第15日 押しかけ狙う宇宙人。
うちのクラスの出し物が決まった。
単純にカフェである。飲み物から祭特有の焼きそばなどの食べ物まで出すお店。教室を使ってテーブルを並べ、それらしく装飾して完成。こちらはいいだろう。恐らく間に合う。
問題はステージでの出し物だ。演劇、寸劇、ダンスが主流ではあるがうちのクラスには演劇部もいなければダンスを踊れるやつもいなかった。
「なかなか決まらんな」
「他のクラスはどうしてるんだろうね」
ヒメちゃんと話しあいながら悩み続ける。もちろん決まらない限り、話し合いはあるので放課後がつぶれ、準備も必然的に遅くなる。あと3週間以上あるとはいえ、これはまずい。特に演劇をやるならセリフとかも覚えないといけないしな。
そんなこんなでステージの方は決まらずに今日は解散となった。
だいぶ夏が近いのか暑さは増すばかり。そろそろ夏服でもいいんじゃないかと思う中、またまた帰り支度をしていた。
「希くん、ミスコンの話だけど」
「おう」
俺と空人はヒメちゃんに女装祭、男地獄となっているミスコンへの出場をすすめた。もちろん目的は莫大なポイント稼ぎ。学校祭で一番の人気イベントであるため、俺らのクラスも、と思ったのだ。
無理強いはよくない。そう思う。なので別に断られてもよかったのだが。
「その、まだ決めてないけど、お姉ちゃんがその気になっちゃって」
「お姉ちゃん」
そういえばヒメちゃんは上に2人姉がいるらしい。1人は裁縫がうまくて服なんかをよく作る、とのことであったはず。そしてこれは男物、女物じゃないよと嘘をつきヒメちゃんをだましている小悪魔系。
実際女物ではないのだが、かなりギリギリである。もちろん似合ってるけれど。
「もしかして・・・ミスコンのための衣装を?」
「うん。ミスコンのことを話したらすごい盛り上がっちゃったんだ」
元々女物を作ることが好きなお姉さんらしくそれが確実に似合うヒメちゃんにギリギリなところを我慢して着せていたところによるこの朗報。食いつくだろうなぁ。
「この時を待っていましたってお姉ちゃんのクローゼットみたらすでにたくさんの服が・・・」
「・・・・・・・」
お姉さん、そのうち騙して女装させる気満々だったらしい。どの時を待てばそのようなことになるのか。俺からしたら素晴らしいけれど着せられる本人は苦笑いである。
「それに・・・お姉ちゃんの服がみんなに見られるっていうのは嬉しいんだ」
大学生で勉強をしているらしく、なかなか服を作りはするけれどそれを見せる機会はないんだとか。自分で着るというのは論外。もう1人の姉に着せるのも論外、そう言っていたのだそうだ。
「確かにみんなが見るからな。本当に学校関係者だけでなく、一般の人も」
そこならばお姉さんの服は注目をあびることができる。勉強で忙しいお姉さんへの恩返し。
「だから、とりあえずうちに来てほしいんだ」
「来る?」
俺が?ヒメちゃんの家に?
そ、それはご両親へのあいさつということか・・・?
「ヒメちゃん、それはまだ少しはやい気が・・・」
「?」
首をかしげていた。
「うん、とりあえず分かった。いつ頃行けばいい?」
「今週末の土曜日に」
「おっけー」
その後、空人も誘い、3人でヒメちゃんの家に行くことになった。男子のみ、女子禁制の花園。響きだけだとすごい気持ち悪い。
「ちょっと・・・ノゾム」
「ん?」
小声で後ろからワン太に話しかけられる。
「ちょっといいですか?」
「い、いいけど」
俺はとりあえずヒメちゃんと空人に今日はワン太と帰るということを伝えてからその場を去った。
「うーん、あれって事情知らない人から見ればどうみても付き合ってるよな」
「うん、本人たちはあまり気にしてないみたいだけど」
そう言った友人たちの声ももう聞こえなかった。
〇
「急にどうしたんだよ」
「大変です」
下校途中、人気のない道を通り、誰にも聞かれないように小声で話す。
ワン太は深刻そうな顔をしている。それを見て俺は嫌な予感。なんだ、これ。いつもの宇宙人絡みのことのような気がしてならない。
「宇宙人の話なのですが」
「・・・・・」
ビンゴ。全然嬉しくない正解だ。
「どうやらまた1人来たらしいです、宇宙人」
「またかよ・・・」
私からしたら宇宙人ではないですけれど、と補足する。
月1で来てんじゃねぇか。完全に旅行気分だろ、それ。今度もまた教育係みたいな感じの人だろうか。シキブさんみたいな人だったら・・・今はともかく初期はほんとひどかったからな。
「今度はなに係?生活係か?」
「そんな小学生みたいな・・・違います。今回来たのは我が軍が誇る、最年少軍人です」
「・・・・・」
物騒すぎる。そんなやつが地球に来ること自体もう卒倒レベルだ。
でも確か、グリーン星は恐怖を取り除く星。どんな恐怖も恐れているため、そんなわざわざ反撃されそうな状態にはしないだろう。戦争が嫌いならば戦うこともないはず。
「普通ならそうです。どんな些細なことでも喧嘩を売るようなマネは絶対にしない星です。でも、戦争ではなく一方的な虐殺ならば反撃はされません。一瞬で根絶やしにできたら、の話ですが」
「・・・・・・・」
物騒すぎる。今回ばかりはどうしたって手に負えるものとは思えないが。
「というか地球とは共存するんだろ!?なんでそんなやつが来るんだ・・・」
「視察のつもりなのか・・・それとも方針を変えたのか・・・」
「そんな簡単に意見を変えないでくれと伝えてくれ!」
「いえ、方針は変えてないと思います。今回こちらに来たのもその人1人だけですし。喧嘩を売るならたくさんの人数で急に襲うはずです」
「そうだけどさ・・・」
それよりも気になることが、とワン太は言う。
「その宇宙人が来たことに気付いたのが実はさっきでした」
「さっき?さっき来たんじゃないのか?」
「・・・・・・ノゾムは抉れた山が大きく抉れていたことを知っていますか?」
「・・・・・・あ」
そう言えばそうであった。アパートでみんなが晩飯パーティーもとい、ワン太の接待晩飯をしている時、俺は見たはずだ、抉れている部分が大きくなっていることに。
それをワン太に聞こうと思ったまま、忘れていた。いや、そんな大事なことは忘れているわけがない。すなわち忘れさせられていた、のだろう。
「恐らく彼女だと思います。墜落したのでしょう。でもまさかこんなにも情報改ざん、意識の外に出させるのがうまい子だとは知りませんでした」
「・・・・・お前らUFOの免許とかちゃんと持ってんのか・・・?」
どんな頻度で墜落してんだ。シキブさんは大丈夫そうではあったが。
「で、まだ気がかりが1つ」
「なんだ、まだあるのかよ」
勘弁してほしい。これ以上は俺の心が持たない。
「私がそれを知ったのはさっき。それはある人に教えてもらったんです。たまたま抉れた山の話をしていたので」
「・・・・・まさか」
こういうときほど当たってほしくない予想はあたるものだ。
「神埼さんです。なぜか彼女だけにはその改ざんが効いていませんでした」
俺とワン太は走り出し、神崎さんを探すことにした。
神崎さんがそういう体質ならばいい。しかし意図的に神埼さんのみにかけられていないのならば、それは少し状況が違ってくる。
ワン太が携帯を取り出して神崎さんを呼び出そうとした。
〇
「・・・・・・・」
「ハローってこれで正解?にしし」
あたしの目の前にはなぜか小さな子供がいた。小さいと言っても背が低いだけで中学生ぐらいではあるのだろう。雰囲気は少し大人びていて凛としている。どこからか子供っぽさも見受けられとても可愛らしい子ではあると思う。
それになんというか服装も年相応で、大人びた雰囲気をだそうとしていなくて好感が持てる。少しませている子は苦手なのだ。だからこそこの子のことはいい子だと思ってしまう。
手にもつバズーカさえなければ。
なぜかそれを私に向けていた。
「お姉さん、お姉さん。ハノは誰だと思う?」
一人称が名前なのか、ハノと名乗っていた。ハノというならハノなのでは?
「そんなおもちゃ下げなさい。物騒なおもちゃ渡すわね・・・親はどこ?」
「ん」
そう言って指さしたのは真上。
・・・・・・・・。
「どういうこと」
「上にいるの」
「それは・・・」
まさかもう亡くなっているということだろうか。それは申し訳ないことを聞いてしまった。
「ごめん、気を悪くしないでほしいんだけど」
「なんで謝るの?ハノの両親は今、上にいるよ。違う星に」
そう言うと目の前の女の子は不意に消えてしまった。
「お姉さん、宇宙人って知ってる?」
声が聞えてきたのは後ろ、これは・・・・・あたしはこれを知ってる・・・。
「まさかテレポート・・・・・!」
「ご名答」
そう言ってその女の子はあたしに向かってバズーカを撃った。
〇
「つながりません!」
「くそ・・・どこにいるんだ・・・」
俺らは学校にいないことが分かるとすぐに街に出た。しかし普段いそうな場所(ワン太が知っていた。仲がやはりいいらしい)もいなくて、見当もつかない。
「今回きたやつはそんなにやばいのか?」
「はい、恐らく体術に関してはこの星の誰にも劣りません。年齢はまだ中学2年生なのですけれど、外見はそれよりも幼くて弱く見えてしまうというのもあの子が強い理由なのかもしれません」
外見で人を判断するなとはこのことなのだろう。
「で、そいつの名前は?」
「ハノ・バズーカ・キクティアです」
明日が投稿できないかもしれないので今日中に続けて次の話も投稿したいと思います。
ではまた次回。




