありがとう。感謝してる。だからこれは迷うまでもないあたりまえの答えなんだ」

「空人くん!!」

 パァン!という乾いた音。七実はその場で倒れ、そして2度と起き上がることはなかった。

「空・・・人くん・・・」

「さぁて、じゃ、お前を殺すか」

 そして拳銃の引き金を引こうとしたとき、何かが指に絡まり、動かせなくなる。

「あぁ?」

 宇宙人が上を向くと、そこには・・・・・・。







「バズーカちゃん!」

「はい!」

 俺はヒメちゃんと空人のもとへとむかった。下を見るに空人はもう・・・。

「これ以上誰も死なせない!」

 そして見えない人を出し、引き金を引こうとした指を止める。

「誰だお前?」

 そう尋ねた宇宙人は次の瞬間、吹き飛ばされていた。バズーカちゃんだ。俺はもちろんそのチャンスを逃さない。相手の宇宙人に向かって釣り糸を伸ばし、それでがんじがらめにする。

「なっ・・・」

「お前・・・・・!空人に何をした!」

「何もしてない。運が悪かったんだよ。運悪く、俺らが2人いたことに気付かず、運悪く人質をとられてしまい、運悪く死んでしまった。困るんだよな、そういうのを人のせいにするのはさ」

 またここでも不運と言っている。やはり不幸が地球に運び込まれているのか・・・?

「あのさぁ、ぼーっとしてるとこ悪いけど、また忘れてんだろ。俺らが2人いることを」

 そこで俺は我に返り、ヒメちゃんの方を向くと、すでに人質をとられていた。

「ヒメちゃん・・・!」

「動くな、動いたらこいつを殺す」

「希くん!だめ!さっきもそれで空人くんが!」

 ヒメちゃんは泣いていた。それはそうだろう、目の前でこんなことが起こっているのだから。なのに俺はいつまでも冷静で空人を見ても涙が出ない。

 なぜか変に落ちついている。

「くそっ・・・!」

 そんな自分にいらつきながらも敵を睨む。

「さっきと同じ・・・と言いたいところだが、しゃあない」

 そう言うと宇宙人は拳銃をなげつけてきた。

「それでこいつを撃て」

「!?」

 もちろんこいつとはヒメちゃんのことである。

「お前が殺さなくても俺が殺し、お前が殺したらそれはそれでラッキー。逃げ場がないだろう。ちなみにそこの強いちびっこ。動くなよ。お前に俺が殺されたとしてもこいつを殺すだけの時間は一瞬でもあるんだからな」

「くっ・・・」

 何やらかっこ悪いことを言っているが、それどころじゃない。

「俺にヒメちゃんを殺せ・・・?」

 いや、それだけじゃない。殺さなくてもヒメちゃんは殺される。逃げ場がない。どうやってもヒメちゃんが死んでしまう。

 ここで俺が求めるのは自分の力ではなく仲間だった。シキブさんでもノウンさんでもいい・・・ワン太。お前はこんなときにどこに行っているんだ・・・。

「10、9」

 宇宙人がカウントし始めた。もちろん俺の答えは撃たない。ではあるのだがそれでもヒメちゃんが死んでしまう。どうすればいいんだよ・・・。

「8、7」

「くそ・・・くそ・・・」

「6、5」

「くそぉ・・・」

「4、3」

 そうして宇宙人は笑いながら。

「2、1」

「やめてくれぇええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」

 そこで俺は気付いた。あの時、不幸の黒い指輪から流れてきた叫び声を。

 え・・・

「あれは・・・俺の声だったのか・・・・・?」

 世界は崩れた。





「雪ってすごいんですね」

 ワン太は俺の前を歩きながらそう言った。

「見たことなかったのか?」

「はい、私の星には雪なんてありませんから」

 ワン太は近くの積もった雪をつかみながら笑う。雪がない星。まぁ、日本でも雪が積もらない地方もあるからな。

「じゃあさ、ハルンさんは雪合戦、とかしたことないの?」

 そこに割り込んできたのは神崎さんだ。

「ゆきがっせん?」

「こう・・・するのさ!」

 遠くから空人が俺にむかって雪玉を投げつけてきた。あぶねぇ!

「あのね、雪玉を投げて遊ぶ遊びなんだけど・・・空人くん危ないよ!」

 ヒメちゃんが雪合戦を知らないワン太に教えながらも空人を注意していた。とりあえずヒメちゃんを守らなければ。

「大丈夫だ、ヒメちゃん。俺が君のナイトになるから」

「意味分かんないんですけど・・・」

 なぜかワン太が俺を軽蔑した目で見ていた。おい、なんだその目は。

「では姫様、私と遊びましょう」

「シキブ」

 そこにシキブさんも登場。

「遊びと言えばハノもー!」

 バズーカちゃんも雪合戦に加わる。

「いや、なんだか人数増えてきたな・・・」

「お兄さん、何してるんですか?」

「猫ちゃん」

 学校帰りと思われる猫ちゃんが尋ねてきた。

「雪合戦するんだとよ。ワン太が雪合戦知らないらしくてさ」

「それは珍しいですね。では私が雪合戦世界チャンプであることも知らないのですね」

「俺もしらねぇよ!」

 初耳だわ!ここで出すには遅すぎる称号だろ!

 そう言うと猫ちゃんはみんなのところへ。混ざりたいのなら素直に言えばいいのに。いや、ある意味素直すぎるぐらい素直か。

「なんか荒れてる」

「椿野」

「雪合戦でしょ。春も混ぜてよ」

「いや、いいが。もういい加減魔女衣装やめろよ。風引くぞ」

「甘いよ。これは冬用さ」

「変なところで変な技術を・・・」

 もとは大家さんが作ったものなので手作りはできるのだが・・・アレンジまですんのか・・・。

「ん?大家さん?」

「呼んだ?」

「うわぁ!」

 俺の真下から顔がにょきっと現れる。それは大家さんに他ならないのだが、登場の仕方が斬新すぎるだろ。雪に埋まってんのか・・・。

「こうすると雪の美白が私のものになると思わない?」

「微生物とかに養分吸い取られてしわしわになりますよ」

 相変わらずすぎて何も言うことができ・・・・・・・・・。

「ばぁう!」

「あ、ごめんごめん」

 ものすごい勢いで雪玉が被弾。投げたのはノウンさんだったが・・・威力が半端ない。

「間違って手から落としちゃって」

「それであの威力!?」

 本気でなげられたらリアルアンパ〇マンでリアル新しい顔よ!をしなくてはならないところであった。もちろんパンではないのでそんな簡単にはいかないのだが。

 みんながおおはしゃぎして騒ぐ。俺も混ざろう。

 雪玉を作り適当に投げる。

「ノゾム、楽しいですねこれ」

「冬のだいご味の1つだしね。やっぱこれがないと冬がきたって感じがしないんだよ」

 みんな絶対に冷たいのに、それを気にしないぐらい盛り上がる。

 もう少しで受験。受験を終えたらこうしてみんなで集まることもなくなるのだろう。みんな卒業して、俺はもしかしたら家族と住むかもしれない。

 それか遠い場所へ行くかもしれない。ワン太は?シキブさんやバズーカちゃん、ノウンさんは?

 みんなバラバラになる。

 それでも俺らは今を楽しむんだ。必ずいい思い出になるのだから。







 目を開けるとそこは病院の手術室のような場所だった。しかしとても広く、機械の量も半端じゃない。その機械から伸びるコードやらはすべて俺に繋がれていた。

「なんだ・・・ここ・・・」

 とは言ったものの、俺は前にこの光景を見たことがある。一瞬、俺の脳に流れ込んできた記憶。学校祭の最終日。花火のときに流れてきた記憶。その部屋がここだった。

 上を見ると真っ暗な中にいくつか光が見える。

「星・・・か?」

 夜空。俺の目の前には夜空が広がっていた。でも俺は屋内にいるはずだ。どうして・・・?

「まるで宇宙人なしでは生きれないようではないか」

 そこで声が聞こえた。近く。俺の後ろから聞こえる。

「君は答えを考えようとはしないのですか。それとも本当に宇宙人がいないと何もできないのですか」

「誰・・・だよ」

 見えない。ちょうど蛍光灯やらの光で見えない位置に立っている。

「先が思いやられますね。これからあなたには地球を救ってもらわなければならないのに」

 平坦な声。まるで感情がこもっていない。聞く者を凍らせるような声であった。

「抉れた山。そこで全てが終わります」

 そいつは勝手に話し始めた。

「待てよ・・・お前は誰だ」

 俺は確か、みんなが死んで、それでヒメちゃんが殺されそうになって叫んで・・・。

 手に何かがあたる。どうやら携帯電話のようだ。ポケットから携帯電話を取り出すと、

「なっ・・・!」

 日付は3月24日。

 俺はさっきまで12月で、年を越してすらいなかったんだぞ・・・!待て、じゃあ俺は3カ月近く眠ってたということか?

 そのことに気付くと俺は慌てて立ち上がった。

「みんなが!みんなを助けないと!」

「落ちついてください。あなたはきちんと時計を見ましたか?」

「は?」

 現にこうやって3月・・・って・・・。

「年を越してない・・・?」

 すなわち、時間の巻き戻り。

「時間の巻き戻りではありません。今までの世界が偽りの世界だったのです」

 その人物はゆっくりと俺に近づく。

 そのおかげで光による影が消えていく。

「お前は・・・・・!」

「もう一度いいます。地球を救ってください」

「ワン太・・・?」

 まるで表に感情を表さない、別人のようなワン太がそこにいた。

この作品が終わった後の作品について考えていたりします。女の子主人公とかいいような気がします。


話はとうとう佳境。これからが本番、という感じでしょうか。


ではまた次回。

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