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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第1章 宇宙人は唐突に
4/69

第3日 早々に地球に慣れる宇宙人。

 ロープウェイの行きの時、中に置いてあったパンフレットで抉れた山の抉れた原因が宇宙から来たものなのではないかと漠然と予想していた。パンフレットには『宇宙に一番近い街』と書かれていたからだ。しかし中を見ないでそっと元に戻した。

 帰りのロープウェイで確信した。昔、あそこに隕石が落ちたらしい。パンフレットを手に取り、確認する。そんな昔のことにいつまですがってるんだ、というのは禁句なのだろう。しかもその時には隣にマジモンの宇宙人いたし。星を落としてもらったし。

 と、そこまで回想。今は帰り道。帰宅中である。ヒメちゃんこと姫岡小花くんに学校案内をしてもらった後、途中まで帰り道が一緒だと言うので一緒に帰ることにした。もちろん宇宙人付きで。

 学校案内中何をやらかすのかと心配だったが、何も起きなかった。宇宙人は普通に世間話をしているだけだったのだ。俺の杞憂だったのかもしれない。

「転校生同士仲がいいんだね」

 と笑顔でヒメちゃんに言われた。あまりの可愛さに言葉を失ったが後からうんうん、とうなずいて見せた。なぜかこの子の前では喧嘩してはいけないと思ったのだ。親か、俺は。

 そして今。抉れた山の見える道を歩いている最中。

 ヒメちゃんと別れて俺は宇宙人と下校中である。なんたって俺のお隣さんは宇宙人だから。

「知りませんでした、あなたが同姓愛好家だということに」

「愛好家って・・・・・それと俺は普通に女子が好きだ」

 知らないうちにあらぬ誤解をうけていたらしい。というかヒメちゃんは男!とも言えないんだよなぁ。俺の中では。女!って感じはするけれど学ラン着てるし。

「確かにヒメ岡さんの可愛さは異常でした。驚きです。母性本能くすぐられまくりでした」

「ヒメって間違ってるからな、お前。後半は同意だ」

 俺の場合父性か。

 なんというか赤ちゃんを可愛がるのに似てるのである。女の子としても可愛い、赤ちゃんとしても可愛い。死角がない。無双である。

「で」

 と話を変えてきた。

「放課後はどこにつれていってくれるんですか?」

「いかねぇよ」

「な、なぜです!普通男子と女子がそろえばデートが成立するはずですのに・・・」

「普通はな」

 これ普通じゃない。お前異星人じゃん。異星人差別ってか仲良くするのが不可能なのだ。侵略者と名乗った時点で。

「あれ?」

 と後ろから声がかかる。俺と宇宙人が振り向くとそこにいたのは女の子。

「おい、宇宙人。お前何かやらかしたのか?」

「やってません!あと宇宙人って呼び方やめてください・・・」

 じゃあ、なんで呼びとめられる。俺は生憎女の子と親しげにした覚えもない。というかこの街にきてから普通の女子と話すらしていない。もちろん宇宙人ノーカン。ヒメちゃんは女の娘。あとあの恥ずかしいアラフォーもノーカン。もう女子って年齢でもないだろう。

「昨日の人・・・ですよね」

「ん?」

 その人が見たのは宇宙人ではなく俺だった。

「あ」

 そこで思いだす。この子は・・・このリュックサックは・・・。

「昨日駅であった人」

 俺が携帯を見ていた不注意でぶつかってしまった女の子。

「知り合いですか?」

 宇宙人困惑。でも放っておく。

「え、えぇとデート中でしたか?」

 女の子困惑。放ってはおかない。てか内容的に放っておけない。

「違う違う。クラスメイト。友達。住むアパート一緒」

 単語だけ羅列する。

「えぇと・・・でも恐らく、転校生ですよね。駅にいましたし、でかい旅行カバン持ってましたし」

「うん」

「初日からそこまでクラスメイトと仲良くできるなんてすごいですよ。普通じゃないです」

「・・・・・」

 まぁ、そうだろうな。事情をしらなかったらそうなる。でもそんないいものじゃない。だってこいつは宇宙人なのだから。

「で、お兄さんはここらへんに住んでいるんですか?」

「お兄さん?」

 お兄さんって言われる年齢差でもないだろうに。見た感じだと同い年ぐらいだ。だったら畏まっているのだろうか。

「お兄さんってそんな畏まらなくても。俺はほら、近くのアパートに住んでるんだ」

「でも私中2ですし。あ、そうなんですか?どこのアパートですか?」

「・・・・・・・・・え、中2なの?」

「え?あ、はい」

 ・・・・・・・全然見えなかった。中2にしては大人っぽすぎる。いろいろな部位とかも。ここでいやー高校生かと、とかって言ったら殴られるのだろうか。

「で、どこのアパートですか?」

「んーと、お兄さんはー」

 急にお兄さんアピール。年下だからね。そりゃお兄さんですよ、俺。

「お兄さんはあの・・・恥ずかしい人が大家の」

「あ、そこ私の近所です」

「・・・・・」

 恥ずかしい人で通じてますよ、大家さん。

「じゃあ、ご近所さんってことでよろしくお願いしますね」

「おう」

「私は猫柳巫ねこやなぎみこです。では、ママが待っているので」

「俺は白木希。うん、じゃあまたね、猫ちゃん」

 猫ちゃん?と首を傾げられた。親しみ全開で呼んでみたのだが気にいらなかったらしい。どうやら俺はニックネームをつける才能がないようだ。

 というか中2かぁ・・・。それなら知らない人に話しかける、ということもできるだろう。俺も中2までは道路工事のおじさんとかにあいさつできた。高校生になってからは全くしなくなったな。

「ずいぶん親しげでしたね・・・・・」

「・・・・・・」

 分かりやすくすねていた。宇宙人の威厳がもうない。

「確かに話に入れなかったのは悪かった。お詫びに何かおごってやる」

「いいんですか!わぁ・・・」

 顔がぱぁ・・・と輝く。分かりやすいうえに現金だな。

「そうですねぇ・・・地球にきたら食べたかったものがあるんですよ」

「お前少しは遭難者の自覚もてよ」

 しかも星規模の遭難者。山で迷ったのとはわけが違う。

「こんびに、というものの中にあるジャムパンなるものを食べたかったのです」

 コンビニ以外にもあると思うが・・・しかしたまたま近くにコンビニがあったのでそこで買おうか、ということを決めた。







 俺の部屋。なぜか今日も宇宙人が来ている。もちろん作戦会議のためだ。

「ジャムパン、おいしいです」

 もふもふと食べまくる宇宙人。緊張感がなさすぎる。

「半分どうぞ」

「ありがとう」

 気をつかったのか半分を俺にくれる。しかし宇宙人のジャムパンは減っていなかった。

「なんだそれ・・・」

「これも情報改ざんのうちの1つなんです。なくなったものを再現する力、という感じですね。ですが1個食べて2個目を生み出したり、1個を2個に増やすことはできません。あくまで自分が食べていないものを再現するだけ。食べ物を地面に落しちゃったりしたときに便利なんですよ」

 あとは物が壊れた時とか、と補足する。

「じゃあテレビが壊れたらなおしてもらおうかな」

 と適当なことを言いつつ俺のジャムパンを食べる。

「で、だ。お前、これからどうするつもりだ」

「それ昨日もききましたよ」

「1カ月間、学校に通うつもりか?」

「もちろんですよ!案外楽しいものなのですね、がっこう。なぜ人間が嫌がるのか分かりませんよ」

「それは・・・」

 慣れってものなのだろう。学校に行くことに慣れ、授業を受けることに慣れ、友達と話すことに慣れる。そして教育とは当たり前に受けれるものだと思うことに慣れる。どれだけ受けれることが幸せだと言われても心の底から学校を好きになれる人はどれぐらいいるだろうか。

「私も学校いきたかったなぁ・・・」

「ん?そっちの星にもあったのか、学校」

「はい。でも私は王宮で主に家庭教師でしたから。それ以外は親から直接受けたりしてました」

「王宮・・・」

 そんな言葉きいたことないぞ。忘れていたがこいつは宇宙人の姫だったんだな。姫と言えばヒメちゃんという方程式が成り立っていたので忘れていた。メアドとか交換すればよかったかな。

「途中で私以外のこと考えてますよね」

「全然。お前ほどインパクト強いやつなんかほかにいねぇよ」

 実際たくさんいた。というかヒメちゃんといい、コスプレアラフォーといいなんかインパクト強いやつにしか会っていない気がする。猫ちゃんは普通で普通ないい子だ。

「で、連絡は来てないのか?」

「はい、私の携帯に着信はなかったです」

「携帯あんのかよ!」

 はやくそれを言え!

「SPACEジョークですよ。これは一方的に向こうから連絡を取るためのものです。こちらからは連絡できません」

「じゃあ、あんま意味ないのか」

「・・・・・というかノゾムは私を星に帰したいんですか?」

「いや、まぁ、そりゃあな。ここで見捨てるのも後味悪いし」

「そんなにはやく帰ってほしいんですか・・・」

 分かりやすくショックを受けていた。いや、お前こっちがどれだけ苦労しているか。しかし否定しない。はやく帰ってほしいのは本当だ。

「このまま長い間ここにいて、お前に情が移って別れ際に涙ボロボローなんて期待すんなよ」

「私はノゾムに嫌われているのですね・・・」

 宇宙人が涙ボロボロである。メンタル相変わらず弱すぎな。

「のぞむー泣かしたー」

「うわぁっ!」

 押し入れからでてきたのはドラ〇もんではなくコスプレ熟女。今日もふりふりをきている。というかちょっと待ておい。

「なんでそんなとこにいるんですか!」

「なんでってのぞむーがなかなか愛ちゃんの相手してくれないから」

「なんで俺!?」

 ここの大家ならほかの住人にも相手してもらえよ!

「そうすねて家の中で待ってたらなんと女の子泣かしてるじゃない!というわけで面白そうだったからでてきたのよ」

「不法侵入です」

 驚いた。このアパートにはプライバシーもないらしい。じゃあほかにあるものってなんだ。宇宙人か。

「いいんです、愛ちゃん・・・私が私が悪いんです・・・」

「あぁ!ハルンちゃんかわいそう!」

「・・・・・・」

 俺はいったいどこに行けば休めるのか。ここを離れたいと思った瞬間だった。







「ヒメちゃん。前から気になってたんだけど、あそこの空席って誰なんだ?」

「空席?」

 翌日の学校。授業合間の10分休み。ヒメちゃんに聞きたかったことを聞いてみた。転校してきたからそういう事情にも疎く、聞いてはいけない理由かと思っていた。けれどクラスメイトのことだし、と偽善を働かせて自分を正当化する。

「あそこの席」

「あー・・・」

 可愛らしく首をかしげる。どうやら話そうか迷っているらしい。けれど、うん、とうなずいた後、こちらを体ごと向いてくる。可愛い。

「あそこは学校一の不良・・・って呼ばれてる人の席なんだ」

「不良・・・」

 なんというか、古臭い。昔の学園ドラマかってぐらいに。しかも学校一って・・・番長みたいなものか?死語になりそうな話題である。死話。なにをいっているんだ、俺。

「でも、そんな人じゃないんだよ」

「?知り合いなのか?」

「うん、僕は1、2年って同じクラスだったから」

 不良と知り合い。まさかヒメちゃんまでグレたりしないだろうか。うん、俺少しヒメちゃん好きすぎ。自重自重。これなら宇宙人に同姓愛者と勘違いされても仕方ない。

「でもいい人で、優しい人だったよ。そんな不良と呼ばれるような人じゃなかった」

 少しだけふくれるヒメちゃん。なるほど、友達が馬鹿にされているようなものなのか。

「うん、ヒメちゃんがそう言うならそうなんだろ。俺はヒメちゃんを信じるよ」

「ほんと?」

 上目づかいに俺を見てくる。昨日宇宙人に「私とヒメ岡さんとの扱いが違いすぎます!」と言われただけあって俺はヒメちゃんに甘い。

「うん、まじまじ。その人と友達になりたいとさえ思う」

「ほんとにほんと!?ありがとう!」

 笑顔で言われるとこちらまで照れてしまう。自分のことじゃないのに本気になれるその姿はとてもまぶしかった。

「で、その俺の未来のお友達の名前はなんていうんだい?」

「うん、七実空人ななみそらとっていうんだ」

 

明日は投稿できるかわからないので今日投稿します。


宇宙人の他にも不良やらと問題は山積みに。主人公はかっこよく解決できるのか。うん、分かりません。


希という名前ですが少しひねくれているので。ある意味常識人なんで素直なのかもしれませんが。矛盾。


登場人物が増えてきました。次回も増えるかな。あんまり多くの人間を書くことに慣れていないのでまだどうなるか。


ではまた次回。

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