第55日 ここから始まる宇宙人。
私は物心ついたときから姫として育てられてきた。生まれたら姫で記憶でもどこでも姫だった。しかし友達がいないというわけではない。そこらへんは割と自由だったのだ。
普通の学校に通い、普通に生きてきた。もちろん家庭教師やらは一流ではあるけれどそういうのをとってしまえば普通の女の子と大差はなかった。
ただ、親に会ったことがないということをのぞいたら。
なぜか母も父も会ってくれなかった。なので私の記憶の中には顔が思い浮かばない。もちろん電話などで声を聞いたことはあるのだけれど。だから正直親というものがいまいちピンとこない。
私の家族はなんでも知っているシキブ、それと私が姫ということを気にせずに遊んでくれるバズーカぐらいである。
「姫様、お勉強の時間です」
地球でいうと高校1年生になりたての時。私はいつものように朝、城をぶらぶらと散歩しているとどうやって私の居場所を調べたのかはわからないが毎回8時30分にシキブが呼びに来た。
中学から私は学校に通えなくなった。父と母の考えらしいけれど顔も見たことのない親から言われてもいまいち納得できなかったのを覚えている。
だって小学校の友達は全員中学へと通うことになったのだから。おかげで友達は0に近い。楽しみだったのになぁ・・・中学。
「シキブですか」
「む、姫様。なんですかその口調は。確かに姫は礼儀正しくあれと言いますが私などの下の者にはそのような敬語は使わないでいただきたい」
「そんなの私の勝手です」
「しかしその態度では調子にのる者もでてくるかもしれません。それでは姫様が危うい」
「シキブは調子にのって私を裏切るんですか?」
「いえ、私ではなく。私は姫様のことが大好きでございますから裏切ることなどいたしませんよ。第一、どれほど私があなたのことを思っているか。申し訳ないながらも我が妹のように接しているといっても過言ではありません。姫様が前に言ってくれた家族、という言葉もとても嬉しかったですし。そういえばそれで思い出したのですが、先日いえ、幼稚園の時でしたっけ?母の日になぜか私にプレゼントをくださったときのことなんですが。私母親という年齢ではありませんし、嬉しかったのですが少しショックというか・・・」
「わ、わかりました。もうわかりましたから」
シキブはいつもこんな感じだ。でも、だからこそ私はシキブに心を開くことができたのかもしれない。
「シキブ、では勉強しましょうか」
「いえ、ですから敬語を・・・」
「母も敬語なのでしょう?」
「それはそうですけれど・・・姫様の年齢でその落ちつきはまだはやいような・・・」
「いいんです。私は母と父のやっていることを認めている訳ではありません」
「・・・・・姫様、どこでそれを・・・」
「だからこそ私は今のうちにこの国の王女になるために頑張らなければならないのです。私はあの人と同じことなんてしない」
シキブはしばらく下を見ていた。
「姫様、私は王と王女に仕えているというより、姫様の家庭教師です。ですから私は王より王女よりあなたを大事にしたい。姫様、話があります。勉強の前に」
「・・・・・?」
シキブは先生らしく時間に厳しい。勉強の前に無理矢理何かをいれるということはない。それよりも何か大事なことがあるということだろう。
そして私はその後とても大事な、大変なことを聞いた。
それは私の見ていた世界の崩壊でもあった。
新しい章というか間章なのですが、実はこれで終わりだったりします。すぐに次の章、正式な続編を書いていきたいと思います。
ではまた次回。