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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第3章 スクールフェスティバルタイフーン夏13号
19/69

第18日 すごく思わせぶりな宇宙人。

 学校祭の準備がますます進んだ6月中旬。クラスでは食べ物屋とステージ演劇の2手に分かれてそれぞれ練習をしているところであった。

 俺、空人、ヒメちゃん、ワン太、神埼さんといういつものメンツは全員食べ物屋グループである。演劇はできないできない、と意見が一致したのだ。ちなみにワン太とヒメちゃんは演劇グループに誘われていたが断ったらしい。

「だって演劇なんてできませんよ」

「僕も目立つことはちょっと・・・」

 ということらしい。ちなみにヒメちゃんに限っては女装で目立つことになるというのに。自分がどれだけまわりに可愛いと思われているかということを分かっていないらしい。

 それともう1つ。あのチビガキであるバズーカちゃんがここ毎日俺に絡んできては手品を見せてくれる。体術が強いのならば体術を使えばいいのに・・・と狙われていながら思ってしまう。

 シキブさんにバズーカちゃんの話をしたところ「すごい悪ガキですよ、昔から」と言っていた。意外と毒舌なのかもしれない。

 そんな毎日に慣れ始めて、そうしてまた学校へと通う。

「白木くん、そっちのペンキ貸してくれない?」

「いいよー」

「うわわわわわ」

「馬鹿ワン太!それ危ない!」

「んしょ・・・んしょ・・・」

「小花くん上手だねー、うまいよー」

 今、全員で食べ物屋の看板を塗っているところである。こういう作業は嫌いじゃない。やればやるほど成果が見える所とか最高だ。

「で、何を書けばいいのかしら?」

『えぇえええええええええええ!!?』

 と、ここまでは思っていましたよ・・・。

「神崎さん、知ってるんじゃないの!?」

「知らないわよ。みんな知ってるかと思ってたんだけど」

「神崎さん率先して『みんな!やるわよ!』って言ってたからてっきり・・・」

「そもそもうちの食べ物屋名前も決まってないじゃない」

「ほんと、今さらですね・・・」

 しかしもう塗ってしまっている。ギリギリ文字を書くスペースはあるが・・・。

「適当でいいんじゃないかしら」

「適当って・・・」

 止める間もなく書き始める神崎さん。迷いはないらしくすらすらと書いていくその姿は素晴らしい。日本女子!という感じで凛としている。

「できたわ」

 みんなが看板を除くとそこに書いてあったのは・・・。

『スクールフェスティバル                 』

「いやぁあああああああああああああああああああああ!」

 思わず叫ぶ俺。

「もう終わりだ!どうやっても無理だ!」

「ふふん、自信あり」

「自信ありじゃねぇよ!」

 余白あまりまくりしかも店名意味分からんというコンボ。予想以上だぜ。

「スクールフェスティバルって学校祭って意味じゃん!店じゃなくて祭の名前じゃん!」

「しまったわ・・・」

「馬鹿なんですか、神崎さん!」

「くっ・・・ここはまかせろ」

 空人はそう言うと筆を持ち、臨戦態勢に入る。これはなんだか期待できそうだ。神崎さんの失敗をなんとかかき消すために頑張ってくれ。

 すると男子2名が話しながら看板の前を通って行く。廊下で作業しているので当然の光景だが。

「年末のガ〇使見た?めっちゃ面白かったよなぁー」

「ああ、タイキックってやられてる方はすごい痛いだろうけどな」

 「ははは」と笑いながら去って行った。俺も見た見た。まわりを見るとワン太以外うなずいていた。お前にも後で教えてやるよ。

「できた」

 満足気な顔。これは・・・と誰もが成功を確信した。

『スクールフェスティバルタイキック           』

「し、しまった!つい頭の中のものが!」

 お前何してくれてんだ・・・何屋なんだここは・・・どういうコンセプトで売り出せばこんな店名になるんだよ・・・運営してるの生徒だぞ・・・。

「空人!」

「い、いや俺にももう何がなんだか」

「なんで混乱してんだ!」

 そんな中手を挙げる人物が1人。

「ここは私に!」

「ワン太!」

 ワン太は真剣な表情で筆をとる。ここからとてもじゃないけれど改善することはできないような気が・・・。

「できました」

『スクールフェスティバルタイ(^v^)フーン      』

 ・・・・・・無理やりにもほどがある。キックの部分を顔文字で誤魔化し、フーンと書いてタイフーンと読ませるのか・・・。なんか顔文字が「ふーん」と言っているみたいだ。腹立つ看板である。

 しかし先ほどよりはいい。ワン太ナイスだ。

「ほら、タイフーンのように荒らして盛り上がるぜ!っていうコンセプトです」

 それはマイナスイメージでは?というようなことはこの場にいる全ての人が思っても口には出さない。ワン太のことを久々に尊敬したぜ・・・。

「よしならばヒメちゃん」

「僕!?」

 ここはヒメちゃんに任せよう。ヒメちゃんは可愛らしい丸文字を書くのでその字自体も楽しみではあるのだが、頭もいいので改善策が思いついていることだろう。

「で、できた」

『スクールフェスティバルタイ(^v^)フーン夏   』

 う、うん。一気に夏っぽさが出ていい感じだね。としか言えない俺を許してくれ・・・。

 しかしこれはいい。急に学校祭っぽさが増した。なんだか学生らしい作品だ。名詞をどん!と入れるのは得策である。

「よし、後は俺だな」

「いや、別にここで終えてもいいのよ・・・?」

 神崎さんが不安そうに見ていたが安心しろ。俺に任せればいい。それで全てが成功する。

 すらすらすら・・・綺麗。柳眉。全ての和を意識する。調和。包み込む大きな和を。

「できました・・・」

『スクールフェスティバルタイ(^v^)フーン夏13号』

『・・・・・』

 しゅだっ!みんなが無言になっている間に逃げ出す。完全に失敗したよね。言いわけさせてもらいますと、タイフーンって台風っぽくない?なんか言葉的に。

 というわけでうちの店の名前が決まった。半ば強制的に。







「よー、猫ちゃん」

「お兄さん」

 下校中に猫ちゃんと会った。そして俺はすぐに相談を始める。今日の看板のことについて。なんとなく相談事をしやすい相手になりつつあるな。

「いや、それはもう全員が悪いのではないかと・・・」

「はい・・・」

 今は反省しています。だってちょっとテンション変に上がってたし・・・これでいいかなぁと思ったし。自分的には全力でしたし・・・。

「そんな泣きそうな顔しないでください。笑顔ですよ笑顔」

 中学生に慰められる俺がさらに情けなく思い、泣きそうになる。そして今は笑顔もしたくない。(^v^)こいつが頭に出てくるんだ・・・。

「今年も猫ちゃん来るのか?」

「はい、ママは行けそうにありませんが、学校の友達と一緒に」

「ではぜひうちの『スクールフェスティバルタイ(^v^)フーン夏13号』をよろしく」

「あまり勧めたくなる名前ではありませんね・・・」

 名前だけで判断するのはよくない。中身はとても素晴らしいものになっているかもしれないじゃないか。不安だけど。中身こそ大惨事になりそうだけど。

 そう思い、歩いていると道に何かかごのようなものが置いてあった。いや、かごだけじゃない・・・果物?かごに覆われるような形で果物がある。それにかごは木の棒で支えられており、あの木の棒を倒すとかごがかぶさるような罠、にみえるというかそのものなのだろう。

 案の定、棒にはひもがくくりつけてあった。

「・・・・・・」

「な、なんですか、あれ・・・?」

 なんて見え透いた罠。こんなのに引っかかるやつがいてたまるか、というようなものである。さらにその紐をたどると茂みがあった。そこから見えている可愛らしい頭、それにでかいバズーカ。

 バカだバカだとは言っていたけれど、ここまでとは思わなかった。

「えい」

 俺はまた見えない糸『透明の鋼糸スケルトン・ストリング』(命名ワン太これ重要)を使い、棒を一気に引っ張る。すると棒が倒れ、かごが果物にかぶさり・・・・・。

「・・・・・・」

「ああ!」

 バカが出てきた。

「き、奇遇ですね・・・はは」

 汗ダラダラ。無理がある。しかし奇遇という設定を保持し続けるようだ。決して折れない。

「お兄さんの知り合いですか、あの小さい子」

「猫ちゃん、あれは君と同い年だよ」

 神様は残酷だ。ここまで違う2人を同じ場面に並ばせるだろうか。正反対といってもいいぐらい違う同い年、というものはなかなか珍しいものである。

「えぇ、と白木さんでいいんですっけ」

「そうだよ、バズーカちゃん」

 そう呼ぶと少しむっとした表情になりつつも、なんとか抑えて平和的に話し合う、つもりではあるがこう毎日よく分からない絡み方をされては俺も困る。ここは解決しなければな。

「猫ちゃん、じゃあ、俺はここで」

「あ、はい。ではまた」

 アパートの付近まで来るとなんとか2人きりになれる。俺は自分の部屋にバズーカちゃんを連れ込み(絵面だけ見れば完全なる犯罪者)、ソファに座らせる。

 ちなみにキャー、誘拐犯ーって叫ぼうとしやがったから口を押さえたせいでなおさらそれっぽくなってしまっていた。誰にも見られていないといいけれど。

 ちなみに神埼さんの家に泊めてもらっている彼女はなんだか女子から好かれる体質のようだ。可愛いーって言われているのを聞いたことがある。ワン太とシキブさんは嫌そうな顔をしていたが。

「で、君はどうやったら俺を許してくれるんだ?」

「姫様とシキブ先生を返したら」

 それはもういろいろなことがあって終わったと思っていたんだがな・・・。シキブさんも自分の意思で残っているし、ワン太に至ってはシキブさんから王様にしばらく帰らない的なことを伝えているはずだ。なぜかは分らないが王様は放任主義らしくあまりワン太に対して過保護ではないらしい。王家とか姫っていったら箱入り娘というイメージがあるんだけど。

「君があの2人が好き、という気持ちは分かってる。それを止める気もない。けれどだったら俺じゃなくてその2人自身に言ったらどうなんだ?」

「うるさい」

 会話終了。うるさいって言われたら何も言い返せないわ・・・。理不尽すぎる。

「もしかしてそれ以外の使命、とかあったりするんじゃないのか?」

「ギクッ」

「・・・・・・」

 分かりやす過ぎる。

「やっぱりな・・・で、その使命ってなんだ?」

「なんで言わなきゃならないの?」

「俺が手伝ってやる。できることは限られてるけれどね」

 これは本心だ。ワン太にもシキブさんにも協力してこの子に協力しない理由がない。

「・・・・・・・ハノはあなたを殺そうとしたんですよ」

 結果バズーカちゃんは俺に手品を見せているだけということになるんだが、それを言ったらたぶんいろいろ台無しになるに違いない。

「それでも俺はワン太に協力した。シキブさんにも協力した。だったら君に協力しない理由がない。それに俺の命を狙わないなら敵対する理由もないしな」

「・・・・・・」

「2人がいないと寂しいなら2人を説得すればいい。時間がかかりそうならここに残ればいい」

「で、でも」

「もちろん神埼さんの家に迷惑かけるわけにはいかない」

 だからもうあらかじめ大家さんに頼みこんでいた。なんとか部屋を貸していただきたいと頭を下げた。大家さんはめっちゃ軽く「いいよー部屋余ってるし」と答えていた。いや住人増えすぎたら大変じゃないですかね・・・?

「だからこっちに引っ越してこい」

「・・・・・・」

 バズーカちゃんはバズーカを構える。するとそれを発射。

「なっ・・・!」

 拳銃。全然心開いてない。

「あなたはこのままでいいの?」

「こ、このまま・・・!?」

 な、何々どういうこと・・・というか拳銃突きつけるのやめていただけませんかね。考え事とかまるでできないので。

「ハノが受けている使命は確かに姫様とシキブさんを連れていくことでも地球を壊すことではない。けれど・・・ハノの使命はいずれあなたの使命、あなたの気持ちそのものになるかもしれないのよ」

「お・・・前・・・何言って・・・」

 バズーカちゃんは拳銃をしまう。

「いずれ、分かります。ではまた」

 バズーカちゃんはその後どこかへ消えてしまった。神崎さんの家にも帰ってこなかったらしい。シキブさんが言うには大丈夫だということなのだが。

 俺への手品ももうなくなり、少し心配と言えば心配である。

 しかしもちろん俺には探す術などなかった。


連続で2話投稿させていただきます。


明日は恐らくできないんじゃないかと・・・これ毎回言ってるような気がしますが。


ではまた次回。

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