表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/19

9

 日曜の昼下がりだけあって、街は賑わっていた。俺はスマホを片手に歩く。

『んー! やっぱもう夏物いっぱい出てるねぇ。あれとかかわいー!』

「似たようなのいっぱい持ってるだろが」

『全然違うよー!』

 俺は片耳にイヤホンを付けている。こうしてりゃ一人で喋ってても変な人には見えないだろう。完璧だ。

『季節は移り変わっていくんだよねぇ』

 俺はちらりとアヤカを見た。アヤカは街を見回していて、俺の視線に気付いていない。

 その表情はどことなく沈んでいた。

 そうだよな。いくら街に来たと言ってももう生身の体じゃないんだもんな。生きていた頃との違いに暗くなるのも仕方がない。

「アヤカ! 好きなモン買ってやるよ!」

 その顔を見ていたくなくて、俺はそう言っていた。

「ほら何でもいいから。どれがいい?」

 アヤカはポカンとする。目をぱちくりさせて俺を見ていた。

『なに、急に』

「なにって……。妹孝行?」

 深い理由があった訳ではない。ただ、妹に悲しい顔をさせていなくて思わず口をついていた。

「いやほら、こうして一緒に出かけたことってなかったよなって思って……」

 子どもの頃は親に連れられてデパートとかに行ったこともある。だけど大きくなってからはそんなこともなかった。普通の兄妹でも普通のことだろう。

 それが今になって、深い後悔の種になった。

『本当に、いいんだよ。こうやって外を見られるだけで充分』

 そう言ったアヤカの目はどこか大人びていた。


 大人になったアヤカをこの先見られることはない。アヤカの時はもう止まってしまった。

 それを、強く感じた瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ