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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第3章 スクールフェスティバルタイフーン夏13号
23/69

第22日 何かを企む宇宙人。

 学校祭2日目。昨日はうちのクラスのカフェが大盛り上がりした(ほとんどワン太とヒメちゃんのおかげだ)ので今日もそのようになるのか・・・と思うと少しだけげんなりしてしまう。

 しかしこれは喜ぶべきところだろう。俺は気を引き締めて登校し、準備を始める。

「あー、白木くん」

「ん?」

 クラスの女子の1人、大光おおみつさんに話しかけられ、後ろを振り向く。

「今日は午後2時ぐらいまでは白木くんと姫岡くん、それにハルンさんも休みだよ」

「あれ?そうだったっけ?」

 俺は自分のシフト表を確認して確かに午前中は暇なんだなぁと分かった。やることがなくなったら急に寂しくなるな・・・。

「ヒメちゃん、ワン太、一緒に回るか」

「ちょっと待った!俺も暇だ」

 2人を誘おうとするとそこには空人の姿が。

「昨日、俺だけをのけものにしやがって」

「いや、午後からは一緒だったじゃん」

 空人は午前中こそ暇なものの、午後からは俺達と一緒に働いていたはずだが。

「今日は働くんじゃなくてみんなと遊びたいんだ」

「もちろん、いいけどさ・・・お前、昨日午前中なにしてたわけ?」

 素朴な疑問。どうやって時間を潰していたのかが気になったのだ。

「ん?シキブさんと祭回ってた」

「なんで!?」

 急展開すぎた。そこまで仲よかったっけ・・・?というか来てたのかよ、あの人。シキブさんが来ているなら自然と大家さんも来ていそうな感じだったんだがなぁ。みんな見ていないらしく、恐らくシキブさん1人で来たのだろう。

「あの人、祭をどう楽しんだらいいのかわかんないって言っててさ」

「教育係じゃないのか・・・?」

 もしかしたら祭、というものは知っていても祭の楽しみ方、となると別なのかもしれない。それならば確かに当日いきなり来て戸惑うのも分かる。

「じゃあ、大家さんはいつ来るんだ・・・?」

 俺が少しそのことについて考えていると空人が俺に質問してきた。

「午前中もかなり忙しかったんだろ、昨日。なんかあったりとかしたか?アクシデントとか」

「あぁ、俺がヒメちゃんにダイブした」

「な、なんでそれ言っちゃうの!?」

 ヒメちゃんが目に涙を浮かべてぷくーっと頬をふくらませていた。怒った顔もまた可愛い。

「いや、ごめん、思わず・・・」

「うぅー・・・」

 怒りよりも恥ずかしさが先にきてしまったのかそっぽを向いてしまう。許してくれたのかその数秒後には普通にいつも通りになっていた。・・・・・・怒るとは思わなかった・・・マジですまん。

 俺はヒメちゃんにもう1度謝ってから、みんなでどこを回るか地図(生徒が作ったもの)を広げて計画を立てる。

「僕は食べ物食べたいな」

 ヒメちゃんが幸せそうな顔をしている。なんてこった・・・これはみんなで急いでヒメちゃんに食べ物を与えないと。なんというかワン太よりもヒメちゃんの方が姫様っぽいな・・・今更だが。

「俺も食い物は賛成。あとはなんでもいい」

「お前・・・加わりたいとかって言っておいて適当だな・・・」

 空人の自由っぷりに呆れながら地図をのぞく。

「ワン太はどこに行きたい?」

「私もどこでもいいですね。どこに行っても初めてだらけでしょうし」

 こちらは適当、というわけではなくどれも全力で楽しみというような顔をしていた。同じセリフなのにどうしてこうまで空人と違うのか。

「あ、ちょっと待って」

 また声がかかる。今度は神崎阿国さん。神崎さんだ。

「あたしも混ぜて。ハルンさんと回りたかったんだ」

「俺らはどうでもいいのかよ・・・」

 空人がげんなりとする。

「あ、ああああんたもいたんだ」

 神崎さんが完全に動揺していた。あんたって空人のことだよな・・・。あって何回言ったんだ今。

「あの、その」

「ん?」

 神崎さんが空人の近くに来た。なぜだかみんなも静かになる。おいおい・・・学校祭だからってまさかいきなりそういう展開なのか・・・?

「昨日はありがと。それだけ」

 神崎さんはいつものように笑うとまたワン太の近くに戻っていった。あれ?普通だ。

「どれからいきます?私はもう楽しみで楽しみで」

 今にでも走り出しそうな素振り。こいつ元気いいな。

「んーとだな、じゃあ近いところから順番に回っていくか」

 その俺の言葉にみんなも賛成。

 さぁ、これから学校祭が始まるぞーと気合を入れて一歩踏み出した時、誰かにぶつかってしまった。

「あ、すいません」

 俺の位置から顔は見えない。これは子供とかかな・・・。だとしたら本当に申し訳ない。俺は次に下を見てちゃんと謝ろうとするが・・・。

「いえ、大丈夫で・・・・・す・・・」

 相手も相手で止まる。

 そこにいたのは長らくいなくなっていたバズーカちゃんだった。

「な!バズーカちゃん!」

「し、しまった!ハノ一生の不覚!」

 そう言うとだだだだだーっとどこかへ走り去ってしまう。くそ、背が低いからちょこまかと人の間を縫っている。ほんとうに中学生か、あれ。

「ワン太!バズーカちゃんだ!」

「え?」

 ワン太は隣のクラスの出し物であるたこ焼きを買っていた。のんきすぎるだろ。

「バズーカちゃんがいた。しかも俺と会った瞬間に逃げ出したんだ。あいつ何か隠してるぞ」

「あー・・・あつっ・・・マジですか・・・はふっ・・・それは急がないとでふね・・・」

「・・・・」

 緊張感が全くない。というかたこ焼き食うな。

「神崎さん!」

 俺は昔バズーカちゃんと住んでいた神崎さんを呼ぶ。どうやら1人で街を探してくれたこともあるらしく、きっと今でも会いたいに違いない。なぜか女子から人気高いからなあのちびっこ。

「どうしたの?」

 神崎さんの手には水風船ヨーヨー・・・なぜ今それを・・・。

「はい、白木くんにもあげる。友達が店員でサービスしてもらっちゃった」

「ありがとう!だけど今はそれどころじゃ・・・」

 次に俺が呼んだのは空人。

「空人、バズーカちゃんが!」

「待て・・・俺はバズーカよりも銃がいいな、こんな感じの」

 そう言いながら、銃を持ち、的を狙う空人の姿が別の教室の中に。

「ていっ!」

 スパァン!という音が響き、景品が落ちる。その景品はペロペロキャンディーみたいだ。

「いやぁ、まさか一発とはね。うん、俺ガンマンの才能ありかも」

 俺はヒメちゃんこそ!と思い、ヒメちゃんを呼ぶ。

「ヒメちゃん!」

「お嬢ちゃん、可愛いね。はい、サービス」

「・・・・・わ、わーい」

 ヒメちゃんはお好み焼き屋で普通より多めにサービスしてもらったお好み焼きを買っていた。相手はどうやら後輩らしく、思いっきりヒメちゃんを中学生ぐらい、しかも女の子だと勘違いしていた。

 後輩じゃ、ヒメちゃんのこと初見だろうし、普通に間違えるよな、服装も制服じゃないし。

 学校祭は制服ではなく、クラスでつくったTシャツに下は自由という方式なので服装は男っぽいというよりボーイッシュと見られてしまうのだろう。

 ヒメちゃんは下に半ズボンをはいていた。なんというか・・・似合う。

「ヒメちゃんもう否定もめんどくさくなったのか・・・」

「そんなことないけど・・・サービスしてもらったし」

 にこにこしながら俺にお好み焼きを見せてくれるヒメちゃん。うーんよかったねーよしよし、と頭を撫でたくなったがそれどころではない。しかし俺は頭を撫でた。

「というかお前ら自由すぎるだろ!みんなで近いところから順番にって言ってたじゃないか!」

「でもー私の近くはーたこ焼き屋でしたしぃー」

「俺の近くは射的屋でしたぁー」

 お前ら・・・小学生みたいな屁理屈こいてんじゃねぇよ・・・。

「というかバズーカちゃんがいたんだ!はやく追わないと・・・」

「大丈夫ですよ」

 ワン太がやけに自身満々に言う。しかしたこ焼きを食べ続けながら。

「わざわざここに来た、ということは私たちの誰かに会いに来たということでしょう。しかもノゾムの顔を見て逃げ出した、ということは・・・・・」

「希の顔が見るに堪えない顔だったと」

「おい」

「それはどうか分かりませんが、少なくとも希に会いに来たわけじゃないということ。しかも複数相手じゃなくて1対1を望んでいる可能性が高いです」

 こいつたこ焼き買いながらそこまで考えていたのか・・・普通に買わずにその場で追えばこんなことにはそもそもならなかったわけだが。

「ならば確実にこの学校の敷地内から出ることはないと思います」

「だとしても・・・」

 追うのにはかなり時間がかかりそうだ。うちの学校は4階建てであり、逃げる者を追うのには広すぎる。自分だけじゃなく相手も移動しているのだし。それにこの人だかり。紛れ込まれたら見つけるのは容易ではない。

「この中の誰かを目当てにしているのならまた接触をはかってくると思います」

「ってことは個人個人で追えってことかしら?」

 神崎さんがそこで質問をする。

「それが一番ですね。見つけ次第、連絡というのが一番だと思います」

「結局仕事かよー、でもま、鬼ごっこは得意だ」

 空人は目を輝かせている。こういう遊び好きそうだもんな。

「僕も頑張るよ」

「んじゃ、俺はヒメちゃんと行動するわ」

「話聞いてました!?個人です、個人!」

 却下されてしまったので仕方なく、1人1人でバラけることにした。

「はやく終わらせてみんなで回ろう」

『うん!』

 みんなでうなずいてそれぞれ違う方向へと走りだした。走り出す寸前に神崎さんが「ただ学校祭をあたし達全員から隠れる形で楽しみたい、って感じだったらもう学校にいなくない?」と言っていたがそれに反応するものは誰もいなかった。

 というかそれは正直考えたくない。







 それから10秒後。俺は階段を使って最上階である4階へ行こうとしたのだが・・・。

「どういうことだよ、これ・・・」

 俺は階段永遠地獄に入っていた。上がっても上がっても4階には着かない。ループ。繰り返し。これは恐らくバズーカちゃんのものだろう。

「姑息な手段だな・・・」

 というかこれどうやって脱出すればいいんだ・・・?前にワン太が、それに俺がどうやってこういう不思議に対応していたのかを思い出す。

「不思議には不思議・・・か」

 不思議には不思議。幸い俺にはワン太から借りている宇宙人の力が少しある。ほんとうにしょぼい力ではあるが、なんとかできるかもしれない。

 ワン太が消えたバズーカちゃんを引っ張り出したのもこの能力なのだから。

 さぁ、人がまわりにいないこの異常な空間で遠慮することなんかない。俺はあの名前を言う。

透明な鋼糸スケルトン・ストリング!」

 見えない釣り針と釣り糸が俺の手、主に中指から出る。実際は俺だけにはその軌跡が見える。まわりから見れば何も見えないスケルトン。

 この空間の矛盾に引っかかる感触がする。というかさりげなく水風船ヨーヨー、邪魔だ・・・。

「うぉおおお!」

 思いっきり引っ張るとまるで紙のようにバリバリと空間が破れていつも通りの階段に戻っていた。もちろん人もいる。なんとかなったみたい。

「だが、今のではっきりしたな・・・バズーカちゃんが会いたいのは俺以外の誰かだ」

 俺は4階へと急ぐ。





「いねぇ・・・」

 あちこち探し回ったがいない。希はどうやらそのバズーカちゃんとやらに会いたいらしいのだが。正直バズーカちゃん、うろ覚えなんだよなぁ。神崎さんの家に泊まっていたことは分かるんだけど。

「おいこら、七実!また悪さか!」

「あ、いえ、今回は違いますよ」

 走りながら先生に注意される。俺の学校での立ち位置はいまだにこんな感じだ。何かしていれば=悪さ。あれからもちろん俺は何もしていない。しかしイメージ、というか行動というものはかなり人間の頭に残るもののようだ。

「マジで金髪やめよっかな・・・」

 せめて茶髪ぐらいがいいかもしれない。しかし金髪じゃないとなんか俺!って感じがしないんだよな。

 それに恐らく髪色を元に戻してもまわりは変わらない。髪色を戻したところで何を企んでるんだって言われて終わりだ。

 それならば意味はない。反抗期らしく最後まで反抗していよう。

「おいこら、七実!また悪さか!」

「え?いや、だから今回は違いますって」

 しつこい先生だ。俺は引き続き走る。

「おいこら、七実!また悪さか!」

「いやだから!人探しですって!」

 わざわざ追ってきて言うことじゃねぇだろ。どんだけ心配なんだよ。

「おいこら、七実!また悪さか!」

「どんだけ言うんですか!俺は・・・・・・」

 とそこまで言ってから俺はあることに気付く。

 俺、全然前に進んでない。走りまくっているのに全然進まないし、疲れない。何度もこの注意してくる先生を通り過ぎるのだ。

 時間があるところまで巻き戻しされている。そこから再生し、また巻き戻しの繰り返し。なんだかこの感覚は久しぶりのような気がした。そうだ、ハルンさんが見せたあの綺麗なドレス、宇宙人らしさ。それに似すぎている。

「ってことはやっぱり宇宙人絡みなのな・・・」

 俺は今また宇宙人ってマジでいるんだなぁと思いながらこの状況の解決策を考えていた。







「やっと1人になってくださいましたか、姫様」

「はい、で何のようですか、バズーカ」

 みんなが走り去った後、そこに居続けた宇宙人のもとに宇宙人が来た。

「もう分かっているのでしょう、姫様。そのためにわざわざみんなをだましたんですよね。ハノを探してくれって、誰かに会いたがっているって。あれは全部姫様が自然とあやしまれずに1人になれる嘘、のはずです。あなたはハノがあなたに会いたがっていることを知っていた。しかもみんなに聞かれたくない話をしたがっていることも知っていた。そうでしょう?」

「いいから要件を言ってください。みんなあなたを探しているんですから」

「あくまでも嘘ではない、とおっしゃりますか。では手短にスパーンと言わせてもらいます」

 背の低い宇宙人が真剣な顔になる。

「これについて教えてくれませんか?」

 背の低い、バズーカという宇宙人が持っていたのは指輪。それはつい先日まで黒い宝石がはめてあった不幸の指輪。今はただの指輪になってしまっている・・・はずだった。

 その指輪から浮かんでいる映像。そこに映っているのは・・・。

『続けますか?』

『YES』『NO』

『残り 45 秒でYESとみなします』

昨日は投稿できませんでした。というか今まで毎日投稿できてた方がイレギュラーと言いわけしておきます・・・すみませんでした。


話は学校祭ですね。学校祭なのになんだか祭じゃない・・・?鬼ごっこ・・・?今回はそういう話です。


ではまた次回。

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