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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第3章 スクールフェスティバルタイフーン夏13号
15/69

第14日 初めてを楽しむ宇宙人。

 6月。少しずつ気温が上がり始めたこの時期に俺らは話し合いをしていた。

「で、何かいい案ありませんか?」

 黒板の前で委員長が話している。黒板には綺麗な字で『出し物』と書いてあった。その横に書いてある箇条書きのための小さな丸の下にはまだ何も書かれていない。

 みんなはどうするー?なにするー?と話しあっていた。しかし積極的に発言するものはなく、委員長は少し困り気味である。

「で、どうするよ、希」

「うーん・・・」

 かくいう俺も同じであった。全く案が出ない。

 今話しあっているのは学校祭についてだ。クラスは必ず何か1つ出し物をやらなければいけない。普通は屋台などの食べ物系が多いらしい。

 さらにもう1つ。体育館のステージ上での出し物だ。これは演劇、ダンスなど多彩な出し物でそろっている、という。なぜすべてらしいとか、という、なのかというと転校してきた俺は何も知らないからである。

 全クラス対抗でポイント制で順位をつけるらしい。総合分野、出し物、ステージ、などなど。分野ごとに分かれていたりする。総合優勝にはプレゼントがもらえるとかなんとか。

 ちなみにワン太に至っては「がっこう・・・さい?」と言っていた。それすら知らなかったらしい。

「僕はなんか食べたいなぁ」

 となりでヒメちゃんがうっとりしていた。いや、今、話しあっているのは出し物であって別にヒメちゃんが何かを食べるわけでは・・・くっ、可愛い。まともにつっこめない。

「俺も屋台がいい。ほら、料理作るの楽しそうじゃん」

「空人って意外と家庭的だよな」

 料理、裁縫なんでもござれらしい。ちなみにヒメちゃんも昔、お姉さんから教えてもらい料理も裁縫もできるとのことだ。・・・・・・俺だけか。

 屋台となったら確実にワン太は客引きだな、とか考えている。

「はい」

 空人が手を上げる。みんなが待ってましたといわんばかりの目でみる。みんなはやく帰りたいのだろう。今は放課後だしな。

「普通に食べ物屋、みたいなのがいいんじゃないすかね」

 金髪が目立つ友人。ちなみにまわりからの恐怖は少しずつ取り除かれているらしい。最近ではみんな空人と普通に話している。

「じゃあ・・・」

 委員長はそれを黒板に書いた。

「とりあえず今日はおしまいだ。また明日、新しく意見をきくが、何もないようなら食べ物屋に決定する。以上、お疲れ様でした」

 みんなはすぐに立ち上がり、帰り支度をする。

 あー、終わった。うちのクラスは正直やばい。何がやばいって2時間話しあって結果が食べ物屋、のみなのである。泥沼化してたな、あれは。

「希、小花くん、帰ろうぜー」

 空人がカバンを持ち立ち上がる。

「あ、それと希は知らないかもだが、うちの学校ミスコンなんてものもあるんだぜ」

「ミスコン・・・?」

 あの誰が一番可愛いかを決めるやつか?

「へー」

「まぁ、でも今はミスコン、じゃないんだけどな」

「?どういうことだ?」

「あー・・・。立候補はもちろん誰かを推薦するという人もいなくて女子が誰も参加しないんだ」

 それはもうミスコンじゃないんじゃ・・・。

「今は男どもが女装して盛り上がる地獄絵図状態の大会なんだぜ・・・」

「そ、それは恐ろしいな・・・」

 しかし観客はかなり多いらしく、一般の人もさらに全校生徒のほとんどがその地獄絵図馬鹿騒ぎ大会を見に来るんだとか。まぁ、盛り上がった者勝ちみたいなところもあるからな、祭。

 それに適当なパフォーマンスを加えればそれなりに見る価値のあるものができるのだろう。

「観客でくるなら参加しろって話だけどな、女子は」

 でも実際推薦だとしてもかなり緊張するんだろうな。可愛い人が参加する、というのがハードル高い原因となってしまっている。

「でも優勝したら莫大なポイントがもらえるんだ」

 それが盛り上がる要因でもあるらしい。

「ハルンさんとか立候補してくんねぇかなぁ・・・」

「無理だと思うぞ・・・」

 そういう方向で目立ちたいやつではないからな。

「お待たせ」

 そこにぴょこぴょこと可愛らしく歩いてきたのはヒメちゃんだ。リュックを背負いどうやら帰る用意ができたらしい。

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 その友人の姿を見て、俺と空人は顔を見合わせる。もちろん無言で。

「「逸材発見」」

 2人ではもり、ヒメちゃんを見る。「え?え?え?」と困惑しているヒメちゃん。

「ポイントゲット確実の優勝確実だ」

「ああ、空人。これは俺らがプロデュースするしかないみたいだな」

「あ、あの・・・どうしたの?」

「ヒメちゃん、心してきいてほしい。俺らクラスのために」

 俺は神妙な顔でそう言った。「う、うん」と首を縦に振ってくれたので話しだす。

「ミスコン、参加してくれないか?」







「ヒメ岡さんを誘ったんですか?」

「うん」

 アパートにて。俺の部屋でワン太と話していた。学校から帰るとリビングに大家さんが作ってくれたクッキーがあり、それを食べながら、である。

「唖然としてたけどね・・・、ヒメちゃん」

 それはそうだろう。男でミスコンに参加する。意味が分からない。女装の魔窟になった今でも男が参加するのはキツイ。ふざけるのが好きな目立ちたがり屋ならいいが、明らかにヒメちゃんはそちら側ではないだろう。

 それに家でも女の子みたいな扱い(女物に近い服を着させられている)ため、学校でもというのはあまりにもかわいそうであったか・・・。

「でも、ちょ、ちょっと時間をちょうだい。とは言ってたんだよな」

「脈ありですかね」

「うーん・・・」

 ないだろうな。でもヒメちゃんのことだからみんなのためなら!みたいな感じで無理をしかねない。本当に嫌なら無理強いはしないでおこう。

「のぞむー、ハルンちゃーん」

「いいですよ」

 大家さんがノックしてきたので部屋に招き入れる。

「じゃーん!話はきいたわ」

「・・・・・」

 ドレス着用。ふりふりの服はアイドル系であったが今回のはどう見てもお姫様系。そんな服をきていた。一体何の話を聞いたらそうなるのか。

「愛ちゃん!それ可愛いです」

「でしょうでしょう。これでミスコンも優勝だわ」

 ふふふ、と妖艶に笑う。

「ミスコン出れるの生徒だけですよ」

「え・・・・・・?」

 大家さんが凍っていた。

「ノゾム、なんてことを・・・大家さんがこんなにも頑張ったのに」

「俺が決めた規則ではないからなぁ・・・観客としてなら参加できますけど」

「・・・・・・・」

 無言で部屋から出ていく。なんかこういう姿初めて見た気がする。静かでいいかもしれない。

「ふふふ・・・私が落ち込んでると思っているのでしょう・・・甘いわ。生徒しか出れないなんて知っています・・・私はこれで本番学校に行くの」

「えぇ!?」

 それはぜひともやめていただきたい!

「さらにはのぞむーの名前を叫びながら歩いてやるわ」

「それだけはやめて!」

 もう着ていってもいいから!俺の名前を出すのだけはやめてくれ!

「さらば」

 ドロンと言って消える大家さん。完全に逆恨みじゃねぇか・・・生徒しか出れないの超気にしてるじゃんか・・・。

「大家さん、分かってくれたかな・・・」

「ノゾム。人生にはいいことと悪いことが交互に」

「それ前俺が話したやつだろ」

 もう完全に諦めモードのワン太を見ながら深いため息をつく俺であった。





「あ、お兄さん」

「猫ちゃん」

 俺が登校していると目の前に猫ちゃんがいた。俺は今日日直で朝が早かったりするんだが、それでも猫ちゃんよりは遅かったらしい。

「早いね」

「私はいつもこのような感じですよ」

 そう言って、今日も元気に歩いている。

「そういえばさ、うちの学校にミスコンあるの知ってる?」

「あー知ってます。私、去年見に行きましたし」

 やはりここらへんの人たちはよく参加するのだろうか。

「どんな感じだった?」

「どんな感じって・・・うーん・・・そうですねぇ。男祭でした」

 ミスコンなのに男祭。そんな最悪な矛盾があっていいのだろうか。俺は少なくともミスコンが見たい。ミスターコンテストとかではなく。

「ちゃんとした審査もあるんですが、ふざけあいみたいになってます。女装って言っても女の子みたいな子がくるんじゃなくてごつごつした人が笑わせるためにー、みたいな」

「マジな地獄絵図じゃねぇか・・・」

 閻魔様も驚きである。舌抜かれるのと同じレベルだ。そんなものを見てしまったら目を!目をぉ!くりぬいてくれぇえええ!と懇願するまでやる拷問だとしか思えない。

 でも祭のテンションは特別で大盛り上がりするのだろう。男子は毎年「あんなものは見ない!マジで!」と言っているらしいが、結局は見て大笑いするんだとか。

「去年は誰が優勝したんだ?」

「女の子です。唯一の女の子。確かに面白さでは最もつまらなかったかもしれませんが、ミスコンなんで優勝はその子になりました」

「へー」

 いたんだなぁ、出た人。

「綺麗でしたよ、かなり」

「推薦でか?」

「いえ、立候補です」

「マジで!?」

 すげぇ度胸だな、おい。そして優勝してしまうのだからさらにすごい。正直、尊敬するレベルだ。

「でも卒業しちゃいましたから、今年はきっと男祭リターンズになること間違いなしです」

「男祭がリターンするのか・・・」

 確かにそれはおぞましい。だが、しかし、今の話からするに審査の方は面白さよりも何よりも可愛さを重視しているらしい。勝機は見えた。今年が男祭であるならば、ヒメちゃんの勝ちはより確実になる。

「ではここで」

「おう、またね」

 







「うん?」

 抉れた山。その抉れた部分の近くに小さな可愛らしい女の子がいた。抉れた部分のど真ん中で体育座りをしている。

「うんうん、姫のにおいとシキブのにおいがする。にしし」

 女の子の手にあるものはドでかいバズーカ砲。まったくもって外見とは似合わない。もう片方の手には銃を持っている。もちろんまわりからは見えない。

 女の子は地球のことをよく学んでいた。だからこそ、目立つようなマネはしない。何もかもを隠して隠しまくる。隠さないのは、人間らしさ。

「人間ども・・・ぶっ壊す!」

 邪悪な笑みでそう言った女の子はすぐに山を下りた。

第3章は学校祭ということで季節も夏に近い形になっております。


ではまた次回。

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