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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第5章 何もできない冬。終わりの季節。
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第53日 事実を知る宇宙人。

「お兄さん、珍しく今日は清々しいそうな顔をしていますね」

「もう年下に相談事するような情けないマネはしないぜ!」

「お兄さんってメンタル弱いくせに変なプライドありますよね・・・」

 そんな怪訝な顔をして俺を見ている猫ちゃんに会った下校の時。俺は1つの決意をかためていた。2人の女性、というか女の子に告白されるというもう人生ここがピークでこの後は下り坂なんじゃないかと思うぐらいの出来事に対する答え。1つの決意。

 俺に足りないものはたくさんある。その中でも一番、俺が答えを選ぶのに邪魔だったものは自分というものを認めるということだった。

 無力な俺を認めて先に進む。みんながいるということを改めて実感し、先に進む。

「でも猫ちゃんのおかげでもある。励まされてみんなのことに気付くっていうのもなんか少し恥ずかしい話だけどな」

「私は何もしてませんよ」

 しかし猫ちゃんはそれを否定した。そういうところが年上というかなんか同い年の女の子と話している気分になる1つの理由だとは思う。

「でも、素直にその言葉は受け取っておくことにしますよ。だからといってお兄さんと私の間ではフラグは立ちませんので」

「誰もそんなこと言ってねぇよ・・・」

 こういうところもまた、年下とは思えなかった。

「今日、何かをするんですか?」

「うん、明日からやるって決めたら永遠にそれから逃げ続けることになりそうだし・・・」

「そういうネガティブな部分もまだあるんですね・・・」

 これはしょうがないとは思う。ネガティブな部分を捨てきれない。俺の選択で誰かを傷つけることになるかもしれないのだ。

「最後まで応援してますよ。あ、そういえばママがぜひうちにいらっしゃいって言ってました」

「おおう・・・そうだった」

 俺は引っ越してきてさらには猫ちゃんともこうして仲良くさせてもらっているけれど、猫ちゃんの家に近所のあいさつをしに行くことすらもしていない。

 だから一度伺おうかとは思っていたのに最近のいざこざで完全に忘れていた。

「ごめん、とりあえず、必ず行くから」

「はい、楽しみに待っています」





「おーい、ワン太」

 俺は帰るなり、すぐにワン太の部屋に前に行った。そこでノックをして相手が出るのを待つ。

「はいはーい」

 ワン太はその後すぐにドアを開けてくれた。そしてそのワン太の髪の毛はなぜか濡れていて、そしていいにおいもする。衣服はまだ5時にも関わらずパジャマ。完全にふろ上がりだった。

「なんで風呂・・・?」

「いえ、雪合戦してたら汗かいてしまいまして」

 小学生かよ。

 下校中に雪合戦とか最近まったくしてないぞ。というか雪合戦できるほど雪も積もってない気がするんだが・・・。

「そこがいいんです。こう・・・雪を寄せ集めて先に誰に当てるか・・・限りある雪でどれだけ敵を倒せるか、みたいなのがハラハラしますし」

 そう言いつつ、ワン太は部屋の中に入ることを勧めてくる。俺はそれに甘えることにした。

「誰とやったんだ?」

「シキブとバズーカとノウンです」

「こえーよ!」

 なにそのメンツ!絶対に参加したくない!全員宇宙人じゃないか!

 俺はワン太に差し出された椅子に座り、話を続けた。

「神埼さんもいたんですが、なぜか参加してくれなくて」

「いや、それは普通誰も参加したくないと思うぞ」

 特にノウンさん。腕力が違いすぎるので到底勝てそうにない。その代わり頭の方はアレだが。頭脳戦で言えばシキブさんか。俊敏さでいえばバズーカちゃんだし。

 というか明らかにワン太も不利じゃないか?オールマイティーということでもあるんだけど。

「いえ、なぜか優勝しました」

「あれ?」

「みんな私に雪玉くれたりしたんです」

「接待じゃねぇか!」

 接待試合。完全に姫という立場を生かした作戦。ワン太には権力があったな、そういえば。

「しかし、楽しそうではあるな」

「はい、次は一緒にしましょうね、ノゾム」

「もちろん、やるからには手加減なしだけどな」

「のぞむところです。ノゾムだけに」

 台無しだよ。今思えば最初からこいつは変なダジャレとか言ってたなぁ。

「スペースジョークか?」

「SPACEジョークです」

 最初会った時のことを思い出す。あそこの時点では俺も普通の一般人で、友達も誰もいないこの地で不安がっていた。それが、全てが変わる瞬間。

 空人と出会ったのも、ヒメちゃんと出会ったのも実はワン太がきっかけだったりするんだよな。

 だからこそ、そんな大切な人に俺は言わなければいけないことがある。

「ワン太、話があるんだ」

 会った時は嫌悪していた、宇宙人に対して言わなければならないことがある。

「雰囲気からして大事な話ですね」

「うん」

 俺は決意をかためた。ならばあとは口に出すだけだ。

「ワン太、俺は・・・・・・」

 その時、扉がコンコンと叩かれる。

 ワン太が「はーい」と答えるとドアが開けられた。そこにいたのは大家さんだった。

「あ・ら・ら?なーんか邪魔しちゃいけない空気っぽいわねー・・・ふふふ。じゃあ、私は去るわ!」

「愛ちゃん、待ってください」

 ワン太が目配せで「後ででいいですか?」と聞かれたので俺は静かにうなずいた。

「あら?いいのよ、若い2人で続けても。まぁ、私も明日には18歳あたりになってるけど」

「なんでですか!」

 どういう原理!?やっぱり若さを吸い取る妖怪としか思えない!

「いや、ただ夕飯作る手伝いをしてほしかっただけで、2人の話が終わってからでもいいのよ?後で内容を教えてね」

「いいえ、手伝いますよ。話は後にまわします。あと教えません」

 そう簡単に言えることではないのだ。

「じゃあ、手伝ってもらおうかなー。今日は巫ちゃんも来るからね」

 ちなみに巫ちゃんとは猫ちゃんのことである。俺が変な名前をつけてしまったせいで本名が忘れがちになるということが起こっていそう。

 猫柳巫、というのが猫ちゃんの本名だ。また、猫ちゃんのことを猫ちゃんと呼んでいるのは俺だけである。うーん、流行ると思ったんだけどな。

「そういえば猫ちゃんよく来ますけど、お母さんとか帰り遅いんですか?」

 普通他の家でご飯を食べるというときは母親の帰りが遅かったりして家に1人でいるときの場合が多いような気がする。

 俺も昔何回か近所の友達の家で厄介になったことがあるからな。

「お母さんの帰りが遅いわけじゃないのよ。巫ちゃん自身も料理は作れるし、呼ぶ必要はないかもしれないけどお父さんは帰りが遅いし。」

 す、すげー・・・。さすが高スペック。料理もできるのか。

「みんなでご飯食べた方がおいしいし、その方がいいと私は思うの」

 いや、でもさすがにお母さんのご飯を食べさせた方がいいと思うんだが。

 俺が怪訝な顔をしているのに気付いたのか、大家さんが「あー」と何かを思いついたような顔で俺を見た。なるほど、という感じだ。

「のぞむーは引っ越してきたし知らなかったのね」

「?何がです?」

「あんま本人の前では言わないであげてね」

 そう言って俺の方に顔を近づけ、ささやき声でこうつぶやいた。

「巫ちゃんのお母さんはもう亡くなっているのよ」

今回はきりがいいところで終わりたかったので短めになってしまいました。


この話がこの物語のターニングポイントとなっています。終盤ですが。


ではまた次回。

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