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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第3章 スクールフェスティバルタイフーン夏13号
26/69

第25日 咲いて始まる宇宙人。

 3日目の夜。

 閉会式を終え、順位発表も終えた。俺らのクラスは2位。本当に僅差ではあったのだが、惜しくも負けてしまった。しかしみんなは満足しているようだ。もちろん、俺も満足。

 そして今はみんなでグラウンドに移動。好きな場所に座って花火が打ち上がるのを待っている。

 ワン太や空人、ヒメちゃんや神埼さんは今、帰り支度を整えていてもうそろそろ来ると思うのだが。

「のぞむーじゃない」

「ノゾム様」

「お兄さん」

 三者三様の声を聞く。大家さんシキブさん猫ちゃんだ。この3人が並ぶとさすがに圧巻で本当に綺麗だと改めて思わされる。美少女、美女、美熟女だ。これ聞かれてたら殴られてるんだろうな、主に大家さんに。俺は3人の方を見る。

 花火は一般公開もされているのでこうしてこの高校に通っていない人も見ることができる。

「こんばんは。えっと・・・猫ちゃんの友達は?」

「みんなはもうすでに帰りましたよ。なかなか花火まで見ようとする人もいないんですよね。私は大好きなんですけれど花火」

 そう言って少し寂しそうな顔をする猫ちゃん。

「俺も好きだよ、花火」

 その顔があまりにも悲しかったからか、俺はそう言っていた。猫ちゃんも笑ってくれる。

「というか大家さん、なんという格好を・・・」

 大家さんの今日の衣装はふりふりが2倍ぐらいになっていた。学校祭は仮装パーティーじゃないんだけれど、言っても聞かないんだろうな。

「というかシキブさんは完全になじんでますよね」

 大学生というような感じでとてもよく似合っている。着物も似合っているがパンツルックもなかなか様になっていた。

「いえ、そんなことはございません」

「というかさっき俺のことノゾム様って言ってたけど・・・」

 そんな呼び方されてたっけ・・・?

「普通でいいですよ、むしろ俺の方が年下ですし」

「ですが姫様のお友達ですので・・・」

「他のみんなだって普通にしてくれって言いますよ」

「・・・・・・・・・ではノゾムくん、で」

「はい、シキブさん」

「あれ?みなさんも来ていたのですか?」

 そこにみんなが登場。メイクやら衣装を戻したヒメちゃんやそれを手伝っていた空人。神崎さんにバズーカちゃん。それとワン太。いつものメンツが全員揃った。

「おっす、ってシキブさん」

「先日はどうもありがとうございました」

 なんか新たな関係が生まれているんだが。確かお祭り一緒に回ったんだっけ?と、そこに神崎さんが割って入る。

「こんにちは」

「え、えぇ、こんにちは」

 今はどう考えてもこんばんはなのだがなぜだが神崎さんはこんにちはと言っていた。しかもそれを指摘することを許さないような気迫もある。それに動揺し、シキブさんもオウム返しにこんにちはと言っていた。ここでもまた新しい関係が生まれているようだ。

「なんだか話についていけないよ」

「安心しろヒメちゃん。俺もだ」

 話が通じ合わない者同士、妙な仲間意識が生まれた。

「もうそろそろ花火だな」

「そうですね・・・」

 となりにいつの間に座ったのかワン太が答える。

 本当に楽しみにしているのか先ほどから落ちつかない。こいつ、見た目は完全に清楚なお嬢様なのに気持ちが子供みたいだな。今に始まったわけじゃないけれど、しかしまぁ、そんなところも親しみやすかったりするのでいいところでもある。

 なんだかんだと俺の生活はこいつを中心に回っているような気がする。

 ワン太の突拍子もない自己紹介からの友達になってください騒動がなければヒメちゃんとここまで仲良くならなかったかもしれない。

 ワン太が俺の背中を押して助けてくれなければ空人と知り合うことすらなかったかもしれない。

 ワン太が神崎さんの前で特殊な力を使わなかったら俺と友達になることがなかったかもしれない。

 シキブさんやバズーカちゃんはもちろん。

 猫ちゃんや大家さんはどうだろうか。こんな感じに話せてはいなかったかもしれないな。

「・・・・・」

 なんだかんだで俺は宇宙人と共存していたのかもしれない。

 最初はやめてくれ、俺を巻き込まないでくれと思ってはいたが、それが体を張って追い出さない方向にい進めようとしている。自分の意見がぶれまくり。だけど不思議と後悔はない。

 これでいいとさえ思う。ワン太の自由が縛られることこそおかしい。できれば人前で不思議な力を使うのは控えてほしいが。

 こいつがいなかったら、なんて最初は想像していたりしたけれど、今ではもう想像できない。こいつがいないことなんてありえないとさえ言える。

 侵略をせずにだらだらと毎日何もせずに過ごしていく。そんな人生も間違ってはいないはずだ。それにグリーン星は武力解決が苦手みたいだし、まさに友好的な理想の宇宙人だろう。

 ワン太に前、大学をどうするのか?それとも就職?それとも・・・帰るのか?というニュアンスを含んだ質問をしたことがある。あれは結局俺がワン太がいつまでここにいるのか確認したかっただけなのだろう。

 いつまでもいてほしいから答えを聞くのが怖かった。

 いつまでもいてほしいから答えを聞きたかった。

 そんな矛盾した気持ちを抱えて。

「・・・・・・・」

 伝えよう、ありがとう、と。俺はお前のおかげで何か変えれたのかもしれない。いや、変えれたんじゃなくて俺が変わったんだ。

 そうじゃなきゃシキブさんの不幸の指輪の試練なんて耐えられなかっただろうし、ワン太をトラックから守ろうなんて思わなかったかもしれない。

 そうしてだらだらと後悔して、ああすればよかったと悩んで。

 それは今でも変わっていない。後悔はする。けれどそれで悩むこともまた必要なことなのだと思えるようになった。

「・・・・・・・」

 みんなを見る。それぞれ好きなように談笑しているようだ。

 この心地いい空間も全てワン太がいたからこそ、なのだな。俺はこれからワン太に少しずつ恩返しをしたい。だからそれまではどうか地球にいてほしかった。

「・・・・・はは」

 思わず笑ってしまう。

 なんという恥ずかしい考え。宇宙人依存。

 これではまるで俺が・・・・・。

 俺が。




『まるで宇宙人なしでは生きれないようではないか』





 ドクン

 心臓が大きく跳ねる。

 体が震える。寒い。けれどこれは風邪じゃない。悪寒。恐怖から、悪意からくる寒気。

 今、俺の中で何かがしゃべった。何かを言った。俺じゃない。あれは俺じゃない。

 じゃあ、誰だ。誰が俺の中でしゃべっている。怖い。恐い。恐い。怖い。

「・・・・・ッ!」

 頭に鋭い痛みが走る。目の前が揺らぐ。なんだこれは・・・酔っているように気持ちが悪い。景色が歪む。頭が痛い。吐き気がする。

 風景が変わる。先ほどまでいたグラウンドではない。機械的なものがあたりにある。どこだ。俺はさっきまで学校祭を楽しんでいたはずなのだが。

 目をこらすとその機械の近くには人がいた。長い髪。女の人だろうか。ここでなぜかホラー映画を想像したのは俺にまだ余裕があるからなのか。

『これは必要なこと』

 語りかけてくる。これは俺に話しているのか。もう分からない。

『これは必要なこと。もう少し、我慢をしてください』

 我慢。何をだ。何を我慢すればいい。話がつかめない。テレビの中の人物と話しているように一方的。口が動かない。手も動かせない。なんなんだ、ここは。

『やめてくれぇえええええええええええええ!』

『・・・・・・・・・』

『・・・・・』

『抉れた山。そこで全ては終わります』

 またあの叫び声。そして最後には・・・。

「え・・・ぐれた山・・・」

 はっ!と気付くとそこは先ほどまでいたグラウンドだった。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

 汗が止まらない。

 頭痛や吐き気はもうないが、疲れがひどい。このまま寝てしまいたい。

「ど、どうしたんですか、ノゾム」

「大丈夫だ・・・なんでもない」

 一応笑ってみたのだがうまく笑えたのかどうかは分からない。そしてそれから数秒後。

 空には大きな花火が上がっていた。

「・・・・・・」

 とりあえず荒げた息はおさまった。

 なんだったんだ、今のは。夢、なのか?よく分からない。漫画の見すぎだろうか。

 でもあの疲れはなんなんだ。そして頭に残る1つの単語。

「抉れた山・・・・・」

 みんな花火を見ている。

 確かに花火は綺麗だが、俺はそれどころではなかった。抉れた山に何かがある、ということなのか。

「ノゾム?」

「あ、ううん、なんでもないって」

 俺も空を見上げる。

 そこには綺麗な花火がたくさん上がっていて、夏の始まりを感じさせた。

 そんな少しばかり浮かれ気分だった俺はこの時、バズーカちゃんの墜落により抉れた部分が大きくなった抉れた山がすでに最初のように抉れた部分が元の大きさに戻っていることを知らなかった。







「抉れた山」

 ある少女が地球へと到着した。比喩ではない、宇宙からやってきた少女だ。

 少女は抉れた部分を軽く触る。そして何かの確証を得る。

「・・・・・・」

 全てを知る者。

 グリーン星の知恵の塊である彼女は『全てを知る者ノウン』と呼ばれていた。

 

サブタイトルは花火のことです。始まるは夏が始まるということで。解説が必要なサブタイトル・・・い、いいですよね。


今回で学校祭編は終わりです。次回からまた新しい章となります。今までと違って最後の最後に少し不思議感のあるような感じになりました。


ではまた次回。

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