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唐突にお隣さんは宇宙人。  作者: 花澤文化
第2章 帰りたがらない『かぐや姫』
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第12日 頼って話す宇宙人。

 起きたら朝の10時だった。もちろん学校はある。たまたま目覚ましが壊れていたみたいだ。そうして今日はたまたま大家さんが朝はやくから外出しており、たまたまワン太が日直なので朝がはやかった。

「・・・・・・」

 つまり誰も起こしてくれない状況。それが普通であるのだが目覚まし壊れているのはどうにも不運だ。

 俺の不幸はまだ続いている。

 あれから4日。今日明日を乗り切ればこっちのものだが、そろそろキツいものがある。

「遅刻・・・か」

 俺は重い腰を上げて制服に着替えて学校に行く準備をする。なんだか足元もおぼつかない。ストレスで頭もおかしくなりそうだった。

「もうやめたらどうです?」

 後ろを向かなくても分かる。ドアを開けずに勝手に入れるのはワン太がいない中、できるのはシキブさんだけだ。もちろん声でも判断できる。

「何をです?」

「指輪をとったらもう不幸ではなくなりますよ。もちろん勝負は私の勝ちですけれど」

「じゃあ聞けないな」

「・・・・・・そんなに姫様が大事なのですか?」

「うーん」

 俺は考える。大事じゃないわけではないが、そういうのとは少し違う。

「まだ1カ月程度の付き合いですよね」

「付き合いって・・・まぁ、そうだな。でもシキブさんが思うよりも1カ月って長いですよ」

「・・・私はあなたはすぐにギブアップすると思ってました」

「そーかい」

 根性無しだと思われていたのはなんとなく分かっていた。でも俺自身も意外だ。よくここまで頑張れるものだ。些細な不幸は俺にダメージを与えていったのに不思議とやめる気にはならなかったのだ。

「あなたは人間。私たちとは違います。共存できるとも私は思っておりません」

「・・・まぁな・・・異星人同士、ですしね」

 たくさんの壁があるのだろう。星が違うというのは文化の違いだけではなく、もっともっとさらにたくさんのことが違う。もしかしたら言語も違うのかもしれない。日本の文化を学んだとかって言ってたしなぁ、ワン太。

「でも俺がワン太を見捨てる理由にはなりませんよ」

「・・・・・」

「そもそもあなたたちの考えでワン太の行動が、やりたいことが縛られること自体俺は納得してません」

 しかしそれは俺個人の考えだ。きっと姫というのは自分の考えだけを優先するわけにはいかないのだろう。なんとなくだが分かる。むしろ自分のことは後回しになるはずだ。

「なんとなく、あいつが好きなことをできない理由もわかります。けれど無知で無関係な俺からしてみればそれは違う、と思っています」

 自分のことを後回しにして、好きなことさえもできない。そんなのは少し違う。

「全員のことを、もちろん自分のことも優先して行うのが平等ってものですよね。みんなのことが好きならその分自分のこともまた好きになるべきだと思うんです」

 そのためにまず、自分のやりたいことから始める。

 女の子、俺と同い年の女の子。やりたいことだってたくさんあるんだろう。

「でも今のは俺の意見です。あなたたちの星のことを知らない俺の」

「・・・・・でも言いたいことは伝わりました」

「それは話してよかったかな」

 ・・・・・・・で、言いたいことがあるんだけど・・・。

「そろそろ制服に着替えるんで・・・出ていってもらえませんかね・・・」

 俺、遅刻してるんす。






「ち、遅刻遅刻~」

 まさか本当に食パン加えて走るとは思わなかった。これで漫画とかなら角を曲がるとイケメンとどがーんっ!ってなるんだが・・・俺、イケメンとぶつかっても嬉しくないな・・・。

 あたりを見ると通勤の人も学生も誰もいない。当然だろう、もう10時だ。

「どうせならこう・・・胸のでかい人と・・・ぶつかってばいーん!って・・・」

 そこまで妄想を広げて何かにつまずき、どんがらがっしゃーん!と転ぶ。なんだか不幸の強さが日を増すごとに強くなっていくような気がする。

「いってぇ・・・」

 ビーという音が聞こえた。またなんかの不幸か?と思ってまわりを見るが何も起きない。

「誰ともぶつからないのに、角で転ぶって・・・」

 なんだか若干虚しい気分になったとき、俺の指輪の異変に気付く。

 映像が空間に映し出されていた。まるで近未来だ。

「すげぇ・・・こんな技術も進んでんのかよ、グリーン星。というかなんだこれ?」

 その空間にある画面を見ると何かが書かれている。

「なんだこれ?」

 書いてあったのは『見ますか?』という質問。下にはYESとNOがあった。どうやらタッチできるらしい。

「・・・・・・・・押していいかな」

 人間好奇心にはかなわない。大して迷いもせずに俺はYESのボタンをぐっと指で押した。

 すると画面が真っ暗になる。なんだ?と思う間もなくザーという砂嵐の音。ピーガガッと変な音もしている。そしてついに何か音が流れてきた。少しずつ大きくなってくる声。

 もちろん音量調節もない。どんどん大きくなって聞き取れるようになるころにはあたりに聞えるぐらいの音量になっていた。

『やめてくれぇええええええええええええええええ!!!』

「うわぁ!」

 男の人の大きな声。悲痛の叫びのようにきこえるそれは確かにやめてくれ、と言っていた。

 その瞬間、指輪の映像が切れ、普通の不幸の指輪に戻る。

「な、なんだ・・・今の・・・」

 まわりの人は気にしていない。恐らく俺のみに聞えたのだろう。普通なら人だかりができてもいいような大きさであった。宇宙人文化を正直なめていたな、意味分からん。

 気になるものの、今回の試練とは関係なさそうなためそのまままた走り出した。







 体育の授業、というものが週3である。みんなが勉強で疲れた精神的な疲れを体力的に解消しようというものであった。こんな説明もいらないぐらいだけれど。

 ちなみに今までは説明やら基礎体力作りーみたいな言ってしまえばつまらないものだったのだが、今日からはボールを使う競技に入る。

 今は更衣室で体操着ジャージに着替えている最中である。

「希・・・この1週間で傷増えたなー」

「そうか?」

 もちろん着替えるということで服は脱ぐ。そのため全身にある傷が見えてしまったみたいだ。でも正直浅い傷ばかりなので傷だらけ、という印象もなかったのだが・・・。

「お前、それ歴戦の戦士みたいになってるぞ」

「マジ?」

 傷だらけのやつ?中学生の時ならかっこいいと思えたかもしれないが高校生になるとみっともないな、としか思えなかった。そんなにひどいか。

「でも1つ1つは浅いから大したことはないんだけどさ・・・っつ!」

「今度はどうした?」

「いや、なんかズボンのすそ上げしたときのマチバリが残ってたみたいだ・・・いって・・・」

「なんか悲しいな、ズボンのすそ上げで怪我って」

 うるせぇ・・・足が短いことのなにが悪いんですかぁー?逮捕されるんですかぁー?罪なんですかぁー?何罪なんですかぁー?と小学生みたいに空人に言う。「う、うぜぇ・・・」となるのは当然だ。

「あーあ、でもショックは5割増だわー・・・」

「体育前にテンション下げるなよ。これからバレーだぜ!」

 空人はどうやら体を動かすのが得意らしい。だから誰よりも体育について常に楽しみにしていた。

「そういえばさ、ヒメちゃんは運動とか得意なの?」

「え?」

 些細な疑問。俺は全然得意じゃないんだーと言いながら俺がヒメちゃんの方を向くと・・・ああ・・・。

 ヒメちゃんは上をすでに脱いでいて肩の部分がひもになっている水玉のタンクトップみたいなものをきていた。胸のあたりには小さくリボンが付いている。か、可愛い。あれ、女子が着ているやつに似ているな。なんでそんな女子の下着事情を知っているかは詮索するな。察してくれ。

 そして今、まさにズボンをおろそうと手をかけていた。

「聞いてなかった・・・ごめんなさい。もう一度お願い」

「す、ストップ!ヒメちゃん中止!」

「え?え?」

 ヒメちゃんが困っていた。そのおかげでズボンにかけられた手は外される・・・ふぅ。

「危ないよ、こんな男だらけの場所で着替えるなんて」

「あの、僕男なんだけど・・・」

「せめて壁になるところで着替えなさい」

 ヒメちゃんは男の欲の強さをなめているふしがあるな。というか少しぽっちゃりしているから胸が少しだけ膨らんでいる・・・。お、落ちつけ、落ち着くんだ。

 まわりを見るとみんなも同じ気持ちだったらしい。

「お前ら気持ち悪いな・・・・・」

「お前が言うな、と思っているぞ、きっと・・・」

 空人がみんなの代わりにつっこんでくれる。

「というかヒメちゃん、その上の下着、タンクトップみたいなやつって女子着てるやつじゃない?」

「そ、そうなの?」

 顔を真っ赤にして下を向いてしまう。しかし女子が着てるっぽいだけでそれ自身が女物、とは思えない。なぜだろう・・・。

「これ、お姉ちゃんが作ってくれたんだ」

「お、オネエチャン・・・?」

 そういえばお姉さんがいるとかなんとか。あー、だからか。きっとお姉さんは男物としてそれを作ったんだな。しかし見た目を可愛らしくするとはなかなか素晴らしい。

「昔からお姉ちゃん、服作るのとか好きで、僕に着せたりしてたんだ」

 もう1人のお姉ちゃんにきて貰えばよかったのに・・・と落ち込んでいる。もう1人姉がいるらしい。

「それで小学生のころにはだまされて着させられたりしてたんだ・・・」

「・・・・・」

 今、俺はお姉さんに尊敬の念を送っている。悔むべきはなぜ俺はヒメちゃんと小学校時代から一緒じゃないのか、ということである。

「そうしたら今度は女物か男物か分からないようなものまで・・・」

 正直、お姉さんがそうまでして着せたい理由は分かる。ヒメちゃんは確実に女物が似合うだろう。それを見て満足したいという創作者としての思いがあるんだろうなぁ・・・現在進行形で。

 ヒメちゃんも可愛いものは好きらしく、さらにお姉さんの苦労を無駄にしないようにできるだけきているのだそうだ。今度ぜひあいさつに伺いたい。

 というか今でもだまされてるよ、ヒメちゃん・・・。

「ヒメちゃん、とても可愛いぜ」

「複雑だよ・・・」

 姉の服をほめられるのは嬉しい。でもそれをきて可愛いと言われるのは嬉しくない。そんな狭間にいるんだろうなぁ・・・。

 というかどう見ても服が市販の物にしか見えないぞ、手作りってレベルじゃない。そっち関係の仕事でもしているのだろうか。

「よし、みんな着替えたな・・・出るぞ!」

 なぜかすごく真面目そうな委員長である眼鏡男子宮本くんがヒメちゃんのために先導して更衣室をあけてくれる。君もついに可愛さにやられてしまったのか・・・。

 全員で更衣室を出る。

 そうして扉を閉めてから・・・。

「ヒメちゃん、着替えていいよー」

「僕男だよ!」

 ヒメちゃんの叫びが虚しく響き渡った。ちなみに更衣室を出た瞬間靴紐が切れたのはまぁ、予想の範囲内ということで。






「ノゾム」

「却下だ」

 俺は帰り道、歩きながらアパートに帰る途中、ワン太と一緒であった。

 不幸の指輪をつけてから毎日ワン太は指輪を外すように俺に頼んできていた。まさかここまでの効力を発揮するとは思っていないらしい。

「で、でも」

「というかあと今日明日で終わりなんだ。今更やめるなんてできない」

 それこそ俺の努力を無駄にすることだ、と少し意地悪に言う。ここまで言わないと恐らくこいつは聞かない。何よりも国民を星の民を優先してきたこいつには誰かに頼るという選択肢はない。

 不幸の指輪の時も俺を『信じて』はいたが『頼り』はしなかった。お願いします、とはあまり頼んでいなかった。そこで俺はワン太が姫であることを意識させられたのだ。

 結局、それで誰かを(主に俺を)頼るまでやってやんぜ!とメラメラ燃えたのもここまで我慢できた理由の1つかもしれない。

 思えば最初の頃もあいつは俺に何かを頼んでいただろうか。ここのアパートに来た時も、俺が正体を隠すために連れてきたようなものだった。

「悪いことが起きた次はいいことが起こるっていうじゃないか」

「言いますけれど・・・・・・」

 そしてワン太が俺の靴を見る。

 ぐっちゃぐっちゃという音を鳴らしている俺の靴を。ガムであるがもう慣れたもので少しガムのせいで地面から浮く感覚を楽しんでいる節もある。末期だな。

 さらにワン太は俺の手を見る。俺の手の花畑を。花畑牧場を。しかしこれは俺にしたらプラスだ。ヒメちゃんの手当てプライスレス。

 さらに背中を見る。背負っているカバン、リュックの有様を。肩にかける部分が破れてしまっているため、背負えない。手に持っているのだ。

「何も言うな」

 この姿のひどさは俺が一番知っている。

「わかりました。ではお礼と言ってはなんですけれど、少しだけ私の星について話させてください」

「そ、それはお礼なのか・・・?」

「えぇ・・・あなたにとって必ずプラスになります」

 まさかそこまで言い切られるとは思っていなかった。ボケとか、私の星のことを知られて嬉しいでしょ?みたいな意味かと。

「私の星がなぜグリーン星と呼ばれているか分かりますか?」

 風に揺られて長い髪をたなびかせながら、いつもとは違う儚げな表情でそう言った。

もうそろそろ予定では第2章も終わります。


少しずつたくさんいろいろなことが分かってきます。その分分からないことも増えているかもしれませんが・・・。


ラブコメなのに恋のこの字もでないのはなぜ・・・。


ではまた次回。

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