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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第4章 宇宙旅行~UFOに乗って~
39/69

第38日 少しずつ進展する宇宙人。

 俺は銃を構えていた。別に西部劇をやろうとかはしていない。どちらかと言えば祭の縁日での一幕に見えるだろう。狙っている景品もまた縁日っぽい。

 ただここでこの景品を逃せば多大な損害になる。金銭的にも、体力的にも精神的にも。

 『ジャッジメントサバイバル』とは縁日の射的でよくあるエアガン(コルク飛ばし)を使って立ててある板を倒すだけだ。これだけ見ればただの縁日と変わらない。

 しかし板には数字が書かれており、倒した板に書いてある数字分だけ人が泊まれるんだそうだ。

 目を凝らすと、0の数字板が10枚近く。1の数字板が3枚。2が1枚。3も4も5も6も7も8も9も10も全て1枚。なんだそれ。そんなもん当てれねぇよ・・・。

 ちなみに板の大きさも数字が1増えるごとにものすごく小さくなっている。10に至ってはここから見えるか見えないかという感じだ。

「・・・・・・」

 ギャラリーもワン太も息をのむ。とにかく期待はしないでくれ。

 しかし、しかしだ。ここの受付のやつの顔が気に食わない。なんだその営業スマイルの奥にある蔑みというか「どうせ無理だろ?お前なんかにはな」みたいな感情。

 被害妄想かもしれないが、この無理難題を突き出した野郎(女の人だけど)ということもあり、そう見えてしまうのかもしれない。

 そしてさっきのこと。ワン太のおかげでこの宿の位置が分かり、ここまで行きつくことができた。なのに俺が何もしないわけにはいくまい。

「・・・・・・」

 銃を構え引き金に指をあてる。

 そして・・・・・。

「・・・・・!」

 引き金をしぼった。撃った衝撃で少しだけよろける。

 パン!という音とともにコルクが飛び出した。そして一瞬にして結果が出た。

 パタン・・・と倒れたのはなんと10の板だった。

「え・・・」

 と声をあげたのはワン太。俺はそれで当然というような顔をしていた。そういう顔をしているしかないのだ。下手な演技はいけない。ポーカーフェイスが一番楽だったりする。

 だって俺はイカサマをしているのだから。

 ギャラリーが「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」と叫ぶ。しかしワン太と受付の人は未だに事態を飲み込めていないみたいだ。

「な、な、なんで・・・?」

「俺、結構こういうの得意なんすよね」

 受付の人に最大級のドヤ顔を見せる。受付の人は驚きながらも10人分の部屋を用意してくれた。2人でいいですと断わろうと思ったが、この店で10を倒した人は初めてだと言われて記念記念と結局10人分の部屋を用意されてしまった。

 すると後ろから女の人の声が聞こえる。

「いやー参った参った。さすが我が兄妹だな」

「はい・・・?」

 後ろを振り向くとそれは先ほどシャッフルサイコロをした若い女の人。なぜだか俺達のことを兄妹と呼んでいた。たぶん、親しい人に言う兄妹ではなく、血縁的な意味で言っている。

「こいつら、私の妹と弟なんですよ」

 そう言いながらギャラリーに「どうも、どうも」と頭を下げている。いや、兄妹になった覚えなんて全くないわけだが・・・。

「じゃあ、部屋に行こうか、兄妹」

「いや、俺達あなたの兄妹なんかじゃ・・・がふっ!」

 口を手で押さえられる。

「よーし、はやく部屋に行こうぜー!」

 そのままワン太も一緒に抱えられエレベーターへ。部屋のある6階へと移動する。俺はなんとか拘束を解いて女の人を見る。

「何してるんですか!」

「はい?あー、私もさ、泊まるとこなかったんよ。それでホテルを探しているやつがいるときたら普通そいつにあやかろうとするじゃん?タカるじゃん?」

「って最初っからその気だったんですか・・・」

「いいじゃんよ、10人分あるんだし。3人でも豪華すぎるぐらいだぜ」

 で、と区切る。

「私の名前はミサキ。ミサキ・バードミア。少年少女は?」

「俺は白木希です」

「ハルンです」

 ワン太はフルネームを名乗るのはめんどうなことになると思ったのだろうか。顔は知られてないけれど名前は知られていたらめんどくさいことになりそうだしな。特にこの人、ミサキさんなら余計に。

「さらに少年、ノゾムよ。さっきのはどんなイカサマなんだ?」

「イカサマじゃないですよ」

 俺は素知らぬ顔で返す。するとエレベーターが止まった。どうやら6階についたみたいだ。

 すると今度はワン太が近くに来る。

「で、どんなイカサマなんですか?」

「お前もかよ・・・」

 俺は小声でミサキさんに聞こえないように話しだす。

「これだよ」

 俺は人差し指を立てる。

「まさか・・・『透明な鋼糸スケルトン・ストリング』ですか」

「その名前恥ずかしくないか?」

 俺も使ってたけどそれはイメージしやすかったからだ。いや、技名叫んで発動ってかっこいいとも思ったけれどさ。

「銃を構えた瞬間に10の板につけておいたんだよ。それで撃った衝撃でよろけたふりをして指を引っ張る。釣りみたいに釣り上げなくてもちょっと動かせば板ぐらい倒れるだろ」

「おお・・・なんという発想」

「せめてお前には分かってほしかったかな・・・」

 と俺はワン太に質問したいことがあったのを思い出した。

「この釣り糸とかさ、宇宙人パワーって誰でも出せるわけじゃないのか?」

 ここも地球ではない違う星。こういうパワーがあるのだというのならイカサマし放題だなぁとかって思っていたんだが、ここの住人はどうやら使えないみたいなのだ。

 受付の人もただただ驚いていたし、ギャラリーも驚いていた。宇宙人ならみんな使えるのかとばかり思っていた。

「私からすれば地球人も宇宙人です。しかし地球人はこのような力は使えない。それと同じです。こういう力を使える星の方が少ないかもしれませんね」

「ふーん・・・それとさ、この借りてる力まだ返さなくていいのか?」

「はい。それはもう少しだけ貸しておきます。釣り糸ぐらいしか出せない程度の力ですけれどね」

 そう言ってワン太は笑う。

「おい」

 そこでミサキさんに呼びとめられる。

「2人でイチャイチャするのはいいけどよ、あんたらなんか困ってる感じだっただろ。私でよかったら話してみ?お礼もしないととは思っていたし、できる範囲なら助けてやるぜ」





「作戦会議といきますか・・・」

 ノウンさんのおかげで普通にホテルを見つけられたあたしたち3人は今、同じ部屋に集まって作戦会議をしていた。これからの方針を決めなければ。

「で、とりあえず今すべきことは何か、ね」

「うーん・・・」

 とノウンさんが唸る。

「ごめんね、ちょっと待って」

 そう言っておもむろに立ち上がる。なんかさっきからそわそわしていたのだが、なんなんだろう?何か問題でもあるのだろうか。

 ノウンさんは部屋のクローゼットを開ける。

「あ、あったー」

 嬉しそうに笑顔になるノウンさん。なんか年齢が分かりにくい人だな・・・。あたしたちと同じぐらいかと思ったら無邪気な笑顔を見ると年下のような気もする。ある一部分は成長しまくっているけれど。

「みてみてー浴衣ー」

「あー・・・」

 浴衣なんてものがあるのか。日本の温泉とか旅館とかには大抵あるものだが、ここにもあるなんて。街の風景は西洋だったのにこういうところはジャパニーズらしい。

「よいしょ」

 次にノウンさんがとった行動は自分の来ていた白いワンピースを脱ぐことだった。下着が露わになる。

 ・・・・・・え?

 しかもあんなに大きいのにブラをつけていない・・・。

 当然そんなことになったら反応する人が1人。

「うわぁ!」

 姫岡くんだ。

 顔を真っ赤にしてノウンさんに注意する。

「な、ななななな何やってるんですか!」

「え?何がですか?ああ、さすがに明日も洗濯せずにこの服を着るのはあれかなーって。コインランドリーとか呼ばれる機械があったのでそこで洗おうかなって。ほら、みなさんもはやく脱いで」

「あー・・・」

 なんか色々とめんどくさい状況っぽかったので、説明したくないのだがここでしなければ姫岡くんは目を開けれないし、ノウンさんは勘違いしっぱなしだし。

「ノウンさん、とりあえず服を着てください・・・それと1つ言いたいことが・・・」

 言いにくいな・・・と思いつつもあたしは口を開く。

「彼、姫岡くんですが・・・男です」

「男・・・?」

 きゃー!みたいな叫び声をあげるんじゃないかとばかり思っていたがノウンさんは無言で立ち尽くす。姫岡くんは未だに目を開けられずおろおろとしていた。

「男なの!?姫岡くんっていうニックネームかと思ってたよー。すごい可愛いね、ほんとに可愛い。小動物みたい!はわぁー・・・」

 なんだか非常に癒されていた。って羞恥心とかないんですか・・・?

「あの・・・裸で迫らないでください・・・姫岡くん死んじゃうんで・・・」

 最終的に抱きつかれ生で大きな胸に包まれた姫岡くんはなぜか涙目であった。いや、泣くのも当然ですね。最初から男がいようがいまいが変わらなかったのか。

 それぞれの部屋に戻り、浴衣に着替え、コインランドリースペースで洗濯が終わるのを待ちながら作戦会議をすることになった。

 なぜかノウンさんの膝の上に姫岡くんが無理矢理座らされるという不思議な状況。ノウンさんはすっかり姫岡くんが気に入ってしまったみたいだった。

「あなたも座りますか?」

「遠慮しておきます」

 丁重に断り、ようやく本題へ。

「これからの方針を決めましょう」

「んと、とりあえずがUFOを探した方がいいのかな」

 そこで姫岡くんがいつものように常識人発言。その発言を聞く度にあたしは安心する。やっぱり普通が一番だと改めて思った。

「UFOね・・・先にみんなと連絡を取るっていう手もあるけど・・・」

 携帯電話は通じる。メールもできる。とりあえずそれぞれの国がこの星のどこらへんにあるのかさえ分かれば合流することも可能だろう。位置が分からないのに適当に動くわけにはいかない。

 それでみんなでUFOを探すとか。それが無難だろうなぁ。

「というか」

 ここであたしはある1つのことを思い出した。

「ノウンさんはグリーン星から地球まで翼できたんですよね。だったらみんなの場所を探したらUFOなしでも地球に帰れるんじゃ・・・」

「体力的に星の位置が分からないときついね。それに私が持てるのはせいぜい2人の人間のみ。それこそ往復する力なんてないから2人抱えて飛んだら一か月休んでまたその星へ。さらにその星で休んで2人連れて地球へという感じになっちゃうよ」

 それはダメだな・・・。すごい時間がかかってしまう。

「ってことは街の人におかしいやつと思われることを覚悟して国の位置を聞いた方がいいみたいね」

「できた!」

 ノウンさんはそこで大声を上げた。

「じゃじゃーん、ツインテールにしてみたよ。めっちゃ可愛い!」

「え?え?」

 姫岡くんの髪型がツインテールに。鏡がなく自分で見れない姫岡くんは混乱していた。

 ノウンさんのんきすぎ。





「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 俺とシキブさんは無言になっていた。白い国の奥に入るとそこに広がっていたのは崩れ落ちた家や壊れた建物。それに地面にはひびが入っていた。

 確実に何か戦闘が起こったという後。俺は恐怖で動けなかった。

 やはりシキブさんの言うとおりこの国には何かがあった。これでほとんどこの国に住人がいることは期待できない。宿も残っているのかどうか。

「・・・・・ん?」

 しかしそんな白い中で俺はあるものを見つけた。赤いもの。よく目を凝らすとそれは・・・。

「血文字・・・?」

それぞれ少しずつ進展しています。


ではまた次回。

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