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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
間章 恋騒乱、夏心地
30/69

第29日 思わず避ける宇宙人。

 今日も講習ということで7時に目が覚めた俺は朝ごはんを食べようと食卓へと向かう。ちょうど俺がドアを開けた時、隣の部屋のドアも開いた。

「おっす、ワン太」

「・・・・・」

 バダンッ!というそんな音ドアからでるんだ・・・というような勢いでドアを閉めたワン太。

 なぜ、そんなに避ける。というか避けた、よな。今。

「何かしたかな・・・」

「恋、ね」

 大家さんが台所から出てきてなぜかジョ〇ョ立ち。なぜ。

「いえ、恋とも違うかしら・・・あれは意識したて・・・恋愛未満の感情。若さ溢れて羨ましいわ」

「いや、なにぶつくさ言ってるんですか」

 恋って。恋はないだろ、しかも昨日まで普通だったのに。

「・・・・・・」

 いや、普通じゃない事件が1つだけあった。ラブレター。そういえばなんて返事したのかを俺は聞いていなかった。人のプライベートにずかずかと入りこみたくないという気持ちもあるし。

 しかし昨日何かがあったのだとすれば、それはラブレター絡みだろう。

「はっ・・・」

 まさか俺と目を合わせることもできないぐらいやばいことになっているのか・・・?

 最近の高校生はこう・・・いろいろと早いというけれど1日でそんな・・・そこまで・・・。でもたとえそうだとしてもなぜ俺と目を合わさない。やましいのか。やましい気持ちがあるからなのか。

「うあー・・・」

「のぞむーってたまに思うけれどバカなところあるわーいとしくなっちゃう」

 大家さんが何か気持ち悪いことを言っていたが気にしない。

 やましいこと・・・なんだか納得いかない。このよく分からない感情を自分なりに解析してみた。その結果は簡単でワン太はその名前の通り犬っぽいのだ。

 捨て犬にミルクをあげ、雨が降った時には傘を持ってきて一緒に雨宿り。いつか飼ってあげるからと約束したのに勝手にどこかの誰かに拾われていった気分。

 ミルクあげたじゃん!傘さしたじゃん!と女々しい男のようにひたすた言いたくなる。

「俺には・・・関係ないよな・・・」

 とりあえず学校に行こうと朝食を食べ始めた。







 登校中。ワン太を見つけたので声をかける。

 てっきり付き合っているのだとしたら一緒に登校とかすんのかなーと思っていたが1人だ。断ったのだろうか。それとも・・・あえて1人で登校?目立たないように?

「ワン太、おはよう」

「!」

 ドヒュン!という音が聞こえる速度で走り去るワン太。

 なるほど、宇宙人って足が速いんだな。

「ってまた避けられた・・・」






 教室の前でワン太を見つけた。

「おっす」

 バダンッ!と教室のドアを閉められた。






 昼食中。神崎さんとご飯を食べているワン太を見つけたので声をかけた。

「今日のおかずおいしそうだな」

 ドバン!と弁当に顔をつっこむワン太。

「っておい!」

 そこまでして避ける!?

 神崎さんも何が起こったのか分からないというような困惑した顔をしている。それはそうだろう。友人が弁当に顔をつっこむとか見る機会のない光景だ。

「ごめん、神崎さん。後、頼んだ」

 俺ではだめだ。

 ここは女の子同士の方がいろいろとやりやすかったりするんじゃないかと、俺は教室に戻った。







「で、へこんでいる、と」

 教室にて。異常にテンションの低い俺に対して空人とヒメちゃんが心配してくれた。いつも通りふるまっていたはずなのだが。友達に避けられるというのは思った以上に心にくる。

 ラブレターの話は抜きにして避けられているかもしれないということだけを伝えたのだが。

「うーん、嫌いになったとか?」

「そ、空人くん。希くん、大丈夫だよ、あんなに仲良かったんだし。嫌いになったわけじゃないと思うよ」

 空人は性格的にもあっさりしているので核心をついてくる。ヒメちゃんは相変わらず優しい。その優しさが心にしみる・・・。

「何かあったりとかしたんじゃないのか?喧嘩する理由とか」

「喧嘩・・・・・」

 何度考えてみても喧嘩する理由も避けられている理由も見当たらない。というか今まで喧嘩とか仲違い的なことをしたことがない。何が起こってもワン太は笑顔で喧嘩腰になることさえなかったのだ。

 それがどうしたことだろう・・・今日、俺は避けられているではないか。

「喧嘩でないだけいいのかもしれないが・・・」

 何かしただろうか。

 やはり俺関連ではなくて、昨日のラブレター関連のことなのか?

 しかしそれを話せる相手は・・・神崎さんか。でも神崎さんは今、弁当イン!状態のワン太を頼んでいるし、だとすれば・・・。

「椿野」

「椿野さんがどうかしたの?」

 ヒメちゃんが反応する。

「いや、あいつなら何か分かるかもしれない」

 というか。

 というかヒメちゃんよ。あなたは椿野とも友達なのか。知っているとは思わなかったよ。ほんとすごい交友関係が広いよな。

「椿野さんって確かあのオカルト研のか?というかお前そんなとことも交流あんのかよ」

「むしろそういうところにしか交流がないんだよ・・・」

 悲しい。そういうちょっと変わった人しか俺のまわりにはいない気がする。

「でも椿野さんってすごい優しくて、それに明るくてまさに女子高生!って感じがするもんね。何か人と人の関係についてアドバイスしてくれるかもしれないよ」

「・・・・・」

 あいつそんな感じなのか。一度ヒメちゃんに部活動中の椿野を見せてやりたい。

「でもどちらにせよ、放課後だな」

 まだ昼休みだからな。

 でもたぶん今もあいつは活動中なのかもしれないけれど。今は夏休みだし、2年生、1年生は来ていないみたいだし、どうかな。

「お、じゃあさ、今ちょっと話したいことあるんだがいいか?」

「何だ?」

 空人が嬉しそうに話しかけてくる。

「明日風と予定をたてたんだ。あいつ講習とってないからさ」

 講習後の時間とかで全てを決めたらしい。

「たぶん、その予定で大丈夫だぞ。あの人いつでもいるし。ワン太がいればなおさらいるし」

「おっけ、今、メール打っとくよ」

 それと同時にチャイムが鳴る。

「あ、ヒメちゃん次の時間って古典だっけ?」

「・・・・・・」

「ヒメちゃん?」

「・・・・・・あ、ううん、えっと、なんだっけ?」

「いや、次の時間なんだっけなぁ・・・と」

「古典だよ」

「・・・・・ヒメちゃん、大丈夫か?」

「え?何がかな?・・・うん、全然大丈夫」

 そう言うとヒメちゃんは講習テキストを開いて、予習しているかの確認を始めた。

 最近、ヒメちゃんが空人の、それもシキブさん関連の話になるとなぜか悲しそうな顔をしていることが多くなってきている。理由はなんでか教えてくれないのだけれど。

「うーん・・・」

 それもあいつに相談してみれば分かるかな、なんてな。万能人間でない限りそんなことは分らないだろう。俺は少しの期待を込めて放課後を待った。







「おーい、椿野いるか?」

 化学室にて、俺は椿野を訪ねた。放課後ということもあり、部活動の音ぐらいしかしない。外のグラウンドは野球部が使っているのか騒がしい。しかしそんなところに夏の訪れも感じる。

「あ・・・・・」

 椿野がいた。また黒魔術の赤本を開いて勉強をしている。姿はいつもの魔女っ娘や黒いとんがり帽子、黒いローブなどではなく、普通に制服。眼鏡もかけていない。

 ウェーブのかかった髪の毛と容姿を見ると育ちのいい女の子という感じだ。まさか毎日オカルトにのめり込んでいる少し変わったやつなんて誰も思わない。

 だからこそヒメちゃんの評価も少し俺とずれていたのだろう。

「え、あ、白木くん・・・!」

 なぜかすごく驚いた顔で見てくる椿野。すると次の瞬間なぜか可愛らしいぬいぐるみがとんできた。よく女子高生なんかがカバンにつけている小さいものだ。

「ま、まだ着替えてないんだから見ないで!」

「いや、着替えるって・・・」

 なぜか恥ずかしがって顔を赤らめる椿野。こいつのこういう顔は初めてではないがなかなか珍しい。というか俺は別に着替え中のぞいたわけではない。こいつからすればたぶん、あのオカルト研制服であるちょっとおかしな黒装束セットを着なければ裸を見られたも同然なんだと思うことにしたが。

 教室とかもそれなら別によくね・・・?

 しばらくして着替えて戻ってくる椿野。

「ふふふ、ようこそオカルト研へ」

「・・・・・」

 先ほどのことはなかったことになったみたいだ。

「わざわざ話を戻すようで悪いけれどさ、なんで恥ずかしがるんだよ」

「・・・・・・だってさっきの格好普通だし・・・」

 普通=恥ずかしいというなんだかよくわからない中2病を発症しているらしい。いや、どちらかといえば高校生にありがちな感じか。

「普通の格好でもいいと思うんだが・・・」

「いいの!春はこれが好きなの!」

 そう言うとまた机にむかって赤本を開く。

 やはり着替える必要性が見当たらない。

「まぁ、いいけどさ。相談したいことがあるんだけど」

「ハルンちゃん絡みでしょ」

「・・・・・」

 あたりだ。

「で、なに?避けられてるとかそういう感じ?」

「・・・・・」

 あたりすぎだ。なんでそんなことまで分かるんだ。

「それとご友人が自分に何かを隠している、ということね」

「万能人間じゃねぇか!」

 なんで分かるの!?

「で、まずどちらから相談に乗ってほしい?」

 椿野はこの格好(魔女っ娘、とんがり帽子、眼鏡)に着替えると気持ちが大きくなるらしく、普段よりも落ちつくらしい。さらになんと上から目線にもなりがちという・・・この場合は俺が頼みこんだから当たり前の目線だがな。

「あー・・・そうだなぁ・・・ワン太の方からだな」

「ハルンちゃんね・・・。避けられてる心当たりとかないの?」

「ないんだよ・・・てかそれは分からないのか?」

「超能力者や宇宙人じゃないの。分かるわけないよ」

 先ほどまでそれに見合ったぐらいの洞察力を見せていたが。宇宙人なら分かるかも、でも避けられている人が宇宙人なんだよなぁ・・・。

「可能性の話だけど、避ける理由っていうのは嫌う以外に恥ずかしい、ということもある」

「恥ずかしい・・・?」

 それこそ心当たりがない。

「なにすっとぼけた顔してんだか。言ったでしょ、昨日恥ずかしいこと」

「・・・・・・・・・・あ」

 ワン太が彼女とかどうのってやつね。言ったわ、恥ずかしいこと。でもあれ嘘だしなぁ・・・。

「ってそうそう!言った!でも恥ずかしくはないなぁ!だって彼女だし!」

「もういいって。嘘だってばればれだしー」

 まさか・・・ばれている・・・だと・・・。

「まぁ、あれが嘘だと仮定しよう」

「まだ諦めないのね」

「うるさい。で、あれが嘘だとしても・・・あの言葉をワン太が聞いていたっていうのか?だってあの時は俺とお前しかいなかったじゃないか」

「ん」

 そう言って椿野が入り口を指さす。

「あなた、入り口の扉を閉めてないでしょ、毎回。春はこの姿見られてもいいけど、でもあなたの恥ずかしい告白は聞かれちゃったかもしれないね」

 よく考えたら隙だらけだな。こいつの格好も隙だらけだが。魔女衣装なのに肩とか足とかすごい露出が多い。スリット入ってるんだ、スカートに。しかしそれを見て俺が感じるのは喜びや照れではなく恐怖。

 だってこれ、風邪で寝込んでなかったら俺が着ていたかもしれない代物なんだぜ・・・大家さん、限度ってものがあるでしょう・・・。次やるなら着ぐるみとかにしてください。

「お前の羞恥心が少しおかしいということは分かったが・・・なるほどなぁ。聞かれてたか・・・」

 だとすると誤解されているのか、それとも嘘だと理解している上で恥ずかしいのか。後者だろうな。俺も嘘だと分かっていても恥ずかしくなってきた。

「それにドアのあたりに神崎さんが見えたの。だからほぼ確実。やったね、白木くん」

「何がだ」

 しかし誤解されているのなら誤解を解くということをすればいいんだろうが、誤解すらしていないとなると手のうちようがないな。それこそ時間が解決するとかじゃないと。

「でも分かった。ありがとな。あとはこっちでなんとかしてみせる」

「・・・うん」

 すべて推測でしかないけれど、ワン太と話してみよう。何を話すのかは分からないが。

 次はヒメちゃんや空人についてだ。

「これはさすがにお前でも分からないと思うが」

「分かる分からない・・・というよりこちらのほうがあなたたちより分かりやすいよ」

「え・・・?」

 てかなんで細かい詳細まで知ってんの・・・?

「女子高生をなめないで。情報伝達速度はニューロンを超える!」

「すごいんだかすごくないんだか・・・」

「で、そっちの方だけど、これには答えられない」

「・・・・・はい?」

 いや、今、分かりやすいって言ってなかったっけ?

「言えないのと言わない、の違いってやつだよ」

「じゃあ、知ってるけど言わない、ってことか?」

「うん。これは春からじゃなくて姫岡くん、でもなくて七実くんから聞いた方がいいよ、絶対に」

「空人から?」

 ってことはこれに直接関係しているのは空人ってことか?

「春が教えられるのはここまで、じゃあね」

 そう言ってまた赤本に集中する椿野。ほんといろいろと真面目である。

「ちょ、ちょっと待て、勉強の邪魔はしないからさ、もう少しここにいさせてくれ。俺も勉強する」

 もともと、今日はここで勉強するのも目的の1つだった。椿野を見ていると俺も頑張らなければなぁという気になる。それにお礼もしたい。

「・・・・・・まぁ、いいけど」

 椿野も了承してくれたため、俺も勉強道具をカバンから取り出す。

 なぜか夏休みの間で一番有意義な時間を過ごす俺でだった。椿野とこんな時間が過ごせるとは初めて会った時には思わなかったなぁ・・・。




中継ぎ回ですね。


いろいろと次につながるような話にしてみました。


ではまた次回。

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