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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第5章 何もできない冬。終わりの季節。
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第49日 言い渡される宇宙人。

 冬。雪の季節だ。俺の住む地域でも雪が降り、雪が積もる。小学生が登校途中に雪合戦をして遊んでいる光景をよく見る季節になってしまった。

 しかしまだ冬の初め。雪は降っていないが気温はそれなりに低く、布団から出たくなくなる毎日を送っていた。しかしもちろん、学校にはいかねばなるまい。

 今日も同じく、いやいや布団から出て制服に着替える。冬になったら授業は家で通信してやる方式にならないかとくだらないことを半ば本気で考えながら俺は部屋を出た。

「うー・・・」

 寒い。とにかく寒い。廊下が冷える。食卓まで歩いて行くとすでに朝ごはんはできあがっていた。こんな朝にふさわしい温かい味噌汁もある。俺は席に着くなり「いただきます」と言いすぐにご飯を食べ始めた。味噌汁が体に染みる。

「あー・・・」

 温泉に入ったときのようにリフレッシュする。これが冬の楽しみでもあるんだよなぁ・・・。

 そうこうしていると時間になり、大家さんに一言言ってから家を出る。ちなみにワン太とは正直あまり一緒に登校したりはしない。時間が合えば行くが。

 アパートを出て、登校中の通学路を歩いていると背の高い男子生徒を見かけた。明日風の弟である明日風太一だ。

 無視するわけにもいかず、俺は普通に声をかける。

「よ、太一くん」

「あ、うす」

 いつものように軽く頭を下げてあいさつしてくれる。礼儀正しい弟だ。

「最近オカルト研どう?」

 俺は部外者ながらもそう聞いてしまう。最近オカルト研にはいけてなかったりするのだ。アパートで勉強をすることが多くなったし、なによりもう椿野もいないときがある。

 椿野の友達ということで紹介された俺は椿野がいない状況でお邪魔することを遠慮した。

「いつも通りっす」

「そか」

「うわぁ・・・お兄さんいつの間にそんなイケメンと知り合いになったんですか?」

「猫ちゃん」

 俺が歩いていると隣から声をかけてきたのは猫柳巫。通称猫ちゃんだ。相変わらず物怖じしないというか、平気で年上にも話しかけることのできる気さくでいい子だった。

 猫ちゃんは太一くんに対して軽く頭を下げると太一くんも「ども」と言って頭を下げた。

「お兄さんに同性の友達っていたんですね」

「いるだろ!」

 今まで空人とかヒメちゃんとか見てきただろうが!

「あれってお金払ってるんじゃないんですか?」

「そんな悲しいサービスがあってたまるか・・・」

 金払って友達になるとかかなしすぎる・・・なるべくなら見たくはない光景である。

「じゃあ、せっかくの男友達との邪魔をしてはいけませんし、今日のところはこれで」

「ん?別にかまわないぞ」

「うす。そうっす」

 太一くんはもう少し長い文章を話せないのだろうか・・・それよりもたぶん話さないだろうな。口数が多いほうではないのだろう。

「いえいえ、ではこれで」

 しゅたっ!と走って中学校の方向へ。猫ちゃんは駅から電車に乗って中学校に行っているので朝はいつもはやく、登校中に同じになることは少ない。しかし今日は会った。

 遅刻しないのだろうか。それとも学校側が何かあったとかかな。

「む、そういえば先輩」

「ん?」

 太一くんが何かを思い出したようなので俺は太一くんのほうを見る。何度見ても背が高い。思わず見上げてしまうのは太一くんが高いせいだろう。自分が小さいとは考えたくない。

「椿野先輩が何か悩んでたかもしれません。自分ではよくわからないのですが。いつも通りふるまっていたので他の部員も気付いていないようだったので自分の気のせいかもしれません」

「椿野が・・・悩み?」

 確かにあいつなら他人に知られないように振る舞うかもしれないが・・・悩み。あいつが最近部活に顔を出さないのと関係があるのだろうか・・・ないな。たぶんない。今は受験間近なわけだしな。

「わかった、それとなく聞いてみるよ」

「うす」

 そう言って俺達は学校へと向かっていった。





 教室につくとなぜか中はがらんとしていた。はやく来すぎたわけでもないのに、なぜだろうか。

 いつものように自分の席に着き、カバンの中の教科書を探す。そこで人の気配なんて言い方をするとおかしいけれど、誰か俺の方に来た感じがしたので顔を上げる。

「ヒメちゃん」

「大変だよ、希くん!椿野さんが・・・」

「椿野が?」

 ヒメちゃんが焦りながら俺に話しかけてきた。なんだか普通の感じじゃないので、俺も教科書探しを途中で諦め、椿野の教室へと向かう。

 そこには大きな人だかりができていた・・・え・・・何事?

 人だかりの近くには空人がいた。

「空人」

「きたか、希、小花くん」

 空人の顔は微妙そうな顔をしている。それだけで何かよくない感じがした。嫌な予感。

「見ろ、生徒会長直々だぜ」

 空人が指さした先にはこの学校の生徒会長がいた。たぶん3年生だろう。もうすでに生徒会長は2年生に引き継がれたはずなのだけど、みんなはまだあの3年生が生徒会長だということから抜け出せていないらしい。

 ちなみに転校してきた俺は生徒会長の名前も知らなければ何も知らない。

 その生徒会長は椿野に向かって何かを話している。

「つーか生徒会長って女子だったのか」

 元生徒会長だとは思うけれど。

「生徒会長直々ってなかなかないことらしいからこんなに人が集まっているんだとさ、俺も興味はないな。ないが、椿野さんが心配ではある」

「うん、だから希くんが来るのを待ってたんだ」

「・・・・・・」

 椿野関連ってことはたぶん部活のことだと推測する。あいつは真面目だから変なところで問題をおこすとは思えない。

 俺はなんとか近くへいけないかと奥へ奥へとはいっていく。

 するとこの人だかりは遠目から見ているだけの集団らしく、元生徒会長、椿野の近くには誰もいないということが分かった。だから案外簡単にでれるものの、目立ってしまった。

 ここまで来ると生徒会長だけじゃなくてまわりに役員らしき人も2人いた。

 その後を続くように空人とヒメちゃんもこちらへ来てくれた。本当に持つべきものは友達だ。

「・・・・・だあれ?」

「・・・・・・・」

 予想以上に甘い声で言われて俺は驚く。ふわふわの長い髪の毛に可愛らしい笑顔。生徒会長というよりは完全に後輩、いや、子供のような妖精のような人である。

 もっとキリッ!みたいな性格の人かと思ったらこんな人だったのか。そもそも顔すらも俺はあまり見たことなかったからな・・・。

「あ、えと、俺は・・・」

 完全にしどろもどろ。

 こう・・・ガツン!とこられたら俺もガツン!と何の話をしているんです?と聞けたもののだあれって・・・もうすでに負けている気がするよ、気持ちで。

 しかし元生徒会長は笑顔で俺を見た後に俺の後ろへと視線を動かした。

「あら、あなたは七実空人くんじゃない」

 空人?

「別になんでもない。生徒会長とは前に少しいざこざがあっただけだ」

 あー・・・そういえばこいつは俺と会う前、学校1の不良という大昔の漫画みたいなあだ名をつけられていたからか。生徒会長として何かあったとしてもおかしくはない。

「すっかりいい子になってよかった。えーと・・・姫岡くんのおかげかしら?それとも・・・」

 そうして生徒会長は笑顔のまま俺を見る。

「あなたかしら?」

「・・・・・・」

 なんとなく。なんとなくではあるけれど俺はその生徒会長に向けてにらみかえしてしまった。彼女の笑顔は人を安心させるものではなく、威嚇するもののようだったから。

「あと、七実くん。わたしはもう生徒会長ではないんだよ。わたしはすでに生徒会の人間でもない。ただの3年生、丘森美海子おかもりみみこなんだからね」

「ただの3年生がこんなに人集めるかよ・・・」

 空人は俺を見た。その後ヒメちゃんも俺を見てくる。

「希くん」

「ああ・・・」

 ヒメちゃんの声で俺は本当の目的を思い出した。

「俺達は椿野の友達だ。なんとなくこんな雰囲気の中心に友達がいたから気になって寄ってみたんだが、何をしているのか教えてほしい」

 俺は強く、折れないようにそう言った。

「あらそうだったの。んー、教えてあげてもいいけどー、あなたの名前をまだ聞いていないんだけど」

「白木希」

「白木くんね、よろしく」

 そう言って笑う。

「じゃあ教えてあげる。いいでしょ、椿野さん」

「いえ、言わないで」

 しかし椿野はそう答えた。

「椿野・・・?」

「あなたには関係のないことだから。変な心配もしなくていい」

 その椿野は化学室でふざけているような椿野ではなく、とても真剣で、でも寂しそうな椿野であった。 関係のないことかもしれないが、何もないというわけではないな。

「あなたたちほんとに友達なの?」

 生徒会長、いや、元生徒会長である丘森さんはくるりと向きを変える。もう自分の教室へ戻るらしい。

「でも椿野さん、白木くんはあなたの知り合いではなくわたしの知り合いでもあるの」

「おい」

 自己紹介しただけの仲だけじゃねぇか。

「だからね、生徒会の愚痴として今のこの話題が出てしまってもしょうがないと思わない?」

「!?あんた・・・」

 あれ?なんか知らないところで話が進んでいる感じがする。何をそんなに驚いているのだろうか、椿野は。いや、俺もこいつと知り合いになったというところで驚いているわけだが。

「教えてあげるわ、白木くん。わたしがここに来たのはね、オカルト研の廃部決定を言い渡すためなの」


というわけで久々ですが、更新です。


今回から冬ということで新しい章へと入りました。


ではまた次回。

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