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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第4章 宇宙旅行~UFOに乗って~
43/69

第42日 考え戦う宇宙人。

「ノウンさん、無理することないですよ・・・」

 心配そうにノウンさんを見て言う姫岡くん。

 現在、あたしたちは権力の国であるパワーディーの国王の家に来ている。やることはもちろん国王退治だ。勝負方法は腕相撲。こちらが勝ったら国王は逮捕、むこうが勝ったら見逃せということなのだった。

 そもそも腕相撲なんて勝負受けなければいいのだが、相手は嬉しそうにそれに参加することにしたらしい。バトルインシップとかいう国の生まれとは聞いていたけど、そんなに勝負が好きなのか。

「小花ちゃん心配ありがとう。でも私は負けないよ」

 標準語でそう言うノウンさん。

 しかし相手は軽々と壁を殴って吹き飛ばした。こちらも吹き飛ばしてはいたが、蹴りだ。ノウンさんは思いっきり蹴って穴を開けたのに対して相手は軽く殴る程度で壁を吹き飛ばした。

 忘れていた。外見が同じだから忘れていたが、ここは地球じゃない。すなわち相手は宇宙人なのだ。

「まぁ、任せなさい」

 ノウンさんは腕をぐるぐると回す。

 簡単に勝つつもりが、これでは少しだけ苦戦しそうだ。ちなみに3対1の戦いなのでノウンさんが負けたらあたしたちも腕相撲に参加する。勝てる気がしない。

 ノウンさんと国王はあるテーブルへと移動する。そこに肘をつき、臨戦態勢。国王のまわりから漫画のようにオーラが出ているように見える。

 ノウンさんも負けじと肘をつき、いがみ合う。すると翼を大きく広げた。翼を出すことがノウンさんのリミッター解除になるらしい。普段から力持ちなわけではないのだ。

 手を組む。これで舞台は整った。合図をすればすぐに開始される。あたしはそのちょうど真ん中に立ち、手を挙げる。そして・・・。

「勝負・・・開始!」

 言ったと同時に手を下げる。

 腕相撲が始まった。さて、どうなる・・・と状況を見ようとしたとき。ドゴォオオオオオオン!という音と共に砂煙が舞った。状況が見えない。視界が妨げられる。

「ノウンさん!」

 あたしと姫岡くんが叫ぶ。

 砂煙が晴れてきたところでシルエットだけが浮かんできた。そこに見えたのは大きな翼をもつ、女の子。すなわちノウンさんだ。

 ノウンさんが立っていた。しかし相手の国王は。

「がっ・・・あ・・・・・」

 腕を押さえて床にうずくまっていた。その態勢から見ると勝敗は明らか。これはノウンさんが勝ったらしい。すごい嬉しそうなノウンさん。でも・・・なんで?力はどちらかといえば相手の方が上だったはずなのに、一瞬で勝負がついた・・・どういうことだろう。

「簡単簡単。私、蹴りで穴を開けたんじゃなくて足の指でデコピンして開けてたんだー。これこそが手品、マジックに通ずる相手をだますというやり方だねー」

 せめてあたしたちには知らせていてほしかった。

「な・・・が・・・」

「ごめんね。でも折れてるわけじゃないよ。ちょっと痛むだけだから・・・。すぐに痛みは引くし。それにこの国の人たちの痛みと比べたらなんのことはないよ」

「・・・・・・・どうすればいい?」

「これからは自由に。あなたも国王の座を降りて過ごすのならば見逃してあげる」

「わかった・・・」

 最初から逮捕する気がなかったらしい。あっさりと見逃してしまった。

「ノウンさん、それじゃあ同じ過ちを・・・」

「大丈夫。もう悪さしないよ。そういうような痛みを与えたしね」

「・・・・・」

 なんかすごく恐いんだけど。これ逮捕された方がマシなんじゃないだろうか。

「じゃあ、いこっか。割と近めの国みたいだし、2人を抱えて飛べるよ」







 1回戦を勝ち上がった。

 俺らはその勢いを殺さずに2回戦も勝ち上がった。ワン太の緊張は消えていて、3人の盛り上がり方は半端なかった。あれ、俺ら強いんじゃね?的な勘違いだってしていた。

 1回戦と同じように2回戦も頭を使うようなもので、イカサマを考えなんとな乗り越えたのだが。

 あと3回。3回勝てば優勝だ。

「・・・・・・・・」

 さっきまでは「俺らって優勝間違いなくね?」「ふぅうううううう!」「こんなことならここらへんでお土産とか買えばよかったですね!」なんて控室騒いでいたのに。

『次のバトルはぁああああああ!マジなバトルだぁあああああ!殴り合いで相手をダウンさせたほうの勝ち!武器の使用はあり!相手が白旗を上げた時点でも終了だ!でも殺すのはなしだ!それはバトルインシップのみんななら分かってるだろ!』

 「うおぉおおおおおおおおお!」という声。なんか殺すのはご法度らしい。当然だけど。

 というか・・・。

「今回、死ぬことはないにせよ、気絶レベルならしそうじゃないか・・・?」

「というか打ちどころ悪かったら死にますよね・・・・・」

「私も喧嘩は苦手だ・・・」

 気分が悪くなってきた。どうすりゃいいんだよ。

 相手はチームココアという可愛らしい名前。しかし実情は・・・軍人みたいなやつが3人。確かに人数は同じではあるが・・・勝てるわけがない。喧嘩ではイカサマは通用しないし。

 というか相手が3人というのは人数が多すぎると逆に邪魔だからそうしているような気がするよ。ちなみに俺らは知り合いが少ないから。理由でもう負けている。

「どうすんだ・・・相手なんかプロっぽいぞ・・・」

「俺に言われても・・・」

「なんとか釣り針で勝てませんかね・・・」

 すると司会がマイクを握る。

『今回は乱闘だ!3人がいっぺんに戦うぞ!』

 その言葉に俺らはさらに脱力。というか恐怖で立てなくなりそう。

 相手の目がやばい。何を見てきたのか知らないがやばい。俺らが生きてきた幸せな生活を見てきた俺らの目とは全然違う。

 というか迷彩柄の服に帽子というのがはまりすぎて逆にコスプレにしか見えないと言ったらその時点で俺らの人生はEND。そんなつまらないことで死にたくない。

『では・・・バトル・・・スタート!』

「ひぃいいいいい!」

 始まってしまった。開始の合図とともに叫び声をあげてその場から逃げる俺ら3人。しかしみんな同じ方向に逃げたため、相手3人もそれを追ってくる。どんな鬼ごっこだよ!

「逃げるとは戦士として許せん」

「死んでもいいから戦う。勝つ」

「それが我らの生き様だ」

 言う言葉1つ1つが重い。

「相手が女子供だろうと容赦はしない。その覚悟のうえでこの大会に出ているのだろう?」

 いや、違います。できるなら出たくなかったです。

 すると軍人の1人が俺に向かって蹴りを繰り出した。なんで俺!?と思う同時にワン太とミサキさんではなかったことに安堵する。矛盾した気持ちだ。

 俺は咄嗟に見えない釣り糸を出し、相手の足に引っ掛ける。そしてそのまま腕でひっぱり、蹴りの向きを変えた。そのまま軍人の蹴りは空を蹴ることになった。

「な・・・!」

「・・・・・・・」

 俺はそのまま崩れた態勢の軍人に見えない釣り糸を軸足、蹴った方と逆の足に巻きつかせ、またも思いっきり引っ張った。すると軍人の両足が中に浮き・・・。

「がっ・・・!」

 そのまま尻もちをついた。

『うぉおおおおおお!なんだか分からないけれどこけたぁああ!なんだ、道具を使ったのか!?子供が軍人を転ばせたぞぉおおおおおお!』

 司会者さんやめて!それ以上煽らないで!

 しかしその祈りもむなしく、立ち上がった軍人は怒りの形相。よくも恥をかかせたな・・・みたいな顔で俺を見る。やはりさっきの攻撃は決定打にならない。釣り糸じゃ防ぐことはできても攻撃することができない。ワン太も俺を見てそのことに気付いたらしい。

「どういうことかは分からないが、軍人に恥をかかせた罪は・・・重いぞ」

 次にまた蹴りを繰り出してくる。

 俺はまた釣り糸を巻きつかせるが、巻きつかせた瞬間今度は相手が体をひねった。それにつられて俺がつり上げられる。体が引っ張られ、体が中に浮く。

 そして拳だ。中に浮いた俺に思いっきり拳をたたき込んだ。なんとか手で防御しようとしたが防ぎきれずにぶちあたる。

「が・・・!」

 肺の空気が抜ける。チンピラとの戦いを思い出したぜ、ちくしょう。

「やはり・・・貴様、糸のようなものを使っているな」

 ばれてた・・・同じ手は使えないか・・・。

 さらに何を思ったのか、残りの2人までこっちに来だした。

「く・・・ぐ・・・」

 これはある意味好都合だ。ここで3人を引きつければあの2人は無事だ。俺がやられたら白旗を上げろというような目で見るがそこには誰もいなかった。

「え・・・?」

 俺は驚く。ワン太とミサキさんは・・・?

「待ちな。ここにも相手がいるんだ、1対1でやろうぜ」

「その通りですね」

 ワン太とミサキさんが1対1を申し込んでいた。

「駄目だ!ミサキさん!ワン太!」

「いいからお前はそいつを倒せ。これは私たちで決めたことなんだから、口出すな」

「ノゾム、弱いのにかっこつけすぎですよ」

 2人はそれぞれバラバラにばらける。戦うこの競技場の広さはそれなりにあるので、1対1で戦ってもスペース的には問題ない。軍人たちもそれぞれについていく。勝負を飲んだみたいだ。

「ワン太・・・ミサキさん・・・」

 このままでは危ない。俺がこいつをさっさと倒して加勢しなければ・・・。俺は俺の相手である軍人を見る。こいつを倒さなければいけない・・・。

「目が変わったな・・・」

「・・・・・・・」

 でもここは漫画の世界ではない。変な能力に目覚めたりはもちろんしない。あるのは自分の身とつまらない釣り針だけ。

 とりあえず釣り糸を足に巻きつける。見えない釣り糸は見えないだけじゃなく、感触もないのだ。巻きつかれたという感触がない。さっきはあからさまに巻きつかせていたが、今回は気付かれないように、軍人の方を見ないで巻きつける。

 すると軍人は思いっきり足を上にあげた。同時に俺も引っ張られて無理矢理起き上がらせられる。

「!」

 ばれた・・・なんで・・・?

「やることが単純。分かりやすい。見えなくても感じなくても適当に動かしただけだ」

 また拳を使い、俺を殴る。蹴りを使わないのは情けからか。

「ぐ・・・!」

 体が吹っ飛ぶ。地面にたたきつけられ、空気が口から抜ける。背中が痛い。殴られたところよりも背中が痛い。俺は立ち上がることができなかった。

「はぁっ・・・はっ・・・」

 息が荒くなる。しかしうまく空気を吸い込むことができない。

 そんな俺が見たものは・・・倒れているワン太とミサキさんだった。外傷はほとんどない。しかし俺は冷静ではいられなかった。

「ワン太・・・ミサキさん・・・・・」

 俺がモタモタしていたから・・・2人が・・・。絶望に似た気持ちがあふれてくる。

「うぁあああああああああああああああああああああ!!!」

 叫びながら走る。もちろん向かうのはワン太とミサキさんの前。自分が戦っていた軍人を無視してもう2人の軍人のところへと行く。

「これ以上指一本触れさせねぇ!俺が2人を守る!」

「ボロボロで何を言っているんだ」

 だとしても、ここは俺が守らなければいけなかったのだ。戦い慣れしていないのは俺も同じ。でもこの2人は女の子なんだ。ワン太も戦える人間ではないし、お姫様。そういうのとは無縁の世界に生きてきた。それに恩もある。助けてもらったこともある。ここで俺が体を張らない理由はない。

 ミサキさんだってそうだ。巻き込んだのはこっち。大事な情報を教えてもらったのでそこまででよかったのにありがたいことにチームに参加もしてくれた。そんな人が俺のせいで傷ついていいはずがない。

「ノゾム・・・」

「ワン太、安心しろ・・・」

 しかしその気持ちもむなしく、俺は軍人1人の拳で薙ぎ払われた。

「が・・・」

 そしてその場に倒れる。足に力が入らない。

『おぉっと!これは勝負あったかぁあああああ!?』

 お願いだ・・・今の俺に守る力はない。だからはやくこの勝負を終わらせてくれ・・・。

 ・・・・・・だがいつまでたっても終了のコールは流れない。それどころか観客がざわついている。

『ここで乱入者かぁ!?一体どっちのチームの味方なんだ!』

 乱入者・・・?

「なんだ、お前は」

 軍人の驚く声。

「ここにいる誰かの妹か?だとしたら危険だ。これ以上は近づくな。こいつらはこうなることが分かった上で参加している。今更お前が止めに来ても無駄だ」

「・・・・・・」

「確かに乱入OKではあるが、お前では無力だ。傷つく前に立ち去れ」

「無力・・・?」

 その乱入者が初めて話す。

「誰が無力なんですか?」

「お前だよ。なんなんだ?家族か?妹か?お前が去ればこの勝負は終わる。だからもうこれ以上家族が傷つく心配はしなくていい」

「家族でも・・・妹でもありません・・・」

 そしてその迷彩服に包まれた小柄な女の子が、こう言った。

「軍人です」

 それはハノ・バズーカ・キクティア。バズーカちゃんだった。

とうとう彼女が登場。忘れてなんかいませんでした、えぇ。


もうあと2話ぐらいで4章は終わるんじゃないかと。予定ですけれど。


ではまた次回。

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