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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第4章 宇宙旅行~UFOに乗って~
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第40日 道を選ぶ宇宙人。

 朝、起きる。

 あたしは昨日見た白木くんから来たメールの文章を見返していた。権力の国、パワーディー。それがこの国の名前らしい。

 それは置いておいてなにより嬉しいのが帰れるかもしれないということだ。ようやく希望が見えた。これで地球に帰れるかもしれない。でもバトルだかをして勝たないと難しくなるらしい。どういうことか全く分からないんだけど・・・。

 とりあえず、昨日のようにノウンさんの部屋に行くと、そこにはもうすでに姫岡くんがいた。

 しかし様子がおかしい。顔が真っ青なのだ。

「姫岡くん・・・?」

「神埼さん・・・」

 やはり何かに怯えている・・・というより見てはいけないものを見てしまった、という感じだろうか。信じられないというような感じがする。

「来ましたね、阿国」

 いつの間にかノウンさんに呼び捨てにされているあたし。いつ仲良くなったのだろうか。

 そういうあたしも敬語がとれている。

 でも少なくともノウンさんはハルンさんの敵なんじゃ・・・。しかもここにいる原因はノウンさんなわけだし。落ち込まれると困るので言わないけど。

「小花ちゃんから話を聞きました。小花ちゃんは少し落ち着くことが必要、休んでて。で、阿国。私の口から説明させてもらうと・・・ここの国は権力の国なんだそうです」

「その敬語が混ざった話し方・・・中途半端ね・・・」

「意外と難しいのよ、敬語って」

 権力の国。

 領主がいてそいつが支配している国ということは白木くんから聞いている。

「でもそれが何?権力の国なんてあってもおかしくないんじゃ・・・」

「いいえ、少しおかしいです。権力がこの国みたく領主1つに集中するということはあったりしますが、ここまでの暴君はなかなかいません」

「暴君・・・?」

「さきほど小花ちゃんはここに来る途中一般客とぶつかってしまったため、謝ったそうです」

「それの何がおかしいのよ」

「でも相手は何も返さなかった」

「確かにそれはひどい、というか悪いのはこっちとはいえ、何か言ってほしいという気持ちもあるにはあるけど・・・・それがどうしたの?」

「返さなかったんじゃなくて、『返せなかった』んですよ」

「返せない・・・?」

「私たち、昨日カフェで大騒ぎしていたでしょ?」

「主にノウンさんがね」

 そこは譲れない。

「それなのに誰も何も言ってこなかった。カフェで何も注文しないのに席を陣取っていることだって誰も何も言わなかった。でも違う。言えなかったのよ」

「だからそれってどういう・・・」

「ここの国の人たちは!・・・・・話すことを許可されていないらしいの。もちろん貴族のような高い地位にいる人は別らしいですけどね」





 朝。

 希のメールだと帰る方法が見つかったらしい。今いる国の位置と集まるべき国の位置がメールに添付された地図で分かった。なるほど・・・。意外と近いかもな。

 しかし国は国。となりの街に行くような気軽な感じでいけるようなものでもないのだろう。

「・・・・・・」

 昨日見つけた血文字のことはシキブさんに言っていない。それどころか誰にも言ってはいない。どうするべきか分からなかったのだ。俺の憶測ではあるし。

 でもグリーン星が何かやったのは確実。もしかしたらシキブさんも知らないのかもしれない。

「シキブさん、場所分かりましたよ」

「はい、ではいきましょうか」

 昨日は壊されていなかった宿屋に泊まり、朝になってあたりを探していると車のようなものを見つけた。車のようではあるのだが、小さいUFOみたいな形をしている。

 鍵がささったままで放っておかれていたのだ。壊れかけているが使えるらしい。

「持ち主はもういないみたいですね」

「はい、それ見つかったのも瓦礫の下ですしね」

 シキブさんがそう答える。

「この車は恐らく私の力で強化できるはずです。もし国に着かなくてもかなり近くまではいけるでしょう。ではいきましょう、ノゾムくんの元に」

「・・・・・」

 その希もあなたの中では姫、ハルンさんの友達だからってことなのだろうか。

 ・・・・・・。

「シキブさん」

「はい?」

 運転席に乗り込むシキブさんに声をかける。というかナチュラルに運転席に乗ろうとしているよな・・・相変わらず頼りになる。そもそも俺は免許を持っていないしな。頭は金髪だがそういうところは守る。ほんと、色元に戻そうかな、これ。

「俺・・・だけじゃなくて希や小花くんもですけど、俺らはあなたの友達でもあるんです。ハルンさんの友達でももちろんあるのですが、もうあなたの友達でもあるんです」

 これで俺の無関係、というのは貫かれなくなった。

 すまん、明日風。帰ったら謝ろう。俺は無関係ではなくなった。無関心ではいられなかった。俺は俺を貫いていくことに決めたんだ。

 シキブさんは少しだけ微笑を浮かべる。

「そうですね・・・」

「ですよ。やっぱりみんなあなたと友達に・・・」

「いいえ。私はグリーン星の教育係。あなたたちとは友達になれません。あなたたちに言えないことも平気でしてきたのです、皆様には内緒ですよ・・・。姫様も傷つくかもしれませんし」

「な、シキブ・・・さん・・・」

「見ました」

 その言葉を聞いて俺が真っ先に思い浮かんだものは・・・。

 血文字。

「ここを破壊したのは恐らくグリーン星です。あなたの憶測は合っています。そうです、グリーン星は戦争をしない。しかし一方的な虐殺をすることはあるのです」

「・・・・・・」

 この人の言葉を聞いて俺は救われた。

 俺の全てを肯定してくれた。それがお世辞でも嬉しかった。俺はその言葉を待っていたのだから。

 でも違った。

 同じだったのだ。俺とシキブさんは同じ。全部が同じ。

 俺も人に顔向けできないようなことをしてきた。それは虐殺と比べたら軽いのかもしれない。

 でも俺は俺のせいだが、シキブさんはシキブさんのせいじゃない。

 それは星のせいじゃないか。星の王の偉い人のせいで、教育係であるシキブさんには止めようがない。ハルンさんでも恐らく無理だったのだろう。ならもう誰も止められないじゃないか。

 他の星のことなんか知らない。俺が関わることじゃない。でも・・・。

 シキブさんの言葉は俺にだけではなくて、自分自身にも言っていたんだ。言い聞かせて正当化しようとしていた。なんだ・・・宇宙見てビビってたけど、宇宙人も人間と同じだ。

 自分が大事だし、自分は傷つきたくない。だから他人を使ってでも自分を正当化して他人を傷つける。

「・・・・・なんだ・・・」

 何も変わらない。俺と・・・俺らと宇宙人は同じ。

「シキブさん、いきましょう」

「え・・・と、七実さん?」

「俺のことは空人と呼んでください」

 俺は運転席の隣の席に座る。そしてドアを閉めた。

「俺が地球人としてあなたの友達第一号になります。そしてあなたを星から救ってみせる」





 バトルトーナメント。

 商品は宇宙船GPSの試作品。優勝すれば俺達はたぶん地球に帰れる。

「・・・・・」

 俺は緊張しているのを誤魔化すように真顔でただひたすら地面を見る。

 バトルトーナメントはチームを組んで戦うらしい。最低3人のチームで、バトルごとに必要最大人数が違う。2人用なら2人が1人用なら1人がでる。

 ちなみに4人用というのはなくて3人以上、というバトルはあるらしい。

 チームの人数の上限は無制限だというのが恐ろしいところである。しかもエントリーしていない人でもチーム自体がエントリーしていたらたとえバトル途中でも加わることができるらしい。

「すいません、ミサキさん。わざわざチームに入ってくれて・・・」

「いいんだって。あれぐらいの情報じゃお礼にならないからな。ところで、だ。緊張しているところすまないが・・・あのお嬢さんはどうしたんだ・・・?」

「ああ・・・」

 俺は控室の端の方にいるワン太を見る。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 無。そう表現した方がいい顔。

 ひたすら手のひらに人を書いて飲み込むということをしているが・・・緊張しすぎだろ、おい・・・。

 しかも速度がやばい。残像が見えるぐらい人を書いている。

「おい・・・ワン太・・・?」

「大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫・・・」

「・・・・・・」

 大丈夫じゃないな。

「ワン太はなんとかしときます」

「そうか・・・こっちは最低人数の3人しかいないからな。万全の状態で挑まなければ負けるぞ」

 恐いなぁ・・・。

 まさか死んで地球に帰れないとかないよね・・・。

「よし、私たちの番は一番最初だ。5連勝すれば優勝だぞ」

「はい」

 俺はワン太の緊張をどう取り除こうかを考えていた。







「で、やっぱりそうするのね」

 予想通りというかなんというか。姫岡くんのことだからなんとなくわかってはいた。

「でもあんまり国に関わるのはどうかなって考えてたんだけど・・・」

「大丈夫です」

 ノウンさんは笑顔で言う。

「先ほど調べましたが、あまりの暴君ぶりに同盟国で指名手配されているようです、領主。ただ、この国の中にいるせいで逮捕ができず困っているんだとか。ここの国の警察は全て領主の息がかかっていますし。反対運動やらが起こらないのはここの警察が有能だからそうですよ」

 それってあたしたちも危ないような・・・。

「任せてください。知識もそうですが、私は力も強いんです」

 なんか不安だけど放っておけないし、白木くんのところまでの寄り道と考えますか。

「んじゃ、いこっか。ここの領主を懲らしめに」

 鬼退治ならぬ領主退治に、暴君退治にあたしたちは出かけた。


というわけで昨日は投稿できず、もうしわけありませんでした。


今日こそは・・・!と思い、これを仕上げた次第です。


色々と話が進んだ気がします。第4章も終わりが近いですね。


簡単な感じでなら実はすでに最終話あたりまでできあがっていたりするのですが、簡単すぎてお話だけ、という感じですね。


文字にすると10文字とか。いや、それはさすがにないでしょうけども、そんぐらいです。


元々最終回から逆算して考えたお話ですので、当然っちゃ当然なのですが。


次回もよろしくお願いします。


ではまた次回。

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