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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第3章 スクールフェスティバルタイフーン夏13号
21/69

第20日 とても忙しい宇宙人。

 学校祭。みんなが浮かれて浮かれて浮かれまくる行事だ。

 外は屋台やらが門から連なり、学校祭にしてはすごくクオリティの高いものとなっている。

 空は青く、雲1つない。快晴ではあるが気温が高い。

 現在、我がクラスはカフェ開店の準備中である。そもそも学校祭は3日間で行われ、クラスの教室での出し物は3日間通して開店し、演劇などのステージはクラスごとに日と時間が割り当てられる。そして最終日の目玉がミスコンだ。その後の閉会式のようなもので順位発表。そして花火、という流れだ。

 そして開店まであと30分。みんなの忙しさはピーク。

「あーとうとう始まったなぁ・・・」

 ちなみにそんな俺の格好といえば学校祭特有のクラスでそろえるTシャツ、クラTではなく、それを脱いでウェイターの格好をしていた。これは当然だ、俺は料理ができないからな。

 ちなみに空人と神埼さんは今、料理を作る準備をしている。空人は金髪が恐いから、神崎さんは人前には出たくないとのことで料理を優先した。

「お、ワン太」

「ふっふっふーどうですこれ?」

 ワン太が着ていたのはメイド服である。胸が強調されまくっていて視線の位置が決まらない。見たい、でも見たら気持ち悪がられる。これはすごい困る。

 膝上ソックスにガーターベルト、頭には白いレースみたいなひらひら。さらにはボリューミィなスカートが意外と短くて見えそうで見えない。

「に、似合うなー」

「どこ見て言ってるんですか・・・」

 結局気付かれていた。本当に誤魔化すことは苦手だ。

「ちょっと料理部隊見にいってきますね、ぱちん」

「ウィンクするなら擬音を口に出さない方がいいぞ」

 しかも両目つぶってるし。

 てってってーと行ってしまい俺が暇になる。何かを手伝おうとすると「やめて!服が汚れる!」というように怒られてしまい、暇なのであった。

「あー・・・なんかはぶられているみたいだ・・・」

 疎外感。こんなに悲しいことはない。

「え、えー・・・本当にこれで出るの・・・?」

 そんな悲しくて泣きそうで孤独な俺が聞いた声はヒメちゃんの声・・・。

 急いで首を動かし、あたりを見る。

「なんかこれ・・・スカート短いよぅ・・・」

 俺の前に泣きそうな顔をしているヒメちゃんがいた。もちろん顔は赤い。なんだこれ。かわいすぎる。

 ヒメちゃんの服もワン太と同じメイド服。頭のひらひらに、膝上のソックス、それにガーターベルト。スカートはふわふわのひらひらボリュームどん!という感じで丈はすごく短い。白い太ももがほぼ見えてしまっている。しかしギリギリで中は見えない。

 さらに言うなれば唇はぷるぷるしていた。恐らくグロスか。俺は必死に唇から目をそらす。理性を失うな、俺・・・俺は紳士、俺は紳士、紳士、紳士・・・。

「あ、希くん」

「・・・・・・・」

 紳士・・・紳士・・・紳士・・・紳士。

「なんかこれ、スカート短いよね」

 紳士・・・仏・・・仏・・・仏・・・。煩悩よ、消えろ・・・。

「ん・・・短すぎだよ。希くん、その・・・中・・・み、見えてないかな?」

「ぶべらば!?」

 結局その場に崩れ落ちる。無理。無理。仏でも無理。

「見えてないけど見たいです」

「え・・・?僕、男だよ・・・」

 いつものようにいつもの突っ込みをしてくるヒメちゃん。普通ならここで終わり、そして次の場面へという流れではあるが今日はいけない。今日丸々1日全てヒメちゃんの描写で終わらせよう。校内まわるときも店のシフトも同じだし。今日は一日中たぶん店番だけどなぁ・・・忙しそう。

「ちょっとちょっとノゾム。ずいぶん私の時と反応が違うじゃないですか」

 怒った顔でワン太がこちらを向いていた。

「私のことももっと描写してもいいですよ」

「あ、ああ、そうさせてもらうよ」

 よし、表面上だけでもこう言えばもう絡んではこないだろう。俺は頭の中でヒメちゃんの描写を始める。と、しかしワン太が引き続き見続けていた。

「・・・・・・」

 しゃあない。俺は服が汚れない程度の手伝いをしようとあたりをうろうろすることにした。







 学校祭が始まった。開演というか開店というか。『スクールフェスティバルタイ(^v^)フーン夏13号』もそれと同時に開店した。

「い、いらっしゃいませー」

 ヒメちゃんが教室の前で頑張っている。可愛い。やはりなんというか尽くすという姿勢がとても似合う人ではあるな。受け身になりがちというかなんというか。

 するとヒメちゃんの近くに男3人ぐらいが集まってきた。

「君かわいいね」

「い、いや・・・あの・・・」

 ダンッ!と音がしたのは俺が床を思いっきり足でたたきつける音。自分の持ち場である料理を運ぶという仕事を全て捨てて俺はヒメちゃんの前まで来ていた。

「何かうちの店員に御用でしょうか?」

 営業スマイル。しかし声はドスをきかせて。

 すると男3人は「男がいたのかよー」と言いながらどこかへ去っていく。ふぅ、回避。

「危なかったな」

「うん、ありがとう」

 「でもなんで僕のことを男だって言わなかったの?」と質問されたが笑って曖昧にする。だってヒメちゃん男じゃないし、と言ったらまた可愛く反応してくれるのだろう。仕事そっちのけになりそうだ、もちろん俺が。










 暇だー。と心の中で思ってみる。俺は初日から実は店のシフトが入っていない。いや、正確に言えば昼飯後から入っているのだが・・・。希も小花くんもシフト・・・1人でやることがない。

 うちのクラス以外のやつはまだ俺のことを怖がっているみたいだしなぁ・・・他のやつと回ることさえもできない。なんだか本当に希や小花くんがいないと何もできない人間みたいだ。情けない。

 校舎を出て門のあたりから連なる本格的な屋台通りを歩いていると。

「ん?」

 そこで屋台の前でたこ焼きを食べている人物を見つけた。どこかで見たことがあるが・・・。似ているだけの人違いかな。

「すんません」

「はい。ってあなたは姫様の友達の」

 やはり合っていたようだ。この人はシキブさん。ハルンさんの先生だったはずである。しかし今日は何かどことなく違うような・・・。

 そうだ、着物を着ていない。あの人のアイデンティティのような着物を着ていなかった。今日は普通のTシャツにパンツルック。地につくほど長かった髪はポニーテールにまとめられている。

 雰囲気が全然違った。いまどきの大学生みたいだ。

「七実っす。てかシキブさん、服いつもと違いますね」

「ええ、着物で行こうとしたのですが、愛ちゃんに止められましてこれを」

 愛ちゃん・・・というと大家さんか。突拍子もないようなことをしてくる人でいろいろと驚かされた思い出があるのだが・・・。意外と普通のことも言うらしい。

「私が目立たなくなるじゃない、とのことです」

「・・・・・」

 思いっきり自分基準だった。確かにインパクトでかいからな着物もふりふりも。

「ハルンさんの様子見に行かなくていいんすか?」

「真っ先に行きました。もちろん。しかし他のところを楽しんで来いと返されまして・・・姫様、なんと立派になって・・・」

「シキブさんってハルンさんに甘いですよね・・・」

 厳しい先生だとハルンさんは言っていた。しかしどう見ても親バカ、もとい、先生バカである。

「・・・・・そういえばいつもの人達はどうしたのですか?」

「いつもの・・・?ああ、みんなですか」

 みんな薄情なことにシフト入ってるんですよーとふざけて泣きマネをして言ってみる。しかし神崎さんも同じく準備をしただけであとは昼までフリーのはずだ。恐らく女子仲間と一緒だろう。

「ふむ・・・では、私と回りますか」

「え・・・・・?」

「嫌ですか?」

「い、いえ、全然全然」

「ではいきましょう」

 どういうことか分からないがなぜかシキブさんと一緒に行くことになってしまった。もちろん美人と一緒に回れることは嬉しいが、なぜかこう、受け止めきれない。どうして俺なんかと一緒に行こうと思ったのだろうか。

「私こういうところに来たことがなくていまいち楽しみ方が分からないのです」

「それでか・・・」

 姫様には楽しんで来いと言われた。でも自分はこのままでは楽しむことができない。姫様が自分のためを思ってくれたのに無駄になってしまう、そういうことだろう。なんという親バカ発想。

「いいですよ、ではまずは何からまわろうか・・・」

 俺は頭の中で日本の祭を最大限楽しむ方法を探し出し、順番を考えて姫様を、ハルンさんを驚かしてやろうと思っていた。この人滅多に笑わないけれど、でも楽しかったと思わせてやる。

「ところでそのTシャツいかしてますね」

「そ、そうですか?これクラスTシャツなんすけど・・・」







「ちょっとノゾム、急いでください!」

 大慌てだ。まさかこんなににぎやかになるとは誰が予想しようか。満席で大忙し。作る方も運ぶ方も汗を流しながら頑張っている。こんな天気が恨めしい。

「最大限急いでるんだよ!」

 実はこのお客さんの原因はワン太とヒメちゃんである。あっという間に広まったのか男女問わずたくさんの人がうちのお店に来ていた。店名はあれなのに。

「えぇ、と次は3番テーブルの人焼きそば3人前」

「はいはーい」

 作り担当である女子に告げて俺は再びテーブルとテーブルの間を進む旅人になる。これは確か5番テーブルのお客様だったような気が・・・。

「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

 ヒメちゃんが疲れていた。すごい人気なので人一倍働いていろいろと運んでいる。少し休ませた方がいいかもしれないな。

 俺は5番テーブルに食べ物を置くとすぐにヒメちゃんのところにかけよる。

「ヒメちゃん少し休んだ方がいいよ」

「うん・・・もう少ししたら休むね」

 顔には笑顔。疲れていても絶やさないところがまたすごいと思ってしまう。やはり外見うんぬんというよりヒメちゃんの友達は内面に惹きつけられるのだろう。すごくいい子だと心の底から思ってしまう。

 しかもそんなに疲れている+メイド服だなんて普通の人ならブチギレているところだろう。

 汗をかいているのが少しエロいだなんて俺は思っていない。俺は下心などない。もちろん内面を今は褒めているのだから。

「よし・・・」

 ヒメちゃんの負担を少しでも減らすために頑張らなければいけないな。

 ちなみに作る場所とお客さんが食べる場所は別になっている。隣の教室で作り、それを運ぶのだ。屋台で直接買いたいという人も多く、そういう人は隣の教室まで、というのがうちの制度。

 だから意外と店員はいったりきたりで疲れてしまう。

「あー・・・」

 しかも夏。すごい快晴。とどめを刺しに来てる。

 というか、というかだ。こんなにも学生気分を満喫しているというのに、なぜかこう・・・青春成分が足りないような気がする。勘だが、空人の方が満喫しているような気がする。あいつ今どこで何やってんだろうなぁ・・・。

 うーん・・・。

「え、エロ・・・か?」

 俺に足りないもの。それはエロス。いや、さすがにそれはないな。もっと身近なものなはずだ。身近に体験できるもの。

「恋愛?」

 ってことは・・・。

「え、エロ・・・か?」

 全てのことがエロに通ずるシルクロード。それが男子高校生な悲しい思考回路なのだ。というかこの学校祭の中でどうやってエロに出会えと。全裸女子がきたらそれはそれで引くぞ。俺のこの考えに自分でも引きそうだが。

「はっ・・・!」

 思いついてしまった。俺に足りないもの。

「それは・・・ラッキースケベか!」

 俺は歓喜する。こう・・・喉まででかかっているものを出せた気分だ。清々しい。普通こういうときって着替え間違えて覗いちゃうーとか、うわーごっちんこ☆からのダイブとか、そんなことが起こってもいいような気がする。ちなみに今、祭中の変なテンションなんで。一応。

「・・・・・・」

 とまぁ、そこまで考えて現実には起こらないということを改めて思い知らされる。ありえないと自分でも思う。宇宙人がくるような街だけれどそれよりもラッキースケベが起こらない。どういうことだ。

 考えても仕方がない。俺は無駄な思考をシャットアウトして仕事に専念することにした。俺は今から仕事戦士だ。ビジネスマンだ。

 料理を取りに行くぞー!と気合を入れて廊下へと行く。ふふーふふ~なんて陽気に鼻歌なんかも歌っちゃったりして。なんだかんだみんなとのこういう共同作業は楽しいのだ。

「焼きそば2つー!」

 声を教室に入るのと同時に出す。するとなぜか入り口のところに椅子の脚が。扉から少し椅子が出ていたのを気付かずに通り過ぎようとしたらしい。足が引っ掛かり、普通に転んでしまう。

「うわっ!」

 思わず声をあげてももう遅い。転ぶ最中目の前にいる人物に気付く。あ、やばい、これは巻き込む。

 ドン、と軽い音がした後、俺は転んでしまったなぁ・・・なんて思う。少しだけ恥ずかしいが祭テンションでみんなも笑ってくれるだろう。

 はははーなんて笑顔の準備をしようと思って様子がおかしいことが分かる。鼻に何かがあたっている。レース?なんでレースが地面に?

「・・・・・・」

 い、いや、これは違う。なぜなら俺が右手につかんでいるやわらかいものがそれを証明している。これは先ほど夢にまでみた・・・ラッキースケベ・・・!

 まさかこんなことになるなんて・・・顔をあげて謝ろうとするも、頭がまさか足と足の間にダイブ。すなわち目の前には禁断の花園。顔をあげると同時に逮捕確実、あげなくても逮捕確実であった。

 こ、この態勢で謝るのも嫌だな・・・。

「あ、あのー・・・」

 声をかけるも反応がない。顔をあげれないから未だに誰に飛び込んでいるのかが分からない。まわりのみんなはなぜかきゃーと叫んだ後、いつも通りの運営に戻っている。幸いなのは直接とりにくるお客さんがいないことだ。というかなぜみんなそんな反応・・・?

「ひぁ・・・」

 可愛らしい声が聞こえる。というか、ちょっと待て、おい、この声って・・・。

「も、もしかしてヒメちゃん?」

 思い切って顔をあげると案の定ヒメちゃんであった。顔を赤くして目に涙をため、今にも泣き出してしまいそうな顔をしている。

 俺の右手は胸、ではあるのだが、顔をあげてもレースがあって実は花園が見えているわけではない。しかしヒメちゃんからはそれが確認できない。だからこそ、見られてしまったと思っているのだろう。

 男同士でも恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。しかもヒメちゃんだし、ああ、ていうか女の子だった。

 太ももに挟まれながら体全体すごいいいにおいがするなぁともう後戻りできない感想を抱き、俺はゆっくりと立ち上がる。みんなの反応の薄さは男同士だったからだろう。相手が女子だったらぶんなぐられていた。ヒメちゃん女の子だけどね(必死)

「あ、あのーヒメちゃん、言いたいことがあるんだけど・・・」

「・・・・・・ぐす」

 な、泣き出してしまったー!

「い、いやあのですね、俺の位置からは何も見えないというかナニも見えないというか!何言ってんのかわかんないけど、とにかく全然大丈夫ってことで!」

「あぅ・・・」

 顔を真っ赤にしながらもうつむき、それでも立ち上がろうとする。

「ん・・・」

「うわぁ!ごめん!」

 俺は胸におきっぱなしになっていた右手をどける。

「う、うん。大丈夫。ちょっと驚いちゃっただけだから・・・」

「・・・・・・」

 なんか彼女にキスしたら泣かれたみたいな気まずい空気の中での会話みたいになっていた。

「な、ななな・・・」

 後ろから聞こえたのはもちろんワン太の声だ。

「何やってるんですかあなたは!」

「い、いや、ちょっと言いわけさせて!」

 というかなんでそんなに怒ってるの!?もう言っちゃうけど完全に男同士の事故だよ!?何も嬉しいことのないラッキースケベだよ!いや、ヒメちゃんは例外だけども!

「俺の想像してたラッキースケベと違う!!」

 俺の悲しい叫びが教室にこだました。

学校祭が始まりました。


今、振り返ってみると女の子と男の子の甘酸っぱい絡みとかまったくないですね、この作品。


あるのは男の子と男の娘の絡みのみ・・・なんの物語なんだ、これ・・・。


ですが、これからたくさんのことが起こると思いますのでどうかよろしくお願いします。


ではまた次回。

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