第39日 ようやく見つける宇宙人。
「血文字・・・?」
そこにあったのは赤い文字。明らかにマジックやらペンという代物じゃない。少し黒くなってきてはいるがまだ最近のものだろう。素人なのでよく分からないが。
シキブさんは遠くで他のことを探っている。危ないとシキブさんに言われたが俺がここで何もしないわけにいくまい。今は俺とシキブさんしかいないんだから、俺だって何かやらなければ。
そこで見つけたのがこの血文字だった。
「メッセージか・・・?」
建物の瓦礫が崩れ落ちているせいで全部は読めない。ちゃんと読むならまわりの瓦礫をどかさなければいけないらしい。
シキブさんを見る。まだこちらに気付いていない。手伝ってもらうのもなんか悪いし、力仕事なら俺の出番だろう。腕力ぐらいしか誇れるものはないからな。
俺はさっそくまわりの瓦礫をどかせることにした。一個一個持つと重さはそうでもないらしく簡単に持ちあがる。
「よっと・・・」
次々と瓦礫がなくなっていく。やはり血文字っぽいな。テレビとかでしか見たことないが色がなんかおどろおどろしい。あまり見ていたいとは思えない感じだ。
そして少しの時間で全ての瓦礫をどくことができた。やれやれ・・・と思いつつ目を凝らす。なんて書いてあるんだ?ほんやくこん〇ゃく効果か知らないがその文字は日本語に見えた。
「えーと・・・『屈辱なり』・・・ってなんだこれ?」
屈辱ってことは負けた側のメッセージか?まだ続きがあるみたいだ。というか血文字で屈辱ってよく書けたな・・・死ぬ間際っていうよりあえてここにメッセージを残した感じかもしれない。
「『我が国滅ぶ。しかし我が魂は滅びず』・・・なんというかまんま戦争っぽいなぁ・・・」
しかし下の方にまだ続きがあった。
「『卑怯なる敵はグリーン星なり』・・・・・・グリーン星?」
グリーン星って確か・・・シキブさんとかハルンさんとかあのちびっこの星だったはずじゃ・・・。
いや、戦争の1つでもするかもしれない。俺にはその価値観が分からないから微妙だが戦争ぐらいはするのかもしれない。それが普通なのかもしれない。
でも、恐怖を取り除くために戦争は禁止してるんじゃ・・・。
「七実さん」
「おわぁ!」
俺は思わず瓦礫をけっ飛ばし血文字を隠してしまう。別になんともないのだが、なんだかやましい気持ちが出てしまった。俺、悪いことしていないのに。
「宿はありました。人はいませんが、機能は生きています。それともう1つ」
シキブさんは青い顔をして言った。
「この国には武器がある痕跡がありませんでした」
「え・・・?」
でもこんなにこのあたりは荒れているのに?
「私も教育係でしたから、ある程度の城の防具や武器類は見てきています。ですから信用してもらっても大丈夫なはずですが・・・この国には武器がないのです。運ばれたとかじゃなく、最初から武器がないのです」
「じゃあ・・・ここを破壊したやつは武器を持っていないことを知ってここを破壊したっていうのかよ」
そこで俺は希が言っていたある言葉を思い出した。
あのちびっこが希をぶっとばそうとしていた時のこと、恐怖を取り除くため、戦争をすることはしない。でも自分が危険にならない相手となら・・・すなわち一方的な虐殺ならこちらが恐怖することはない。そういう理由があるとちびっこが言っていたと聞いた。
あの時はお前も苦労してんだな・・・と虐殺という言葉が出てきていたのにどこか他人事ではあったのだが・・・まさか。
「・・・・・ここも・・・虐殺されて・・・」
〇
「遭難してる?宇宙船で来たのにか?」
俺とワン太は10つある部屋のうち1つに集まっていた。そこでミサキさんに対してこれまでの経緯をかいつまんで言うと驚かれてしまった。
変な能力はないが、ここの星には宇宙船はあるらしい。話が通じてよかった。宇宙船とは何か、から説明するのは少しだけ難しい。それこそ俺には不可能だ。
「ええ、緊急ワープ機能で宇宙船と私たちがバラバラになってしまいまして・・・」
「緊急ワープって・・・で、他の仲間とも合流が必要なんだよな」
「はい」
現在俺は蚊帳の外状態だったりする。宇宙船の話をされてもさっぱりなのだ。というか俺達は宇宙船のことUFOというが宇宙船が流通しているとこでは宇宙船と呼ぶんだな。ワン太もUFOとは言わなかったし。意外な発見。
「バトルインシップ。ここの国はこの星の中心だ。一番広くて中心にある。そしてその友達がいる『白い国』と『外国の国』か。外国の国ってなんだ・・・?」
「あー、それは俺から。地球にある外国を指しているんです。レンガ造りで人も多い場所らしいんすけど・・・どこだか分かりますかね?」
「・・・・・そうか。白い国は分かる。ミマという名前の国だ。しかし・・・」
そこでミサキさんは苦い顔をした。
「あそこは今戦争中だったような気がするな・・・いや、さっき見たニュースではもう終わったとか言っていたか・・・」
「戦争って・・・」
今度は俺達が苦い顔をする番である。
そんな危険な場所に空人とシキブさんは・・・。
「まだ連絡があるということは大丈夫だとは思う。それよりもだ。それよりもめんどくさいのは『外国の国』と呼ばれていたパワーディーという国だ」
「パワーディー・・・?」
戦争している場所よりも大変な場所・・・ってことか?
「誤解しないでほしい。戦争の方が大変だ。だが、もう戦争が終わった今、そこには危険がない。むしろ戦争前よりも安全かもしれない。その状態と比べたらまだパワーディーの方がひどいということだ」
ミサキさんはまた苦い顔で言った。
「あそこはこの国で唯一権力主義の国だ。すなわち国王に全てがゆだねられている。小さい国ではあるから国王というより領主みたいなものだけどな」
そこで一度区切り、
「その領主はここバトルインシップ生まれでな、バトルや何やらでのし上がったと言われているやつなんだ。まさに暴君。国は今悲惨なことになっていると聞いたが・・・その様子だと人も殺されていないみたいだし、案外平和なのかもしれない・・・いや、暴虐ゆえの平穏か」
ミサキさんは顔を戻し、俺達を見る。
「今すぐに友達に伝えろ。そこに長居するなと。明日にでも出た方がいい」
「分かりました」
俺は携帯を開き、ヒメちゃんと神崎さんに電話する。その間、ワン太とミサキさんが改めてUFOについて話している。
「で、宇宙船の居場所だが。あんた・・・えーとハルンだっけ、お嬢さん」
「あ、はい」
「いいアイテムがある。宇宙船はワープ機能があるせいで今あんたらが直面している事態になることがある。そこで宇宙船用GPSというものがあるんだ。宇宙船の情報を入れるとその宇宙船の位置を探せるというアイテムだ」
「で、でもそれはまだ開発途中だったような・・・」
「だからだ。開発途中なのはあんたの星も今、ここも同じだ。でも試作品として使ってもらうキャンペーンというのがあり、発売前にアイテムを無料でゲットできる方法がある」
「そ、それって・・・」
「明日ここで行われるバトルトーナメント。そこで優勝すればいいのさ」
「バトルトーナメント・・・?」
俺は携帯を閉じ、会話に参加する。
「よ、少年。で、簡単に説明するとバトルトーナメントなるもので優勝すれば宇宙船を探せるアイテムがゲットできるということだ」
「そのバトルトーナメントって何やるんですか?」
「普通にバトルだよ。あんたらが今までやってきたバトルだ。ただ、普通の殴り合いもある。だから参加費が無料な代わりに一切責任は負いませんという恐ろしい大会だ」
「・・・・・・無法地帯じゃないですか・・・」
なんだその恐ろしい大会。
俺はワン太を見る。やはり変な顔をしていた。
「ルールはあるから死ぬことはないはずだぞ」
「で、でもそんなGPSアイテムが今すぐにほしいという人もいないでしょうし・・・大丈夫ですよね、たぶん」
ワン太が無理矢理つくった笑顔でそう言う。しかし俺もワン太も1つの嫌な可能性にたどり着いていた。ここの国特有の可能性に。
「大丈夫じゃないぞ。ここの連中は子供から大人までバトルバカばっかりだ。景品関係なしに面白そうという理由で参加するさ」
「ですよね・・・」
「でも仲間のことは安心しろ。今、私が言うことを教えたらバトルインシップに集まることができる。だから問題はそれだな」
「ってことはここの国の位置だけじゃなく、他の国の位置も分かったってことですか?」
「おう。私をなめんな」
〇
『すいませーん』
「え・・・?」
「え・・・?」
同じタイミングですいませんと口にした横の男の子を見る。同じ制服ということはたぶんうちの学校だろう。春はとりあえず自己紹介することにした。ここに来るってことはたぶん春と仲間でだろう。
「椿野春風、3年」
「あ、えーと、明日風。3年だ」
「君もこれ?」
「ああ」
春達はあるものを見せ合う。それは簡単でプリントだ。
なぜか春は部活でいつもの赤本を解いていたら先生に言われてプリントを運ぶように言われてしまった。高校でプリント運びってなかなかないことなので潔く引きうけた。
しかし違うクラスなんだけど、春。
春が受け持ったのは白木くんと神崎さんのプリント。ってことは恐らく、この明日風くんも。
「俺は七実と姫岡とハルンさんだ。先生1人に頼むのは悪いって思ったのかな・・・」
「うーん、そうかも。白木くんとハルンさんは同じだからまだしも、姫岡くんと七実くんはここに住んでいないからね。神崎さんもだけど」
というか先生。春に頼むなら白木くんとハルンさんを任せてよ。
でもそれだとこの明日風くんがいっぱい歩かなきゃいけなくなるか・・・。
てなわけで今、春は白木くんの住むアパートに来ているのだ。
「誰も出ないね」
「うーん・・・俺一回来た時はいなかったけど大家さんがいつもいるはずなんだけどなぁ」
「・・・・・」
明日風くんここに来たことあるんだ・・・。
実は春は初めてなので、少しドキドキしていたりする。別に他意なんかないけど。
「うーん・・・大家さんがいなくても白木くんとかはいると思ったのになぁ」
なんで今日休んだんだろ。
するとガチャっという音がして、勢いよくドアが開いた。
「うわぁあああああん!みんないない!みんないないぃいい!若さがぁあああ!私に必要な若さがぁああああああ!」
「・・・・・」
「・・・・・」
2人で全力で逃げようかと思ったぐらいだ。
中から出てきたのは・・・アイドル?コスプレ?ひらひらした服を着た女の人。白木くんのお姉さんとか?いや、でもアパートだから他の人って可能性もあるか。
綺麗な人ではあるけれど・・・なんか残念な雰囲気があるのは気のせいだろうか。
「はっ!若いにおい。・・・・・あなたたちから若さのにおいがするわ・・・毎日かがないと私はひからびたおばあさんになってしまう・・・」
なんかもうこういう妖怪なんじゃないだろうか。人の若さを吸い取る妖怪。というかなんでこの人はそんな若さを求めているの・・・?見た感じ大学生ぐらいみたいだけど。
「知っているかしら、食料」
「食料って言っちゃったよ」
明日風くんがとうとう無視できなくなり、つっこむ。
「私に足りないものはない。美、美、美の3点が揃っているから」
「同じじゃないですか」
春もとうとうつっこんでしまった。この人の前ではどんなキャラも薄れてしまうような気がする。
「しかし、人は言うわ。私にはね、肌の潤いが足りないと。知性が足りないと。理性も足りていないと」
足りないものだらけである。というか肌の潤いはまだしも後半は足りていないとまずいんじゃないだろうか。今までの振る舞いでなんとなく分かってはいたが。
「さらに言うのよ。私にはなにより若さが足りないッ!」
「ここでそれぶっこんできますか・・・」
速さじゃなくて若さ。
「というわけであなたたち、私のアパートに入りなさい」
『なんで!?』
話が突飛すぎる!ついていけない!
「何してるんですか、愛ちゃん」
後ろから大人びた女の子が出てきた。
「あら、巫ちゃん。見てみて、若さという集合体である高校生が来てくれたわ」
「その言い方はどうかと・・・どうも。えーともしかしてプリントですか?」
その言葉に全てが救われる気がした。
結局白木くんたちは勉強合宿だかに言ったんだとか。一番驚いたのはあのふりふりさんが大家さんでピー歳だということである。これは猫柳さんという大人びた中学生に聞いたことだけど。
うーん、というか、なんで春を誘ってくれなかったんだろ。後で文句言ってやろう。その時の白木くんの困った顔を考えていると笑えてくる。
でも明日風くん、なぜか春と同じ感じがしたんだよね。何が同じかは分からないけれど。
いや、分かっていても目をそらしているだけかもしれない。
「・・・・・」
明日は会えるかな、白木くん。
今回は色々と見つかった回です。
章タイトルの話ですが、統一感がないように統一していたりします。
プロローグは擬音。1章は普通の文章で2章は『』、3章は長いタイトルで間章が句読点。4章が~~の波線です。
次の章はどうしようかというのが悩みどころだったりします。
4章も中盤にきました。引き続きよろしくお願いします。
ではまた次回。