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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
間章 思ふ、秋之日
46/69

第45日 悩みに悩む宇宙人。

「よ」

「んー・・・っておお、白木くん」

 土曜日。猫ちゃんを家まで送ってから俺は学校にきていた。もちろん来た場所は化学室、オカルト研究会。ちなみに猫ちゃんに家まであがるようにと言われたのだが、断った。やっぱり急に行くと申し訳ないからな。

「何しに来たの?今日土曜日だけど」

「そういうお前にも言いたいよ。今日土曜日だろ。もう3年は部活引退する時期だし何をやってるんだ」

「勉強」

「さすが普通」

 俺はそう言いながら席につく。椿野の目の前の席だ。

「普通言うな。この衣装見れば普通じゃないことぐらい分かるでしょ」

「格好だけな」

 格好は秋にも関わらず露出の多い魔女衣装であった。ちなみにもう制服は冬服移行期間へとはいっている。秋だからなぁ・・・少しずつ肌寒くなってくる。

 冬までその格好でいるつもりなのだろうか。

「で、君はどうしたの?春に会いに来てくれたの?」

「まぁ、そんなもん」

「バカ野郎」

 なぜか消しゴムを投げられた。

「安易にそんなこと言わないでよ」

「言ったのはお前だが」

 何が言いたいのかもう分からない。俺はカバンから勉強道具を出し、机に広げる。

「そういえばあれから言えてなかったけどプリントありがとう。わざわざ届けてくれて」

「ほんとだよーなんで春に頼むかなぁ、違うクラスなのに。でも、どういたしまして」

 なんというかマジで普通という感じだ。こういう会話をしたのも久々な気がする。普段は宇宙人やら意味が分からないことだらけなのでこういう会話をすると安心する。

 やはり俺は生粋の地球人だ。

 そこでふと、またワン太の告白が俺の頭をよぎる。気持ちとしては相談したいところではあるが、あまりこういう話を積極的にしたい人間じゃない、俺は。遠回しに相談してみよう。

「椿野、もしお前が告白されたらどうする?」

「はい?」

 がらがらがっしゃーん!という音とともに文房具を落としまくる椿野。何で動揺するんだ。

「こ、告白?」

「告白」

「秘密を告げることじゃなくて愛の告白?」

「それ」

「・・・・・」

 かと思ったら黙りだした。何かを考えているみたいだが・・・。

「他の女のにおいがする」

 急に浮気を見抜いた彼女みたいなセリフを吐きだした。

「白木くん、君、告白されたでしょ」

「・・・・・・」

 こいつの超能力みたいな洞察力を侮っていた。遠回しに話すことなどこいつにできることではなかったのだろう。しかし諦めない。いつものようにはぐらかす。

「いいや、されてない。まず俺が聞いたのはお前が告白されたらってことで俺は関係ない」

「んー・・・勘ぐりすぎかな・・・」

「そうそう、少しは考えることを休めよ」

 じゃあなぜもし告白されたらの話をしているのかというわけだが細かいことは気にしない。矛盾していても相手をだませればよいのだ。もうバレてるかもしれないが。

「春は相手によるよ。春に限らずみんなもそうだと思うけど」

「でも、なんか顔がよかったから付き合っちゃおうみたいなやつとかいるじゃん」

「悪いとは思わないけど、春はそれで付き合える気がしないなぁ・・・」

「そうか、そうだよな。じゃあさ」

 ここからはもし、ではなく、本当の言葉で。だから嘘ではない。誤魔化しているだけで嘘は吐かない。嘘を吐いたらバレてしまうから。

「じゃあ、もし告白してくれた相手のことが好きで、でも絶対的な壁がある場合とかはどうする?」

「・・・・・絶対的な壁?」

 俺はワン太のことを好きなのかどうかは分からない。自分でも分からないけれど、もし好きだと仮定したとき俺たちの間には絶対的な壁がある。

 地球人と宇宙人。

 大きな違い。その違いがあるからこそワン太はきっと俺の返事を拒絶したんだ。乗り越えられない大きな壁。星が違うということ。それらはとてもでかい。そしてなにより相手はお姫様なのだ。

 そもそもなんでそんなお姫様が俺のことを好きになったのかも分からない。きっとイケメンな許婚みたいなのもいるはずなのに。

「その絶対的な壁って?」

「あー・・・そうだなぁ。宇宙人と地球人とか、犬と人間とか」

「後者はどうなんだろうか・・・」

 後者は気にするな。なんとなくぱっと思いついた例えがそれしかなかったんだ。本命は前者。嘘を吐かずに真実を混ぜる。こんなことばかりうまくなっていく気がする。

「後者はともかく前者はいいんじゃないかな。前も言ったけど相談する相手を間違ってるよ。春は不思議大好きの不思議ちゃんなわけだし」

「不思議ちゃんってたぶんそういう意味じゃないぞ」

「だから宇宙人なんかも地球人同様に好きなんだ」

「地球人同様に・・・」

 同じ、ということか。

 それはきっと宇宙を見ていないから言えることだったりするんだろうか。もう分からない。でも俺は見てしまった。広大な宇宙を。俺との違いを。

「まだあった。例えば・・・お姫様と庶民とか」

「・・・・・・お姫様と庶民」

 これが一番しっくりくるかもしれない。この例えが一番近い。

「春はいいと思うよ。そういう物語も多いでしょ、身分違いの2人がかけおちしたりする話」

「でもそれって物語の中だけでだろ。実際にやるとなったら・・・」

「大変かもね。命だって落とすかもしれない」

 ですよね。相手の兵とかがでてきたらやばいっすよね。

「でも、それを乗り越えるぐらい好きと言えるならいいんじゃないかな。好きな人って本当に大事で、友達だったり赤の他人だったりするのに急にぐーんと大事だなぁって思うんだよね」

 シャーペンをいじりながら話す椿野。

「家族とか友達も大事だけどさ、好きな人ができると何よりも大事になっちゃうんだよ。どうしたって好きなんだよ。だからそれぐらいの困難は乗り越えようとするんじゃない?」

「・・・・・」

「でも、危ないのは事実だし・・・だから春はいいと思うけどおすすめはしない」

 そこで椿野は真面目な顔でこちらを見た。

「だから春は庶民と庶民をおすすめする」

「つば・・・きの・・・?」

 なんだその目は。

 庶民と庶民・・・なんの例えなんだ・・・。例えに決まっているよな。だとするならばなんの例えなのか。それをきっと俺に分かってほしいということなのだろう・・・。

「おすすめするよ」

「・・・・・・」

 2回も言ってきやがった。

 俺がどういうことだと考えていると不意に化学室の窓が、ドアではなく窓が開いた。

 そこから入ってきたのはバズーカちゃんだった。いや、どこから入ってきてるんだ。

「ノゾムくん、ちょっと話いいですか?」

「え?バズーカちゃん?なんでここに・・・」

 俺が混乱していると椿野が、

「いってらっしゃい、あなた」

「誰があなただ」

 俺は窓に近づくとバズーカちゃんが俺を掴んでそのままダイブ。窓の外へとダイブ。

「ってぇえええええええええええええええええええええ!!!」

「あ、白木くんが消えた」

 その椿野セリフをきいてから俺はあまりの恐怖に気を失った。





 ノウンは知識がありすぎていた。

 知っていることが多すぎて人と違っていた。長い間グリーン星の城の内部で管理され人との接触は最低限だったにも関わらずノウンは早い段階から人と違うことに気付いていた。知っていた。

 勉強をしているわけでもないのに頭がよく、鍛錬をしているわけでもないのに特殊能力が他の人よりも強かった。それこそ一生懸命鍛錬している軍人だってあっさりと倒してしまうだろう。

 そして全てを知るということは単純な知識だけではない。人の気持ち、機微までも知ることができるのだ。グリーン星はそれをテレパシスの強化版と結論づけていた。

「・・・・・・」

 だからこそノウンは何も関わらず、1人でいることを好んだ。

 人の気持ちを勝手に知ることは関係を悪化させると、いいことではないということもまた知っていたのである。だから好んでグリーン星に捕えられ、管理されていたのである。

 だからこそ、この地球に来る時、一番懸念していたのは地球の原住民との接触であった。人と接するのが怖くてしょうがなかった。人の気持ちを勝手に知ったものの末路を知りたくなかったのだ。

 ノウンの目的は姫であるハルンの思惑、目的を知り、星にそむくものであったらそれを止めるというものである。ハルンは確実に何か楽しむ以外の何かをこの地球でしようとしている。しかしそれは何か分からない。ハルンの気持ちが分からないのだ。

 それを知るというのが目的。

 逆にそれ以外のことはしてはいけない。

 でも人の気持ちを知ってしまうがゆえに関わりたくなるものもあるのである。だから余計なことと分かっていても言ってしまう。

 ノウンが気付かなければ誰も気付かないであろう大切な気持ち。

「余計なことしちゃったかな・・・」

 ノウンは1人小花の家の前で落ち込んでいた。

 あの気持ちを言ったとき、小花の心からの気持ちを引きだそうと思ったのだ。相手に嫌われることで本心を聞こうと、そうしたのだ。

 小花には今、住まわせてもらったりとお世話になっている。それの少しの恩返し。でもそれが恩返しになるのか仇となるのかは分からなかったけれど。

 でも小花はいつものように笑ってそして自分を偽った。僕は大丈夫だからと。そう言ったのだ。

 小花に無理をさせている自分に腹が立った。それと同時に小花のことを心配する気持ちが増えた。この人は自滅する。自分の気持ちを偽り続け、まわりを気遣い、自分を破滅させる。

 でもこれ以上自分に何ができるだろうか。この自分のせいでさらに傷つけたら意味がない。

「・・・・・・・・・」

 そうやって延々と家の前で悩んでいると、思いっきりドアが開けられる。

「あ、ノウンさん!」

「小花ちゃん・・・」

 そこから出てきたのは小花であった。なぜか息を切らしている。

「なかなか帰ってこないから心配しちゃったよ」

「小花ちゃん・・・・・」

 出会って少ししか経っていないノウンがここまで小花に入れ込むのはこういうところからでもある。人として好きになってしまうのだ。彼は愛される人間だと漠然と考えていた。

「小花ちゃん、ごめんなさい」

「ノウンさん!?」

 思わず抱きしめてしまう。そうして謝る。

 小花は驚いたが、少しだけ笑ってそしてありがとう、と呟いたのであった。






 夜。

 俺は自分の部屋で悩んでいた。バズーカちゃんに呼ばれて話した内容はワン太に関するものであった。

 バズーカちゃんとの会話を振り返る。

「姫様のことについて調べてみました」

 そうして見せてきたのは黒い宝石がはまっていたであろうリングだった。

「それって・・・不幸の指輪か?」

「はい。これが少しあやしかったので調べてみたのですが・・・何も分からなかったのです」

「・・・・・・・・」

 え?結論そんだけ?

「何も分からないことがおかしいんです、この場合。これは明らかに不幸の指輪でした。なのにこのリングは不幸の指輪のリングという調査結果すらでなかったのです」

「え・・・じゃあ、それってなに・・・?」

「この世界、この星、この宇宙に存在しない何か。ありえない規格外の何かです。なぜ姫様がこれを持っているのかは分かりませんが、姫様はやはり何かを隠しています」

正直間章とかってつけてますが、正式な章との違いが自分でも分かりません。


恋愛多めって感じでしょうか。日常に視点をおいているので多くなるのも当然なのでしょうが・・・なんかもう普通に宇宙関連も絡めてるので違い分かりません。


ではまた次回。

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