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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第4章 宇宙旅行~UFOに乗って~
35/69

第34日 宇宙に旅行する宇宙人。

 抉れた山。その正体は宇宙人激突による衝撃跡。それは街興しに使われており、毎日たくさんの観光客が来ているんだとか。ただし、それは夜の話だ。

 あの跡を最初につけたのはワン太ではなく昔の宇宙人である。その宇宙人が夜に来たとか、なんとかで観光客は夜に集中する。ましてや朝などは誰もいない。

 正直説はたくさんあり、夜ではない説もあるそうなのだが、一番有力なのは夜。バカにしてはいたけれど、目の前に宇宙人が来てしまえばそんなことも認めざるを得ないわけだ。

 そんな山をロープウェイで俺達、俺、空人、ヒメちゃん、ワン太、神崎さん、バズーカちゃんにシキブさんは登っていた。みんな小さな旅行カバンを持っている。

「・・・・・」

 無言で外を見る。

 俺以外は何かと色々な話で盛り上がっている。しかし俺はそれよりもこの山のことを考えていた。昔の宇宙人にワン太、さらにバズーカちゃんもここに墜落した。それは偶然なのだろうか、と。

 それに俺はワン太に会って以来ここには来たことがない。純粋に懐かしさを感じてしんみりしてしまう。あの頃はまだ知り合いが誰もいなかったんだよなぁ・・・。それが今ではこんなにたくさんの人と過ごしている。

「着きましたよ、みなさん」

 そう言ったワン太についていく。降りたところあたりに人はいない。それはそうだろうな。普通の平日ではあるし、学生は学校、社会人は仕事がある。

 そんな中、こそこそと移動してきたのである。ヒメちゃんは高校生には見られないと思うが、学生服を着ていないとはいえ、堂々と街を歩くのは少し憚られた。

 大きな道をひたすら歩く。思いだす。4月の頃を。

 ワン太はその大きな道をそれ、整備されていない荒い道を進む。それは道というより森をただ突っ切っているようではあるが、ワン太の足に迷いはない。

「こんなとこにあんのかよ・・・UFO」

 空人が驚きながら歩いている。俺もここを通ったのだっけ?最初は抉れた部分を見て、それで音がしたから向かってみたら・・・っていうような感じだったな。

「みなさん、到着です!」

 そうしてワン太は後ろを見る。

「久しぶりですね、宇宙船ビーナス号」

「え・・・・・」

 名前とかあんの・・・?

「何もないみたいだけど・・・」

 ヒメちゃんが首を動かしてまわりを見ているがUFOらしいものは見当たらない。それも当然だ。だって見られないようにしているのだし、一般人に見られたら大変だからな。

「まぁまぁ、見ててくださいよ」

 ワン太はドヤ顔で指パッチンした。しかし音はならない。何度も挑戦する。しかし音はならない。そしてとうとう・・・。

「パチン」

 口で言いやがった。

「できないならやるなよ!」

 という俺のつっこみもほとんどがかき消されることとなる。ゴゴゴゴゴゴゴという音とともに空間から現れたのは漫画とかでしか見たことのないUFO。円盤型のUFOだった。

 空人にヒメちゃん、神崎さんが呆気にとられる。

「さぁさぁ、どうぞどうぞ」

 みんな呆けた顔でUFOの中へとはいっていった。





 UFOの中はまさしくハイテク!というような過ごしすい広い空間であった。学校の体育館以上あるのではないかというぐらい広い。近未来の建物はこうなるんじゃないかなぁ、と考えていた通りの内装。

「すげー・・・」

 思わず声を出してしまう。

 天井はガラスになっているの?と思うほど外の風景をうつしだしていた。UFOの中なのに天井に広がるのは青空。それに壁も次々と透明になり、外の風景をうつしだす。屋内なのに外にいるような気分になるな。

「特別な素材で透明にして外の風景も見ることができるんですよ」

 そんなワン太がいたのは学校の体育館ぐらいある、恐らく共同スペースらしきこの部屋の一角。機械類が集中している場所であった。操縦桿・・・だろうか?

「ワン太がいる場所はコクピットみたいなとこか?」

「そんな感じです。オートで操縦してくれるんで、私がいる必要もないのですが、壁を透明にしたりとかは手動で行わなければならないので」

 コクピットから離れこちらへくるワン太。

「改めて宇宙船へようこそ」

 ここからはワン太の説明が始まった。

「部屋は1人につき1部屋あります。広さもそれなりですので。ここの一番広い空間は共同スペース、リビングみたいなものです。体も動かせるのでご自由に。あと、食べ物も、お風呂もあるので生活関連のことは心配しないでください」

「はい」

 そこで手をあげたのは空人だ。

「重力とかってどうなんの?なんかテレビとかでやってる宇宙飛行士とかって無重力の中で動いているイメージがあるんだけど」

「心配には及びません。重力は作り出されるので宇宙にいっても安心。もちろん無重力にすることもできますが、無重力に慣れるには特殊な訓練も必要なのでおすすめはしません」

 おすすめはしないというかやっちゃいけないことなんじゃ・・・。

「では何か聞きたいことがあればいつでもどうぞ。今からシキブによる授業を始めます」

「も、もうかよー・・・」

 空人が残念そうな顔をする。

「もうちょっと探検とかしようぜ」

「いえ、いけませんよ」

 そこでシキブさん登場。

「学校を休んでここにいるんです。せめて学校が終わるまではここで勉強です。今日の時間割を教えてください」

 なぜかやる気満々。

「シキブさんが女教師・・・・・・はっ!俺は何を・・・」

 空人がどこかへ飛んで行ってしまっていた。すでにぐちゃぐちゃ。予定通りにはいかない。それが俺達なのだ。・・・・・なんて格好悪い・・・。

 みんなおとなしく勉強道具を出す。

「って机と椅子ないけど?」

 神崎さんが大事なことに気付いた。それは俺も気になっていたことだ。体育館のようである。そう、何もないのだ。走り回れるけどそれ以外はできない。

「任せてください」

 ワン太はまたコクピットへと移動する。そこで何かをいじるとウィーンという音とともに机と椅子が床から出てきた。すごい最先端だな・・・。

「シキブ、授業を始めてください。私は宇宙船を飛ばします」

「はい。みなさん。衝撃はないので安心してください」

 そう言うとワン太がひどく子供じみた感じで「発射!」と叫ぶ。透明だった天井や壁が元に戻り、あっという間に普通の家へと大変身した。

 しばらく、5分くらい経っただろうか、ワン太がコクピットから出てくる。

「あっという間に宇宙です」

「もう!?」

 神崎さんが驚く。もっとエレベーターみたいに上がったり下がったりの衝撃があると思ったのだがそうではないらしい。

「はい、ここで天井と壁を透明にしたら分かることですが、今は授業をしましょう」






「王様」

 グリーン星、王宮にて。王がいる場所に兵隊が1人。

「ノウン様がいなくなりました」

「・・・・・・・・・そうか。やはり娘を追ったのだな。ノウンが出動するぐらい恐ろしいイレギュラーなことをしようとしているわけか・・・」

「追いますか?ついでに姫様も連れ出した方が・・・」

「いや、いい。今は目の前のことに集中しろ」

「ですが、彼女はこの星の知識です。もし裏切っていたのなら・・・我が星は丸裸にされたも同然ですよ!真っ先に侵攻されます!」

「大丈夫だ。ノウンはまだ私たちに従順だ。だからこそ出ていったのだろうからな」

「・・・・・?」

「それぐらい私の娘は何かをしようとしているのだよ。我が国に損害を与えるようなことをな。ノウンはそれを止めにいったのさ」

「では、まだ我々の味方であると?」

「そうだ。むしろ娘を連れて帰ってくるかもしれんぞ」

「・・・・・・しかしノウン様は・・・・・少しアレですよ・・・」

「・・・・・・・・・・そうだな。アレだ」






 シキブさんの授業が終わり、時間は午後4時。ずっと授業していたわけだが、分かりやすいうえに短時間でどんどん進むため、学校に行くより有意義な時間になったのではないか、というほどであった。

 みんなもそう思っているのか、だらーんと机に倒れ込んでいるものの、顔は満足そうである。

「そういえばワン太、どうやってそのノウンだかを捕まえるんだ?」

「簡単です。出発の時にノウンのデータを入れましたからこの宇宙船が勝手に見てけて勝手に移動してくれるんですよ」

「へー・・・」

 それはすごいな。本当に俺らは何もしなくていいじゃないか。

「でも意外とスムーズにいくよな。お前が再び宇宙に戻るからまわりの宇宙人とかも騒がしくなるんじゃないかと思ったが」

「そのためのあなたたちです。私たち、宇宙人のエネルギーと相殺しあって、まわりのレーダーにかからないようにしているのです。もしかかったとしてもグリーン星から追手は来ませんよ」

 まただ。また悲しそうな顔をしている。

 何度もグリーン星の話を聞いて、俺が口を出せることではない、と思ってきたけれど少しだけ口を出したくなったな。家族ぐらい家族の命を大事にしろよと言いたい。命が平等という意見には賛成できるが、何もかもが平等というのもまた気持ち悪い。

「ほいっと」

 ワン太が何かのボタンを押す。すると壁と天井が透明になり、現れたのは・・・

「宇宙・・・」

 本とかテレビでしか見たことのない宇宙がそこにあった。あちらこちらに星も見える。

「すげー・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

 感想は思い浮かばない。ただただ驚いて声が出ない。黙ってしまう。

「これが私たちの故郷みたいなものですよ」

 そこで改めてワン太が宇宙人だということを思い知らされる。一緒に過ごしていくうちにどこか自分と同じではないかと思ってはいたが・・・違う。全部が違う。

「ワン太・・・」

 なぜだか俺はワン太が遠くに行ってしまったような感覚に陥った。そんなことはない。帰ったら普通にいつも通りの日常をおくれる。そのはずなのになぜかワン太がもう2度と戻ってこないような気がする。

 俺はワン太を見る。子供のように俺の心には寂しさがあふれる。ワン太にどこにも行かないでくれと言いたい衝動に駆られる。

 なんだこれは・・・俺はほんと、おかしい。宇宙を見て驚いたことにより、少しだけまだ混乱しているのかもしれない。そうあってほしい。

「・・・・・・」

 その思いを振り切るように俺は強く目を閉じた。

人探しでこのスケール・・・宇宙船を飛ばすほどの人探しはあまりやりたくないですね・・・。


というわけで地味に少しずつ話の本筋も進んできました。全体通しての本筋。


ではまた次回。

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