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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第3章 スクールフェスティバルタイフーン夏13号
24/69

第23日 一生懸命ぶつける宇宙人。

「姫様、これはなんなのですか」

「・・・・・・」

 背の高いほうの宇宙人ハルンが黙る。バズーカはそれが何か言えないほど凄まじいことなのではないか、と思っていた自分の考えを肯定するものだとみなした。

「ハノがまだ中学生だからと言ってなめないでください。確かにグリーン星ではいたずらばかりして怒られていましたが、あの頃とは違います」

 あの頃、といっても3カ月程度しか経っていないのだがバズーカはその3カ月で大きく変わったと自分で思っていた。姫様がいなくなったと報道され、グリーン星は動揺する、と思っていたのだが現実は違った。予想以上に静かだったのだ。

 恐怖の除外。それがここまで浸透しているとは思わなかった。中学生であるバズーカはまだその恐怖の除外についてよく分からない。だからこそ、なぜ姫様がいなくなったのに国が動揺しないのかというのが不思議だった。とても自分の故郷とは思えなかった。どこかの異星のようだった。

 恐怖を何よりも避ける我が国は姫を追って誰かを地球という危険『かもしれない』星へ送るのさえも拒んだのだ。自分が死ぬのが怖い。誰かが死ぬのが怖い。

 送った人間が死ぬのならば姫1人が死んだ方がいいという風潮。それ自体が恐怖であった。

 何よりも恐ろしいのはその方針を決めているのが王様と女王様。ハルンの父親と母親なのだ。

「・・・・・・」

 それを恐らくこの姫は知っていると考えていた。そしていつまでたっても迎えにいかない星に痺れを切らしたシキブ、それにバズーカが止める声も聞かずに迎えに来た。

 恐らく星に帰ったらよく無事だった、と言われるよりもなぜそんなことをしたのかと怒られるに違いない。恐怖を除外したグリーン星には刑というものがないのだが、この地球ならそれ相応の罰を受けるに値するぐらいのことを今、シキブとバズーカはしている。だからこそ帰りたくてもなかなか帰れないのである。でも、不思議なのは、

「姫様はなんでこの地球に来たのですか?それもハノには不思議でしょうがありません」

「・・・・・・」

「なんで黙ってるんですか。何がしたいのですか、姫様は」

「・・・・・・確かに変わりましたね。バズーカ。あなたはここまで丁寧な言葉を使う人ではなかった。軍人らしく声を荒げ、いたずらをしては人を困らせるような手のかかる子でした」

「・・・・・」

 今度はバズーカがハルンの話を聞くために黙る。

「私からも聞きたいことがあります。その指輪をどこで拾ったんですか?」

「秘密です」

 指輪から出ている映像には残り10秒と書かれていた。そこまで時間が経ったらしい。

「これはなんなのですか?あなたの目的はなんなのですか?ハノが聞きたいのはこの2つです。使命できたと言いましたがハノは独断で自分で自分に使命を与えてここまで来たのです」

「その答えを聞くことがあなたの使命ですか?」

「もちろんです、そのためには武力で話させることもやぶさかではありません」

 バズーカは構える。軍人。中学生にして女の子にしてトップレベルの実力を持っているバズーカはそれこそ男にでも負けない。体術に至ってはどんなやつにも負けないとさえ思っている。たとえ、体術を教えてくれた先輩でも、だ。

「バズーカ、私は話さないんじゃなくて話せないんです」

「そういうのももう聞き飽きました。そんな言い訳はいらないのでさっさと話してください」

「バズーカ」

「あなたは!・・・・・・あなたは・・・あの星の姫なんですよ・・・なのにこんなところで何やってるんですか・・・・・」

 バズーカはハルンのことが好きだった。もちろん恋愛的な意味ではない。尊敬、そして悪ガキである自分にも構ってくれる優しさ、それに友人のような存在として好きだったのだ。

 理由はあの国で恐怖の除外の影響が薄かったから。自分の意思を持っていておかしいと思うことは王様や女王様相手でも退かずに挑んでいった。その雄姿は軍人のようだった。

 だからこそこんなところで何をしているのかと、そう思ってしまう。あの国にはあなたのような人が必要だと考えていた。あなたがいないと本当にダメになってしまう。

「それでもあなたは星に帰らないんですか?ハノを納得させるような理由も言えないのですか」

「言えません。言わないんではなく言えない。それにあなたを納得させてどうするのですか?その必要もあるとは思えません」

 そのセリフにハノは何かが切れる音がした。この人をなんとしてでも連れて帰る。それかここにいる理由を、この指輪がなんなのかを聞き出す。そのためなら・・・手段は選ばない。

 あたり一面から人がいなくなる。しかし場所は学校のままだ。学校の状態を保ったまま空間を切り取り別の次元に持っていったのだ。

 簡潔に言えば危なくないように人を消し、学校が壊れないように学校に似た空間に移動した、ということなのである。

「バズーカ・・・」

「手段は選びません。姫様に手を上げたくはなかったのですが、しょうがないです」

 バズーカはその名の通りバズーカを取り出す。

 するとたんっと地面を足でたたくとその場からバズーカが消える。テレポートだ。しかし軍人のテレポートの限界はほとんどないに等しい。ハルンよりも断然有利だ。

「こういうのは後ろに回り込むのが普通なのですけれどここにしてみました」

 天井。バズーカは天井に立っていたのだ。

「姫様、あなたをぶっ壊します」







「あれ?」

 あたしは校舎を出て外の出店の場所を見に来ていた。しかしハノちゃんはいない。どこに逃げたのだろうかと思っていたのだが・・・なんだか学校の方から変な感じがした。なんとも言えないあの感じ。校舎にいるのか・・・と大体予想をつける。

「でも・・・・・」

 あっちこっちで変な感じがする。どれがハノちゃんなんだ・・・・・?

「とりあえず行ってみますか・・・」

 あたしは校舎へと走って行った。







「んー?」

 いない。どこにもいない。あれからひたすらに探し続けているのにまったく見つからない。僕は次はどこを探そうかな、と考えていた。

「・・・・・」

 そういえばここまで校舎をあちこち探しているのに一切、他の人と会わないのはなぜだろう。空人くんや希くん、神崎さんにハルンさんだけではなく一般客にすら会わない。すれ違うことすらもない。

 ・・・・・・・?

 あ、あれ?

「なんでこんなに無人なの・・・?」

 そういえばそうだ。学校祭。一般の人もいるはずなのにあたりには誰もいない。それがおかしいと探すことに夢中で気付かなかった・・・。普段から僕は鈍くさい。まさかここまでとは自分でも思わなかったけれど・・・・・。

「宇宙人・・・ってことだよね」

 夢じゃないのならこれはたぶん人の仕業じゃない。人以外の何か。宇宙人の仕業。普通ならそんなことは信じないでまだこれは夢だという方が信憑性があるけれど・・・僕には、僕たちにはその宇宙人に心当たりがある。

「でも・・・どうすればいいんだろう、これ・・・」

 僕は途方に暮れていた。







「どこだ・・・?」

 なんとか階段ループから脱した俺はひたすらバズーカちゃんを探していた。それはもういろいろなところを。というか女子トイレとかに逃げられたら俺にはもう手出しできないんだよな・・・女子に任せよう。恐らくワン太とか神埼さんが探しているだろう。

「ん?」

 手がうずく。

 これは宇宙人の力を借りた手・・・釣り針が何かに反応している?ってことは情報改ざん系の何かが近くで起こっているということか?

「ってことはこれを頼りにすれば」

 まわりの人からは見えないはずだ。俺は少し釣り針を出す。そして予想通りダウンジングマシンのように釣り針がある一定の方向を向く。

「行くか・・・」

 一応みんなに連絡を入れておく。とりあえずまた場所が見つかったら連絡しておこう。







「バズーカ・・・」

「無駄です」

 バズーカがバズーカから放ったのはミサイル。もちろん殺傷するためのものではない。相手の宇宙人としての力を一時的に失わせる電磁波を出すものだ。

 しかしハルンはそれに釣り針を引っ掛け、腕を振ることにより軌道を変える。しかしその時にはすでにバズーカの姿はなかった。

 ハルンはすぐに後ろを振り向く。

 するとそれと同時に眉間に拳銃の感触。バズーカから出たマジックハンドが握るそれは本物ではないがダメージは与えられる。もともと殺す気はない。ダメージを与えて話させる。しかしどれも宇宙人対応武器なので白木希には使えない、というのが今でも引っかかっている。

「動かないでください」

「・・・・・・」

「理由を教えてくれる気になりましたか?」

「・・・・・・話せません」

 躊躇せずに引き金を引くが、ハルンの姿が消えた。テレポートだ。しかし、

「あなたのテレポートは未完成。1日に1度しか使えません」

 バズーカのこれまでの行動は全てテレポートを使わせるためのものだった。これでもう逃げ場はない。あとはどんなに痛めつけようとも逃げることはできない。

 バズーカはあたりを見てそしてハルンを見つける。

「食らえ」

 バズーカはまた宇宙人無力化ミサイルを放つ。しかしハルンは釣り針を出そうとはしなかった。なのにミサイルはハルンに当たる前に何かに跳ね返りそしてバズーカに戻っていく。

 それをテレポートでかわしたバズーカは驚愕していた。

「な、なんで・・・跳ね返って・・・」

「これを張り巡らせておきました」

 ハルンが見せたのは見えない糸。透明な鋼糸スケルトン・ストリングだった。しかしもちろんそれはバズーカに見えていない。だがバズーカは理解した。何が起こったのかを即座に。

 釣り糸の方をゴムのように構成しなおして跳ね返せるようにしたのだろう。銃弾ではなくミサイルだからこそ有効な手段。

「バズーカ、私を信じてください」

「なら話してくれますか?」

「それはできません・・・」

「なら・・・」

 攻撃をやめない!バズーカはそう呟いて再びテレポートする。そして今度こそハルンの背後に立つが・・・地面に足がついた瞬間何かがひっかかる感覚が。足に何かが。いや、またもやバズーカは瞬時に理解した。

 これは先ほどの釣り糸。

「私の前だけではありません。この空間全てに糸を張り巡らしておきました」

 そして糸に引っかかると、他の糸がいろいろなところに引っかかり動けなくなる。身動きがとれない。恐らくそれでも動いたらもっと絡まり立っていることすらできなくなる。

「バズーカ、私は今でもあの星は間違っていると思います」

「なら、今すぐに戻ってください!あの星にはあなたが必要です。人の命を質より量で考える、自分の家族も疎かにするあの星にはあなたが!」

 家族の命は見知らぬ人の命よりも大事。同じく友達、それに少し知っている人でも知らない人よりは大事だというのが不平等ではあるが普通。

 しかしグリーン星は違う。質よりも量。2人死ぬより1人死んだ方がいい。

「不平等ではあるかもしれませんが、あの星は気持ち悪いんです。それを変えれるのはあなただ!」

「バズーカ、今は何も話せませんが、これはいずれあの星を変えるためにも必要なことなんです」

 ハルンは静かに語りだす。駄々をこねている子供をあやすように。

「だからそれを納得できるように話してください!」

「その指輪」

 ハルンはバズーカの持っている指輪を指さす。

「それはあなたに預けます。それを頼りに自分で見つけてみてください、私が何をしているのか。私自身が今、ここで話すことはできません」

「・・・・・」

「バズーカ、これは勝負です」

「勝負?」

 ぴくぴくとバズーカの耳が動く。

「えぇ、私があなたにバレる前に目的を達成するか、あなたが先にそれを解明するか」

「勝負・・・」

 ハルンは姫、というだけあって人を動かす才能は高い。というよりこの場合はバズーカが簡単に挑発にのってしまうような人物という点ももちろんあるが。

 軍人、特にまだ子供であるバズーカは勝負ごとが大好きで勝つことも好きだった。それを利用した姑息な作戦。

 白木希を倒せなくて悔しがったことも、こうして今、ハルンに勝負を挑んだことからもわかるが、とりあえずバズーカには何かを決めるとき勝負、ということしか頭にない。

「それを解明できたらあなたの勝ちです」

「勝ち・・・」

 ぴくぴくとまた耳が動く。

「勝ち・・・姫様、分かりました。勝負にのる!ハノが勝つよ、絶対に」

「えぇ、楽しみにしてます」

 空間が砕ける前にハルンは小さく何かを呟いた。

「それが解明できるころにはきっともう・・・・・・」

 その声は小さすぎてバズーカには届かなかった。








 俺の目の前から突如としてワン太とバズーカちゃんが飛び出してきた。今更なんで?とは聞くまい。宇宙人は本当になんでもありなのだ。

「なんというか、お疲れさん」

「はい、ノゾムもお疲れです。これでみんなでお祭り楽しめますね!」

 いや、待て待て。説明をしろよ。

「結局バズーカちゃんが用あったのってワン太だったんだろ?何の用だったんだ?」

「うん、それがね、ハノは・・・・・むぐっ」

「はははははーなんでしょうねーなんか祭りを一緒に回りたいらしくて、でも恥ずかしくて言いだせなかったみたいなんですよねー」

「なぜお前が答える・・・」

 結局無事ならいいんだが。みんなに連絡を入れておこう。待ち合わせも決めてこれから本当のお祭りだ。バズーカちゃんもいるみたいだし。

「バズーカちゃんもそんな照れなくてよかったのに」

「いえいえ、ハノは照れてませんよ。それに・・・」

「それに?」

 バズーカちゃんはまた俺にバズーカを向けてマジックハンドを飛び出させる。手に持っているのは拳銃。またかよ・・・。

「あなたとの決着も着いてないし、ね、ノゾムくん」

「なんでお前急にそんな馴れ馴れしいんだよ・・・」

 いつそんなに仲良くなったんだ、俺達。それとさりげなく敬語も外れている。

「まぁ、でもこういう方法じゃなくて別の方法で勝負をつけましょう」

 そう言うと笑いながらバズーカをしまった。とても機嫌がよさそう。

「ん?」

 俺はバズーカちゃんの手、それもその手についている、指にはめている指輪。それを見た。なんだかどこかで見たことあるような気が・・・。

「不幸の指輪か?」

「はい?」

 バズーカちゃんが首をかしげる。

 もとは軍人育成のためだとか言ってたし、もしかしたらああやって宝石がなくなった指輪をつけることが軍人として一人前の証とかだったりするのかもしれない。

 俺は尋ねるほどのことでもない、と思い、みんなとの合流場所へと急いだ。







 合流場所に行くとみんなげっそりとしていた。

「ああ・・・あの教師の言葉が頭から離れない・・・なんだこれ、こんなのきゃりーぱみゅ〇みゅの曲を聴いたとき以来だ・・・・・」

「なんか・・・校舎の中に入れなかったんだけど・・・あー、疲れた・・・」

「人がみんな急にいなくなってね、それで僕びっくりしたんだけど、少ししたらまた人が戻ってて、それでさらにびっくりして・・・」

 なんというかみんな大混乱であった。



とりあえず宇宙人いるし、不思議不思議と考えた結果でした。もっと不思議に特化した話なども今後入れていきたいと思います。


今回は和解話でした。次からはしばらく日常ばかりではないかなぁと。


ではまた次回。

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