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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第4章 宇宙旅行~UFOに乗って~
42/69

第41日 勝負を挑む宇宙人。

「国王!国王!」

 ひときわ大きな建物で声が響く。パワーディーを仕切る国王の建物。兵隊があわただしく、国王のいる大きな謁見室に入ってくる。

「どうした?」

 背が高く、見た目は若め。髪の毛は全てオールバックにしていて体はスーツに包まれている。その人こそがこの国の国王。

「侵入者です。恐らく同盟国の部隊かと思われますが?」

「同盟国・・・うちの兵隊はかなりのレベルだぞ。この短期間に力をつけたというのか・・・?」

 国王はウロウロする。それが癖なのだ。

 考えるときの癖。それを見て兵隊は少しだけ不安に思う。この国が倒れるのではないか。倒れた時は国王に味方した自分はどうなるのか、と考えていた。

 しかし兵隊。死ぬときは戦死。ここで花々しく散ろう。そう思いなおす。

「国王!」

「・・・・・分かった。全兵力をもって防ぐのだ。なんなら全員殺しても構わない」

「はっ!」

 命令をうけ、すぐに戦場に戻ろうとした時、建物。謁見室の壁が急にひび割れ出す。

 不可解に思った兵隊がその壁に近づくと・・・次の瞬間にはその壁がふっとばされた。大きな穴があく。それを国王はただただ見る。何も思えない光景。戦力の差。

「な・・・なんだお前たちは・・・!」

「大丈夫、誰も殺してないよ」

 天使の翼が生えたような女の子が2人の学生らしき人を両腕で抱えて飛んでいる。武器らしきものがないため、壁を破壊したのは天使の女の子の足だろうと国王は推測する。

 でもそんな人間離れしたことができるのだろうか。同盟国にそこまでの力を持ったものなどいなかった。じゃあ、他の星からやとわれた?いや、ここまでの力を雇うにはそれこそ膨大な権力とお金がいるはず。この星の国では到底不可能。

 ならば・・・こいつらは?

「勝負しようか、国王様」

 天使は不敵に笑った。







『第一試合はぁ・・・・・ダイナミックダーツ!』

 というマイクを使い叫ぶ男の声を聞いて「うわぁあああああああああああああああああ!」という歓声が湧きおこる。

 俺はそれを聞いてさらに緊張が増した。まさか観戦できる大会だとは思わなかったのだ。

「ワン太・・・大丈夫か?」

「はい、はい、大丈夫です・・・はい」

 目が虚ろだ。この空気に慣れるまではワン太は試合に出さない方がいいな・・・。

 控室でなんとか歩けるぐらいには緊張をほぐせたが、ここから先は無理と判断。慣れることを祈るしかなかった。

 そんな中での第1試合。相手のチームは5人いる。屈強そうな戦士みたいな人もいるが華奢な女の子もいる。こちらも3人中2人が女の子なので人のことを言える立場ではないのだが。

『ルール説明をします!ルールは簡単!ダーツを的に投げるだけ!刺さったところに書かれてある数字がポイントとなり、最終的にポイントの合計が多いほうの勝ちです!』

 俺はまた的当てかー・・・と思っていた。

 ホテルの時もイカサマではあるが、的当てはした。そして今回もイカサマは許されている。ワン太もまぁ、緊張しているがいるし、これは高得点確実だな、なんて思っていると、

『しかし的はルーレットのように回転します!これでどこに当たるかは分からない!さぁ!面白くなってまいりました!そしてもう1つ。ダーツの矢は1人1つです!』

「な・・・!」

 俺とミサキさんは驚く。

 そんなの人数が多いチームが有利に決まっているじゃないか!

『チームの上限は無制限!最低人数の3人チームはどのようにこの逆境を乗り越えるのかが楽しみですね!きっと最高の方法を見せてくれるでしょう!』

 するとミサキさんが耳打ちしてくる。

「さっき別の第一試合はあまり盛り上がらなかったんだ。人数は同じだったけれど実力の差がありすぎてな。だからこその配慮、だと思う。観戦者に対する配慮だがな。バトルインシップの住人はあからさまな実力の差を嫌う。均衡した熱いバトルか、逆境を乗り越える強さを見たがるんだ」

 だからあえて乗り越えられそうな軽い逆境を用意したということか。

「平等ではないが、それはチームの上限なしの時点で気付くべきだった。このトーナメントは弱者に厳しい場合が多すぎる」

 この場合弱者とは人数の少ないチームを指すのだろう。

「とりあえずやるしかない。相手は5人チーム。2人分をこちらが頑張れば逆転できる」

「ってことは狙うは最高得点とかですね」

「ああ、でも回転はキツイ。私は大丈夫だが、お前らが・・・」

「え?」

 ミサキさん回転してても的の数字が見えるのだろうか。

「慣れてるからな、回転ダーツ。よく子供の頃からやっていた。人より少し目がよくてな。回転していてもギリギリ数字は見える。しかし・・・」

 俺らが見えない。

 昨日このトーナメントに出るにあたって全てのイカサマを話した。それは確かに的を正確に射抜く釣り糸ではあるのだが、見えなければ釣り糸を引っ掛けることさえできない。

 ワン太の情報改ざん系も使えない。人間に干渉することがあるのでこのような人間がたくさんいる場所では使えなかったりする。高度な情報改ざん能力を持っているやつなら別らしいが。

「私の力は出せません。私の得意分野などないのです。どの力も人並みには使えますが、それ以上はできない。本当ならどれか1つを集中的に強化するものなのですけれどね・・・」

 会話に参加するワン太。どうやら少し落ち着いたらしい。

「英才教育だか知りませんが、そのせいで万遍なく色々な授業をやり、どれかを劇的に伸ばせる力を分散させてしまったのです」

「じゃあ、ここはもう運でやるしかないのか・・・」

 本当のバトルのだいご味は一発勝負。イカサマをする方がおかしいと言われればそれまでなのだが、どうにも不安である。こちらは帰れるかどうかがかかっているのだ。身なりなどに構っている暇はない。

『では第一投者。前へ!』

 司会の声が響く。

 相手から出てきたのは屈強そうな男。明らかに肉弾戦向きでこのようなものには苦手そうなのだが。

 ちなみにルーレットの点数は最低が0で最高が10だ。ちなみに6からはとてもスペースが小さくなっていて当てるのは至難の技。

「ここは私が行く」

 ミサキさんが位置につく。

 俺はその少しの間に何かないかと、考えていた。

『では・・・ルーレット・・・スタート!』

 ルーレットが回転する。

 そしてまずは屈強そうな男が投げた。そのまままっすぐに的に直撃。刺さった場所は・・・5だ。

『まずは5点!チーム朝顔、5点です!』

 「うぉおおおおおおおお!」と声が上がる。5点でそんな盛り上がるのか・・・6を当てるのは相当難しいらしい。基準がもう分からない。

『ではもう1度・・・チームわんこはここで点数を稼ぎたいところ・・・ルーレットスタート!』

「チームわんこって明らかに私からきてますよね!」

 こうなるからワン太には内緒にしていたのだが、まさかバレるとは・・・。少しむくれてすねてしまった。しかしどうやら緊張はほぐれたようだ。

「・・・・・」

 ミサキさんが無言で投げる。

 刺さったのは8。

『おぉおおおっと!すごいぞぉおおお!8!8だぁあああ!』

 その司会の言葉に観客が答える。

「ミサキさんすごいですね!」

「私は当然だ。ところでお前ら、解決策とか打開策とか見つかったか?」

 すると隣のワン太が笑う。

「見つかりました」

「え?」

 その言葉に俺は驚き、ミサキさんは笑った。

「ノゾム、見ていてください」

 そう言うとワン太は位置につく。

『チーム朝顔、第2投者はなんと4点。1点リードということか!しかしその程度なら抜かせるぞ!頑張れチームわんこ!』

「わんこ・・・」

 ワン太は恥ずかしさに顔を赤くしながらもダーツを構える。

『では・・・ルーレット・・・』

 司会が回転させようとしたその時、ワン太は見えない釣り針を10点の位置に刺した。

 しかし射的じゃない。引っ張ったりしてもそれでは無意味。

『スタート!』

 そして回転する的。

 釣り糸はがっちりとついているが、見えない。

 次にワン太がしたことはもう1つの見えない釣り針を空いている手から出すことだった。そしてその釣り針部分でダーツの矢を引っ掛ける。

 さらにダーツの矢と同時になんともう1つの釣り糸も一緒に引っ掛けた。

 2本目の釣り針部分でダーツの矢と1本目の釣り糸を1つにくくったのだ。もちろん、そのままダーツの矢は1本目の釣り糸をロープウェイのように伝って的へと移動する。

 投げるのと同じ速度を出すために思いっきり2本目の釣り糸を動かした。すると糸を伝いダーツの矢はなんと10点にぶちあたる。

『おぉおおっと!でたぁあああああああああ!10だぁああああああああああああ!』

 歓声が今までにないぐらい大きくなる。

 相手のチームは対称的にどんより。あんぐり。何が起きたのか理解できていない顔だ。

「では、後はよろしくお願いします、ノゾム」

「・・・・・ありがとう、ワン太」

 ヒントというか答えを残してくれたワン太。

 俺は自信満々に位置についた。







「誰だ!どこの同盟国のものだ!」

 あたしたちは今、大きな建物、国王の住まいにきていた。

 守っていた兵隊はノウンさんの腕力と信じられないぐらい大きな声で次々と蹴散らし、あたしたちをかついで壁を破壊し、内部へと侵入した。

 そこでは思ったより若い国王がいた。しかし動揺しているのか、顔には焦りが見える。

「何しに来た!」

「あなたを逮捕するためです」

 ノウンさんは強い言葉でそう言う。

「しかしここで私たちが戦って突き出してもあなたは反省しないはず」

 ちなみにこのセリフを考えたのは全部姫岡くんである。ノウンさんは正直バカなため、そういうのを任せられなかったのだ。・・・・・知識はあるのにね。

「だからこそ、バトルインシップ出身のあなたに合うように正式なバトルで勝負しましょう」

「・・・・・なるほど、お前らが勝ったら俺は逮捕され、俺が勝ったら見逃すということか」

「それだけではなく、破壊した建物も戻します」

「・・・・・本当ならここで子供の言うことなど相手にしないのだがな・・・ここまで入れたということはそれなりの力を持っているのだろう」

 なんというか、さすがだ。

 さすが大人。すぐに体裁を持ち直し、さらには焦りも消えている。これが年齢の、経験の差。

 冷静な判断は有利なはずのあたしたちが不安になるぐらいである。

「で、勝負はなんだ?」

「腕相撲」

「・・・・・なるほど」

 国王は笑う。

「そこの女。翼の女だ。こいつが主戦力なんだろ。壁をぶちぬくほどの威力。なるほど。さすがに有利な勝負を挑んでくるな。しかし・・・」

 国王は壁へと近づき、そして軽くそこを殴ると、壁がノウンさんの時のように破壊された。

「え・・・・・」

 その光景にあたしと姫岡くんは息をのむ。

「守られているから弱いと思ったか?残念だが兵隊を配置させているのは俺自身で相手をすることがめんどうだからだ。一番強いのは俺。俺だ」

「・・・・・・」

 ノウンさんもさすがに驚いて声が出ないのか無言になる。

 これは計算外だった。ノウンさんよりも強い腕力の持ち主。それを考えていなかったのだ。

 しかしノウンさんは震える声でこう言った。

「あなた、その破壊した壁どうするの?私たちがなおすのは私たちが破壊した壁だけだからね。ちゃんと考えて壊してよ」

 場違いすぎる発言だった。

というわけで4章、終盤です。


なぜだか非常に地球が恋しくなりますね、今の話を書いていると。


ではまた次回。

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