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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第3章 スクールフェスティバルタイフーン夏13号
18/69

第17日 全然出ない宇宙人。

 土曜日。学校はもちろん休みで学校祭の準備真っただ中。そんな中俺、空人、そしてヒメちゃんはミスコンについての話し合いをすべくヒメちゃんの家に集まることになっていた。

 クラスの出し物の方もカフェ的な食べ物屋、ステージは演劇と決まり、一応順調。

 さらにミスコンでもどばーんと点数をとれれば優勝に近づく。毎年3年生がすごいため、優勝はもちろん、1位2位3位4位5位と3年生ばかりなのだそうだ。ちなみに3年生は9クラスある。

 なので今年、俺らが3年生である今、まさに優勝狙いどきなのだそうだ。

 ちなみに出れる人数は決まっていない。人が出たクラスには参加しただけで少しポイントがもらえる。ただ同じクラスから2人出たとしてもポイントは増えないんだとか。

「ここでいいんだよな」

「たぶん」

 ヒメちゃんから事前に住所をきいた。待ち合わせはいいとこちらから断ったのだが、住所だけではやはり不安である。

 しかし表札に姫岡と書かれていたので確信する。ここだ。

 一軒家であり、綺麗で庭も大きい。なんだか絵本の中に出てくる家みたいなイメージがあるのはまわりに咲いている花のせいなのか。

 なんにしても素晴らしい家だ。

 俺は指を伸ばしてインターホンを押す。ピンポーンというきまりきった音が鳴って、家の中から「はーい」という可愛らしい声が聞こえてくる。うん、これはヒメちゃんだ。

「いらっしゃい」

 もちろん出てきたのはヒメちゃん、私服バージョン。半袖にベストの形をしたパーカー、少しぶかぶかな半ズボン。服装はやはり元気いっぱいな男の子というものだろう。

 だが、相も変わらず顔は女の子。前髪が眉上真横揃いなのも後ろが長いのもいつも通り。そして前髪の一部分をとめているピン止めもまたいつも通りである。

「おじゃましまーす」

 空人2人で玄関に入ると外から見るよりも広かった。玄関のところにはテディベアのようなぬいぐるみ類がたくさんある。恐らくお姉さんが作ったのだろう。

「ごめんね、急に呼んで」

「い、いや、自分恐縮っす」

「なんでキャラ変わってんだよ・・・」

 空人が呆れていたが気にしない。扉を開けた先はリビング。ここもまた広かった。

「へー・・・」

 空人が思わず見とれている。そうして歩きながらあたりを見ていると「わっ!」空人の声だ。

「どうした?」

「い、いや・・・人がいた」

 驚いて指さす先にいたのは衣服の塊。な、なんだあれ・・・。

「あー、お姉ちゃん」

 ヒメちゃんはぱたぱたと可愛らしく歩いてその人間イン衣服のところへと歩いていく。なんというかやはりヒメちゃんはこの家で一番のしっかりものらしい。

「こんなに散らかしたら駄目だよ」

「う・・・うぅ・・・あら」

 衣服の中からの救助に成功したのか綺麗な髪の長いお姉さんが出てきた。大学生らしい大人びた雰囲気も持っている。顔はどことなくヒメちゃんと似ているがヒメちゃんの方が断然幼い顔をしていた。

「いらっしゃい。あなたたちがハナにミスコンをすすめてくれた男の子たちね」

「は、はい!」

 今度は空人がびびりまくっていた。年上の綺麗な人が苦手なのかもしれない。委縮する気持ちはすごい分かるけれどね。

「ありがとう、あなたたちのおかげでハナに女物の服を着せれるわ」

 おっとーり、した感じの女の人だな。

「まだ出るって決まったわけじゃ・・・」

「出ないの?」

「え?」

「出ないの?ここまでお友達が誘ってくれて、さらにミスコンなんて優勝しなくとも参加だけでポイントがもらえるんでしょ?それお姉ちゃんの服も見てもらえるし。ハナ、どうかしら?」

「で、出る」

「ちょっとたんま!」

 いやいやいや!無理強いよくない!ヒメちゃんもう最後涙目だから。完全に脅迫ですよ、今の。

「えーと、ヒメちゃんのお姉さん」

「可愛らしい名前で呼ばれているのね」

「あ、呼ばせていただいてます。で、あのですね」

「そんなにかしこまらなくていいのよ」

「あ、ありがとうございます。でですね」

「そういえばあなたたちの名前は?」

「・・・・・・・白木希です」

 やりにくい!なんでこんなに話しかけてくるの!?今俺話してたんだけど!後ろで「七実空人っす」と未だに緊張している空人が答えていた。お前かっちこちじゃねぇか。

「で、その、ヒメちゃんは嫌ならこの話はなかったことにしようとしてるんです」

「え?ハナ、やりたくないの?やるわよね」

「ストップ!それですそれ!それが少し、言葉を悪くすれば脅迫気味といいますか、無理やりやらす感が出ていると申しますか」

「わかったわ。ハナ、やりなさい」

「そういうことじゃないんです!」

 命令しろということではない!

「ううん、僕、やるよ」

「え?」

 その中でヒメちゃんが慎重に言葉を紡ぐ。

「僕、恐らくステージの演劇じゃ役に立たないし、食べ物屋でもあまり役に立てないかもしれない」

 ちなみに俺は食べ物を作れないのでもっと役に立たない。というかヒメちゃんは食べ物作れるし、それにもっと重要な役をやらすとかなんとか・・・なんだったっけ?

「だからクラスのみんなに何かしてあげられるとすればこれしかないんだ」

「で、でも」

「大丈夫。無理はしてない、やりたくてやるんだ。お姉ちゃんの服も見てもらいたいし」

「ハナ・・・」

 お姉さんが超感動していた。大きくなって・・・みたいな気持ちなのかもしれない。ちなみに後ろの方で空人が「ぐす・・・いい話じゃねぇか」となっていた。なんだこれ。

「じゃあいっちょやるか!」

 空人が張りきって腕をまわす。いや、力仕事じゃないから。

「衣装部屋を使っていいわ」

「ありがとうございます、いくそ、希、小花くん」

「お、おう」

 俺ら3人は衣装チェックをするために衣装部屋へと行くことになった。そこで俺はずっと考えていた答えを思い出した。

「あ、ヒメちゃん。そういえば委員長がヒメちゃんは店の客引きを女装してやってもらうってよ」

「え・・・・・・」

 結局ミスコンでなくても女装するんかい。そんな顔をしているヒメちゃんを気の毒に思いながら俺らは衣装部屋へと急いだ。







「うわー・・・」

 あたり一面服だらけ。様々な種類の服が並んでいる。実用的なものからこれどこで着るの・・・?というものまで全部そろっているのだ。

 真ん中にはでかい姿鏡があり、着替える場所も用意されている。もちろん仕切るカーテンもついているからここで着替えても大丈夫、ということなのだろう。

 というかただの一軒家にここまでの設備があるなんてすごいな・・・。

「うちのお姉ちゃん、大学卒業したら衣服関連の仕事に就くっていっててそしたらお母さんとお父さんがこの部屋を用意してくれたんだ」

「なんというか・・・」

 なんというか親バカである。言わないけれど。いい見方をすれば優しいのだろう。それにヒメちゃんのお姉さんにはこれだけの設備を使わせてもいいような腕がある。素人の俺が見てもすごいと思うのだからお姉さんの腕は本当にすごいはずだ。

「ここでかくれんぼしたくなるな」

 今はそれは抑えてくれ、空人。あと発想が小学生だ。

「で、だ。どれから着る?」

 見たところここには男物の服がないようだ。女物ばかりである。そしてこの中のどれもがヒメちゃんに似合いそうだというのも迷う理由の1つだろう。

「え、ここで着るの?」

「あたりまえ。だってヒメちゃんが選んだら男っぽいものになっちゃうじゃん」

「それは僕が男だから・・・」

 げんなりするヒメちゃん。勢いは長い間続かなかったみたいだ。

「てかサイズとか大丈夫なの、小花くん」

「うん、たぶんここにあるの全部僕のサイズに合ってるものだから」

『・・・・・・』

 2人で声をなくす俺たち。お姉さんヒメちゃんのことが好きすぎである。

「お、これなんかどうだ?」

 空人がそういって引っ張り出してきたのは・・・・・メイド服だった。

「・・・・・・」

 今度はヒメちゃんが声をなくした。

「似合うよな、希」

「う、うん・・・・・」

「なんでお前が引いてんだよ!一番のりのりだったろうが!」

 だっていきなりメイドって・・・趣味丸出しだろ。

「空人、それはない。趣味丸出し。万人にうけるようなものでなくては・・・」

 俺は微笑を浮かべ、衣装の中からある衣服を引っ張り出す。

「チャイナ服だ!」

「お前のそれも趣味丸出しな」

 男同士で男が着る女物の服を選ぶという非常に混沌めいたことになっていることはこの際触れないでおく。ヒメちゃんはまず男ではないしね。

「じゃあ、どっちがより似合うか勝負っつーことで」

「望むところだ」

「僕が望まないよ!」

 というわけでヒメちゃんにはどちらも着てもらうことにした。

 まずはメイド服からである。

「で、できたよー・・・」

 消え入りそうな声。なんでそんなに元気がないのだろうか。信じられないぐらい可愛いに違いないのに。そして着替えルームのカーテンがばっ!と開かれる。

「おお・・・」

「ああ・・・」

 男2人が見とれるほどであった。

 ヒメちゃんにはこういう服が似合うのかもしれない、というぐらいメイド服がよく似合う。マジな給仕用のメイド服ではなく、ひらひら~ふりふり~な萌えを意識した作り。

 スカートの中にもふりふりが広がっている。そして足には白いソックス、すなわちスカートとの間にできる絶対領域がたまらない。さらにさらになんとガーターベルトなのだ。おとなしそうですごく照れて顔を赤くしているのにガーターベルト、エロスの権化。ギャップ。

 なによりも気になるのはスカートの中身が見えそうで見えないということである。

「空人、お前のメイド服甘く見てたわ」

「だろ・・・予想以上だけどな・・・」

 息をのむ。

 メイド?どうせもうみんな使い古したものだろ?いまさら見ても何も思わないわ、無だわ。と考えていたのに・・・なんてこった・・・こんなにも素晴らしいものなのか。

 いうなれば男が着ているということに対しても興奮しているのかもしれない。背徳的、というかなんというか。そろそろマジな変態になってきたので自重しよう。あ、ヒメちゃん男じゃないけど。

「ど、どう、かな・・・?」

「「ぶんぶんぶんぶんぶん」」

 首を縦に振りまくる。さらには鼻息も荒い。俺らの愚かな語彙ではきっと口にすればするほど安っぽくなってしまうだろう。だからこその無言。だからこそのうなずき。だからこその鼻息!

「おい、希。これ、俺らもつかな?」

「無理だな、たぶん」

 俺らはお互いに体がもたないような気がして笑いあう。

「もう着替えていいよね・・・」

 そそくさと退散しようとするヒメちゃんを止める。

 そして・・・パシャっ。

「な・・・写真!?」

「いや、普通にお姉さんに頼まれたぞ」

「そう・・・なんだ・・・」

 身内ということに安心しつつもショックを隠せないらしい。身内が少し変態ってどんな気分なんだろう。人のことは言えないが。

「よし、次!」





 そうして2時間、ひたすらヒメちゃんのお着替えを何回も繰り返す。ヒメちゃんは照れつつもなんとかやってくれていた。そして俺達と言えば・・・。

「・・・・・ふぅー」

「・・・・・はぁ・・・・・」

 大満足であった。写真は後で必ずお姉さんからもらおう。

「しかし空人よ、俺達はメイド、チャイナ、ドレス、着ぐるみ、超ファンシー、森ガール。いろいろなものをやってきてはいた・・・」

「ああ、そうだな」

「しかし俺らが一番興奮したのはなんだ?」

「メイド?」

「それは!森ガールじゃなかったか?」

「俺の意見ガン無視かよ」

 空人が何か言っていたが気にしない。

「俺が言いたいことは1つ。メイドやチャイナよりも現実的で、実用的な森ガールが一番よかった」

「俺はメイドだぞ」

「すなわち!いつも普通女の子が着るような服を着せることが正解なのだ」

 学校祭なのだからメイドなんか客引きやらでたくさんいる。もっと言うとチャイナやらドレスやらも他のミスコン出場者がしてくるかもしれない。

「ってことはだ・・・現実離れしてなくて実用的な可愛い服。それを着たときのまわりの衝撃ったらないはずだ。だって目立たないような服を着ることによって一番目立つことになるんだからな」

「俺はメイドだってば」

「空人。ヒメちゃんにはな、うちの客引きの仕事がある。それは恐らくメイドだ」

「俺も森ガールがいいと思います!」

 なんて安い男だ・・・ふふふ。これで決まったぞ・・・。

「ヒメちゃん、決まったよ。方針決定。安心してくれていい」

「う、うん・・・」

 なぜか不安そうだった。安心だと言っているんだがなぁ・・・。ちなみに今のヒメちゃんの格好は原点回帰、メイド服である。

「ところで・・・」

 空人が切りだす。

「小花くん、それスカートの中どうなってんの?」

「・・・・・・」

 ヒメちゃんは嫌な予感がしたのかてけてけと部屋から出て行こうとする。

「いやいや、待って」

「べ、別にどうもなってないよ」

「・・・・・・・・」

 顔を赤くしてスカートを上から抑える仕草をしているヒメちゃんに心が撃ち抜かれる俺。無理無理。これ以上は本当の変態になってしまう。

「よし、とりあえずは解散だな」

「問題は・・・軽い化粧というか、グロスとか塗らなければな」

 濃いものではなく傍からみてなんかちょっと女の子っぽくない?というようなものを集めまくるつもりだ。服の方針が地味というか普通なのだからそれぐらいでいいかもしれない。

 俺らは衣装部屋から出てきて、玄関へと行く。

「ヒメちゃん、格好メイドのままだけどいいの?」

「だって希くんと空人くんのお見送りしないと」

「・・・・・・」

「うわぁあああ!出してくれぇえええ!ここにいるとダメになるぅううううう!」

 あまりの可愛さに空人が壊れた。

「お邪魔しました。ご、ごめん、ヒメちゃん。今日はありがとう。また月曜日に学校でね!」

「うん、ばいばい、またね」

 律儀に手を振ってくれるヒメちゃん。ああ・・・マジ天使。

 名残惜しいが、メイド服姿のヒメちゃんとの別れを告げ、家から出てその家の前には女の人が。

「ん?ハナの友達か?」

「え・・・と・・・」

 フレンドリーに話しかけてくれるその人はポニーテールをしていて元気そうな印象を受ける。しかしどこか男っぽさが見え隠れしていた。ボーイッシュというのか。

 ハナ、ってたぶん姫岡小花、ヒメちゃんの家での愛称だったよな。もしかして家族の方?

「私はハナの姉だ。よろしく、いつもハナをありがとう」

 そう言ってお姉さんは家へとはいっていった。

「・・・・・・」

 なんとなくお姉さんがもう1人お姉さんではなくヒメちゃんに着せたがる理由がわかったような気がした。あの人は確かにふりふりーよりはパンツルックなどが似合うだろう。

 俺はクラスメイトのいろいろな一面や家族を見れてさらに仲良くなったような気がした。

 あ、宇宙人?いませんよ、そんなの。今回は平和平和。

一切宇宙人が出てきません。


学校祭本番も近づいてきました。


何気に投稿できたので。


明日はどうなるか分かりません。


ではまた次回。

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