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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
間章 思ふ、秋之日
47/69

第46日 秋の行事を楽しむ宇宙人。①

「っていうことで明日の休みうちのアパートに来れるか?」

「どういうこと・・・?」

 金曜日。

 俺はまた化学室に来ていた。そこにいたのはもちろん椿野春風だ。いつものように魔女衣装を着て、勉強している。よし、これは参加資格ありだろう。

 俺は自分の考えが当たっていたことを喜び、さらに言いよる。

「だから、明日うちのアパートで大家さん主催の仮装ハロウィンパーティーがあんのよ」

「そこからもう理解できないんだけど・・・」

 「えー・・・ハロウィンパーティーって日本でそんな大々的にやるとこあんの・・・」とぼそぼそ呟いていた。俺もまさかこの話が本当に持ちあがるとは思わなかった。

 俺が昨日帰宅すると大家さんが笑顔で「ハロウィン・・・ぱぁああああああてぃいいいい!」と異常なテンションの高さで俺を迎えたため、何か嫌な予感はしていたのだが。

 まぁ、友達も誘いなさいと言われて、俺はいつものメンツを誘った後、あ、と不意に思い出したのだ。

 もちろん、最初から誘う気ではあったのだが、椿野はこのパーティーに向いていると俺は判断した。というか常識人が1人でも多くほしかったのである。

 椿野は今日も俺があげた魔女衣装を着ている。これほどまでにハロウィンパーティーに向いている人間もいないだろう。

「他のやつらとも面識とかあるだろ?」

「う、うん、まぁそうだけどさ」

「それにお前コスプレ好きだし」

「そこは違う」

 あれ?

「魔女っ娘の格好をしているのは白木くんをおちょくるためだもん。最近慣れてきてるのか反応が薄いけれど。だからコスプレが好きなわけじゃない」

 そう言って伊達眼鏡(今日はいつもの丸い眼鏡ではなく、ビン底眼鏡であった)をくいっとあげる。見た目だけみると完全に漫画にいるガリ勉。しかしそれを魔女衣装が邪魔している。ほんと脱げよ。

「でも、ほら、たぶんみんなコスプレするし、それなら大丈夫だろ」

 ちなみに俺は着る気なんてさらさらない。よくもまぁここまで綺麗に言えたもんだと自分で感心して自分で落ち込む。ほんとに誤魔化すことばかりうまくなっている気がする。

 それで何か言われたら「え?俺はみんなって言っただけで俺とは言っていないよ」とぶちかますに違いない。そのためには他のやつらにもコスプレさせなきゃいけないが、背に腹はかえられない。

「どうかな。もちろん時間はそんなにかからないからさ」

「うーん・・・いいよ。いったげる」

「ほんとか!?」

 思わず大きく喜びすぎた。相手が怪訝な顔をしている。何かあるのか?と勘ぐりだしている。俺はそれをやめさせるためにも話しだす。

「じゃあ時間は夜、えーと7時ぐらい。そんでアパートの場所は分かるか?なんなら迎えにいくけど」

「大丈夫。春だってもう高3だし。迷わないか・・・・・・・・・ら・・・」

 そこでなぜか変な間が。しまった!という顔をしている。というかこいつ顔に感情とか考えてることとか出すぎだと思うんだが。

「・・・・・・・やっぱり迎えにきてよ」

「なんで!?」

 言ってることが違いすぎる!

「ほら・・・あのさ、忘れた!忘れたの!」

「道を?行き方を?」

「うん、うん」

 異常なうなずきに何かあやしいとは思いつつも、ここでいや、自分で来いよ、なんかあやしいと言ってもごちゃごちゃするだけだろう。

「わかった。えーと、それで・・・」

 俺はこいつの家を知らない。だからどこか分かりやすい場所を決めて・・・。

「んーだったらー春の家を知らなければいけないなー」

「・・・・・」

 なんだこの棒読み。

「だからー今日白木くんはー春の家にくるしかないなー」

「いや、どっか適当な場所で待ち合わせれば・・・」

「くるしかないなー」

「・・・・・」

 なんだこの異常な押し。

「白木くん、ということで今日帰りに春んちによって行きなよ」

「どういうことでだよ・・・」

 まるでこっちの意見を聞こうとしない。

「よし、ならもう帰ろうか」

「はやすぎないか!?」

 今、時間はまだ4時。学校は3時半に終わり、30分ぐらいここで過ごしていたわけではあるのだが・・・いつもなら6時ぐらいまではここで勉強をしている。

 それなのに今日はまだ4時だ。

「駄々こねてないでいくよ」

「なんで俺の方が悪いみたいになってるんだ・・・」

 俺はとりあえず椿野従うことにする。ここで俺1人で残ってもしょうがない。そもそも俺は部員じゃないし。というかほかの部員とかは大丈夫なのだろうか。

「大丈夫。春がいなくても活動できるし、たぶん今日はこないから」

「そうなのか?」

「うん、週1で定例会はやってるからまるで来ないわけじゃないんだけどね」

 そう言って少しだけ笑った椿野は満足そうだった。たぶん、伝統の話であろう。学校に居場所がない人が集まる部活。そのイメージがあって今でも続いている。

 その疎外感をなくし、クラスに溶け込めるようにするのがこの部活。それがうまくいっているのだろう。椿野は喜んでいる。本当に嬉しそうに、自分のことのように。

 実際に自分のことなのかもしれないな。

「よし、行こうか」

「おう」






 そうして当日。

 夜7時からハロウィンパーティーをやるとのことで俺らは準備していた。

 もちろん、まだアパート住人である俺とワン太、シキブさん、大家さん。さらに近所に住んでいる猫ちゃん以外は来ていない。時間は6時。まだまだ時間がある。

 ちなみに昨日、椿野の家の前までは行ったが、やっぱり1人でいけるよーと言われ、迎えに行く必要がなくなったりした。なんだそりゃ。

 猫ちゃんと大家さんは料理を作っているわけだが、猫ちゃん本当に中学生かってぐらい色々なことができたりする。料理、裁縫、掃除、洗濯。掃除洗濯ぐらいはできて当然かもしれないが、俺が中2のころはまるで家事ができなかった。掃除洗濯すらも。

 楽しそうに大家さんの手伝いをする姿はほほえましい。すでに大家さんが一反木綿らしき妖怪コスプレをしているため、邪魔くさそうではあるが。あの姿で料理する意味が分からない。

 というかハロウィンってなにに仮装するんだったっけ?

 日本にはあまり浸透していない行事ではあるのだけど、外国では普通にお菓子をもらいに仮装した子供たちが歩いていたりするらしい。

 お化けとかに仮装するんだっけか。なんだとしても大家さんのコスプレは日本っぽい。というか和の妖怪である。詳しくは知らないけれど一反木綿ってまさかアメリカとかが起源の妖怪ではないだろう。

 日本版ハロウィンってことなら納得。他の人の衣装もそんな感じになってるのかもしれない。ハロウィンパーティーってかゲゲゲの会合みたいになりそうだけど。

「・・・・・」

 先ほど準備をしていると言ったばかりなのであるが、実は俺とワン太はひたすらに勉強中だったりする。何かあったら手伝って、という補欠要員なのだ。よく言えば。悪く言えばただの役立たずである。

 そもそも俺もワン太も料理できないし、料理以外のこと、たとえばコスプレ衣装作成もすでに終わっていたりする。やることがないのだ。

 だったらせめて自分にいい影響を与えるものを、と思い勉強しているわけなのだが、なんだか落ち着かない。そもそも友達が来るときってなんかそわそわするんだよな。いつ来るのかなーとか、そんなこと思っちゃったりして。

 そんなわけで俺とワン太はリビングで勉強。大家さんと猫ちゃんは台所。シキブさんはひたすら掃除をしている状況が出来上がっていた。

 みんなが過ごすリビングということもあり、かなり広めのスペースだからここでパーティーをすることは容易である。でも、少しだけ気になることが・・・。

「他の住人の方はどうしたんだろうか・・・」

 思わずつぶやいてしまう。

 このアパートには俺ら以外にも他の住人がいる。全員学生ではあるらしいのだが、大学生やらが多いんだとか。毎回この手のパーティーのときは迷惑をかけているので申し訳ないのだが。

「もともとあまりここにいる人たちではないの」

「大家さん」

 料理を運びにきた大家さんが言った。というか料理運びぐらい俺らにさせてください。

「今日もだからいないと思うわ」

「そうなんですか」

 なんというか深く聞いていいことなのだろうか。いや、ただ朝まで遊んでいるという可能性もあるのだが・・・。

「気にしないでのぞむーはお勉強すればいいのー。それでお姉さん大満足」

「お姉さん・・・?」

 不可解な単語。お姉さんってシキブさんのことか?そういう意味でシキブさんを見ようとしたらなぜか大家さんに回り込まれた。

「ふっ・・・なにシキブちゃんを見ているの・・・お姉さんはここよーっ!」

「ちょ、一反木綿邪魔くさっ!横に揺れて角とかで攻撃しないでください!」

 予想以上にめんどくさいぞ、このコスプレ。

「私に一反木綿ってどうかなぁって思ったけど案外いける!美しさがどんどん上がっていくような気がする!今なら魔法の鏡にも映る自信があるっ!」

「断然白雪姫だと思いますけどね」

 魔法の鏡を見た魔女もうつっていたのが一反木綿ならばあれ以上の怒りを見せていただろう。この木綿よりも劣る私って・・・みたいに落ち込むかもしれない。

「はっ!愛ちゃん可愛いです」

「あら、ようやく気付いてくれたわね、ハルンちゃん。先ほどからノーリアクションだったから少しだけ心配だったわー」

「すいません、少し集中しすぎて」

「ふふふ、じゃあもっと集中力を上げてあげるー」

 そう言ってその場でターンする。

 風がふわりとくるが、今は秋。しかも10月31日。あまり嬉しいプレゼントではない。しかもワン太に風がいく代わりに俺には木綿ビンタが。いたいいたい。

「少し落ち着いたらどうですか?」

「のぞむー・・・私はね、落ちついたら死ぬのよ」

「ひどい呪いですね」

 怒った魔女の仕業だろうか。なんにせよキスしなければ目覚めない呪いよりはマシだ。いや、微妙か。でも誰がキスするんだって話だし。だからといって落ち着きがないのも・・・。

「呪い、そう、これは呪いね。だからキスをしなさい」

「どっちみちかよ!」

 だったら眠る方がいいわ!

「愛ちゃん、タンマです」

 その間にワン太が割り込む。

「ノゾムのキスはあげれません。私がもらいます」

「は・・・?」

 と間抜けな声をあげたのは俺だった。いや、お前返事いらないとかなんとかって・・・。

 すると大家さんの目が唐突に輝きだす。

「あらあらまぁまぁ!そういうことだったの!あーなるほど、ハルンちゃん可愛いわー。これで私ものぞむーに正々堂々と色仕掛けできるわけね」

「なんで!?」

 どこでこういうことになったの!?

「何言ってるの。ここからは私とハルンちゃんの一騎打ちってことでしょう?」

 どうしたらそんな解釈になるんだ。

 いや、この感じ。完全にワン太の反応を楽しんでやがる。するとワン太が俺手をとり無理矢理自分の方へと引き寄せた。ちょっとまて、自制心とかきかなくなる、それ。

「うおっ!」

「大家さんにもあげませんよ。私の好きな人」

 と、そこまで言った瞬間、シキブさんと猫ちゃんが俺らの方を一斉に向く。

「なんですかなんですか?私恋話とかすごい好きですよー」

「今、姫様の口から好きな人、というような声が聞こえたような気がするんですが」

 対称的な2人。

 興味津々な猫ちゃんになぜか怒りのオーラを振りまくシキブさん。なんかなつかしいなぁ・・・最初のころのシキブさんってこんな感じだったわ。今のほんわかおっとり大人な女性オーラに騙されそうになるが、この人も少しだけ変な人ではある。

「姫様・・・落ちついてください。好きな人ってどういうことですか」

「あああああああああ」

 ワン太の肩を思いっきり揺さぶるシキブさん。たぶんそれではしゃべれないと思うんですけれど。というかそもそもあんたが落ちつけ。

「ああ・・・・・姫様、本当なのですか・・・好きな人がいるんですか?どうなんですか?この私にお教えください。いますぐに始末いたしますので」

「おぉい!」

 なんか流れがまずい!これ命落とすかもしれないマジな修羅場だよ!

 俺が必死になって止めようとすると玄関のチャイムが鳴る。

「はーい」

 と言いながら大家さんが玄関へ。ドアを開けるとそこには・・・。

「おじゃましまー・・・ってうわぁ!一反木綿!?」

 空人の声。

 その後続々とするみんなのおじゃまします。

 時間を見ると6時50分。そろそろみんながくる時間となっていた。

 玄関にはなんとすでに全員が揃っていた。空人、ヒメちゃん、神崎さん、バズーカちゃん、ノウンさん、それに椿野。

 そして始まる秋の終わりの恒例行事。

 ハロウィンパーティーが開催される。

 


サブタイトルに①の文字。初めて分けてみました。①と言っても次でハロウィンは終わる予定なのですが。


最近毎日更新がなかなかできなくなっていたりします。1日おきとかになってきている・・・せめて3月からは毎日やりたいところです。


話数的にはたぶん少ないほうではないと思うんですけれど、思ったよりはやめに完結とかになりそうです。話数ではなく時間的に。


今まで書いてきた作品が少し放置していたりと3年とかかかってたりしてたんで、なるべくそうならないように努力しようかな、と。


難しそうですけれど・・・。


ではまた次回。




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